最終更新: 2026-07-11
介護放棄してしまいそう…と感じたら
介護放棄(ネグレクト)とは、食事や入浴・排泄の介助、通院など必要な世話を著しく怠ることで、高齢者虐待防止法が定める虐待の5類型の一つです。自覚チェックリストと、地域包括支援センターなど今すぐ頼れる相談窓口、緊急避難としてのショートステイの使い方を解説します。
この記事の要点
- 介護放棄(ネグレクト)は、高齢者虐待防止法が定める虐待の5類型の一つで、食事を十分に与えない・入浴や排泄の介助を怠るなど、必要な世話を著しく怠る状態を指します
- 家族など養護者による高齢者虐待と判断された件数は全国で年間17,100件(令和5年度・厚生労働省調査)にのぼり、発生要因の上位は「介護疲れ・介護ストレス」が約5割を占めます
- 食事を十分に与えられない・通院させていないなど、チェックリストの項目に1つでも当てはまるときは、早めの相談が助けになります
- 主な相談先は地域包括支援センター・市区町村の高齢者虐待相談窓口・ケアマネジャー・民生委員の4つで、いずれも無料、匿名での相談も可能です
- 限界を感じたときは、数日〜1週間程度のショートステイなど緊急避難を選んでよく、それは介護放棄ではなく共倒れを防ぐ前向きな選択です
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介護放棄(ネグレクト)とは?高齢者虐待防止法でどう定義されていますか?
結論介護放棄(ネグレクト)とは、食事や入浴、排泄の介助、通院といった必要な世話を著しく怠ることです。高齢者虐待防止法では、身体的虐待・心理的虐待・性的虐待・経済的虐待と並ぶ虐待の5類型の一つとして位置づけられています。
正式名称は「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」(通称: 高齢者虐待防止法)で、2006年に施行されました。家族や親族など、高齢者を現に介護・世話している人を法律上養護者と呼び、この記事で取り上げる介護放棄は、主に養護者による虐待の一類型にあたります。
法律上、ネグレクトは「高齢者を衰弱させるような著しい減食または長時間の放置、養護者以外の同居人による虐待行為の放置など、養護を著しく怠ること」と説明されています。わざと世話をしないだけでなく、疲れ果てて気づけばできていなかったという状態も含まれる点は、知っておいていただきたいポイントです。
| 虐待の類型 | 内容 | 具体例 |
|---|---|---|
| 身体的虐待 | 暴力によって身体に傷やあざ、痛みを与える行為 | たたく・つねる・無理に体を拘束するなど |
| 介護・世話の放棄・放任(ネグレクト) | 必要な介護や世話を著しく怠ること | 食事を十分に与えない・入浴や排泄の介助をしない・通院させないなど |
| 心理的虐待 | 暴言や無視などで精神的な苦痛を与える行為 | 怒鳴る、侮辱する、話しかけても無視するなど |
| 性的虐待 | 本人の同意なく性的な行為を強いること | わいせつな行為の強要など |
| 経済的虐待 | 本人の同意なく財産や年金を使うこと | 生活費を渡さない、年金や預貯金を無断で使うなど |
出典: 厚生労働省「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく整理(2026年時点)。この記事では主に介護・世話の放棄・放任(ネグレクト)を取り上げます。
なぜ介護放棄に至ってしまうのですか?背景にある要因は?
結論介護放棄の背景として最も多いのが介護疲れ・介護ストレスです。厚生労働省の令和5年度調査では、家族など養護者による虐待の発生要因の上位は「介護疲れ・介護ストレス」で、約5割を占めるとされています。
令和5年度の厚生労働省調査によると、家族など養護者による虐待と判断された件数は全国で年間17,100件、相談・通報件数は40,386件にのぼりました。特別な家庭だけで起きているのではなく、誰にでも起こりうる問題であることが、この数字からうかがえます。
発生要因を見ると、上位を占めるのは「介護疲れ・介護ストレス」で、養護者自身の障害や疾病、経済的な困窮、家族関係の不和などが続きます。休む間もない介護が何年も続き、相談できる相手も見つからないという状況が重なると、誰であっても心の余裕を失っていきます。
介護放棄は、性格が冷たいから起きるのではなく、支援が届く前に力尽きてしまうことで起きるというのが、実態に近いといえます。「自分だけがダメな介護者だ」と思い詰める必要はありません。
| 項目 | 数値 | 調査 |
|---|---|---|
| 家族など養護者による虐待判断件数(全国・年間) | 17,100件 | 厚生労働省 令和5年度調査 |
| 相談・通報件数(全国・年間) | 40,386件 | 厚生労働省 令和5年度調査 |
| 虐待の発生要因で上位を占める項目 | 介護疲れ・介護ストレス(約5割) | 厚生労働省 令和5年度調査 |
出典: 厚生労働省「令和5年度 高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査結果」。2026年時点で公表されている最新の調査結果です。
自分は当てはまる?介護放棄のセルフチェックリスト
結論介護放棄のセルフチェックでは、食事や入浴・排泄の介助、通院などの項目のうち1つでも当てはまれば、注意のサインです。点数化するものではなく、早めに相談するきっかけとして確認してみてください。
次のチェックリストは、ここ最近のご自身と、介護しているご本人の様子を振り返るためのものです。当てはまる項目があっても、それはあなたを責めるためのものではありません。
- 食事を十分な量・回数用意できていない、または準備すること自体がつらくなっている
- 入浴や着替えの介助を先延ばしにし、何日も同じ服のまま、体を拭けていない状態が続いている
- 排泄の介助を怠り、失禁やおむつの汚れに気づいても、そのままにしてしまうことがある
- 「うるさい」「いい加減にして」など、強い言葉や暴言をぶつけてしまうことがある
- 体調の変化に気づいていても、通院や薬の管理を後回しにしている
- 部屋の掃除や換気をする気力がなく、生活環境が悪化してきている
- できるだけ顔を合わせないようにしている、必要最低限しか声をかけていない
1つでも当てはまる場合、あるいは「自分もやってしまうかもしれない」と不安を感じた時点で、この後の章で紹介する相談窓口に連絡することをおすすめします。「もっと早く頼ればよかった」と話す方が多く、相談を後悔したという声はほとんどありません。
このまま続けるとどうなりますか?放置した場合の4つのリスク
結論介護放棄を放置すると、虐待としての通報・調査、深刻化・事件化、法的な責任、ご本人の健康悪化という4つのリスクにつながる可能性があります。早い段階で相談窓口とつながることが、これらを防ぐ一番の近道です。
低栄養や脱水、床ずれの悪化は、放置する期間が長引くほど回復に時間がかかりやすいとされています。体調が急に悪化したときは救急要請を、持病がある場合は主治医にご相談ください。通報されたからといってすぐに家族が引き離されるわけではなく、多くの対応は支援を目的として行われます。次の章で、相談や通報のあとに実際どのような流れになるのかを説明します。
| リスク | 具体的に起こりうること | 備考 |
|---|---|---|
| 虐待としての通報・調査 | 近隣住民や医療機関、ケアマネジャーなどから市区町村に通報され、事実確認の調査が入る | 通報は高齢者虐待防止法に基づく制度で、匿名でも行えます |
| 深刻化・事件化 | 低栄養や脱水、床ずれ(褥瘡)の悪化などが進み、救急搬送や警察の関与に至ることがある | 程度が重いと、保護責任者遺棄など刑事責任が問われる可能性があります |
| 法的な責任・行政の関与 | ショートステイなど施設への一時的な分離保護や、養護者側への指導・支援が行われる | 多くの場合、処罰よりもまず支援が優先されます |
| ご本人の健康悪化 | 低栄養、脱水、感染症、認知機能の低下などが進みやすくなる | 早めの気づきと対応が回復の助けになるとされています |
厚生労働省の調査・法律の枠組みに基づく一般的な整理です(2026年時点)。実際の対応は市区町村や個別の状況によって異なります。
通報したらどうなりますか?相談から支援までの流れ
結論通報や相談を受けた市区町村は、まず事実確認と安全確認を行い、必要に応じて分離保護や介護サービスの調整など支援を中心とした対応を進めます。4つの段階を経て進むのが一般的な流れです。
実際の対応では、通報をきっかけにショートステイが緊急に手配され、家族が数日間休息を取れたことで状況が落ち着いたというケースも珍しくありません。通報や相談は「罰すること」ではなく「支援につなげること」が目的だと考えて、早めに連絡してください。
| 段階 | 内容 | 対応する主な機関 |
|---|---|---|
| 1. 相談・通報 | 家族本人・近隣・医療機関などから相談や通報が入る(匿名可) | 地域包括支援センター・市区町村 |
| 2. 事実確認 | 訪問や聞き取りにより、高齢者の安全と養護者の状況を確認する | 市区町村・地域包括支援センター |
| 3. 評価・対応方針の決定 | 緊急性を判断し、分離保護が必要か、在宅での支援を続けるかを検討する | 市区町村(コアメンバー会議等) |
| 4. 支援の実施 | ショートステイ等の緊急利用、介護サービスの調整、養護者への相談支援など | 地域包括支援センター・ケアマネジャー |
厚生労働省の対応の手引き等をもとにした一般的な流れです(2026年時点)。実際の順序や期間は自治体や状況により異なります。
誰に相談すればいいですか?4つの相談窓口の役割
結論主な相談先は、地域包括支援センター・市区町村の高齢者虐待相談窓口・担当のケアマネジャー・民生委員の4つです。どこに連絡しても、状況に応じて必要な窓口につないでもらえます。
迷ったら、まず地域包括支援センターに電話するのが最も確実です。担当地域を確認したうえで、必要な窓口(市区町村の虐待担当、ケアマネジャーなど)へつないでもらえます。夜間や休日で窓口が閉まっている場合は、市区町村の代表電話や、状況が切迫していれば警察相談専用電話(#9110)も選択肢になります。
| 相談先 | 相談できること | 特徴・連絡のしかた |
|---|---|---|
| 地域包括支援センター | 介護全般の相談、虐待の通報・相談受付、介護保険サービスの調整 | 中学校区に1つ程度設置。無料。お住まいの市区町村のサイトで確認できます |
| 市区町村の高齢者虐待相談窓口(高齢福祉担当課) | 虐待の通報受理、事実確認、分離保護など行政としての対応 | 地域包括支援センターと連携して対応。匿名での通報も可能です |
| 担当のケアマネジャー | ケアプランの見直し、ショートステイなど緊急サービスの調整 | 既にサービスを利用中なら、最も早く動ける相談先です(ケアプラン作成の自己負担はありません) |
| 民生委員 | 地域での見守り、生活全般の相談、必要な機関への橋渡し | 地域に根ざした無報酬の相談役。役所を通じて紹介を受けることもできます |
厚生労働省の相談窓口案内等をもとにした整理です(2026年時点)。窓口の名称や体制は市区町村により異なる場合があります。
今日からすぐにできる負担軽減の方法はありますか?
結論担当のケアマネジャーへの相談によるショートステイやデイサービスの緊急手配、地域包括支援センターへの電話が、今日から動ける具体的な一歩です。介護保険サービスは要介護度ごとの限度額内なら自己負担1〜3割で利用できます。
すでに要介護認定を受けている場合は、担当のケアマネジャーに「限界に近い」と率直に伝えてください。ショートステイ(短期入所生活介護など)やデイサービス(通所介護)の緊急枠を調整してもらえることがあります。まだ認定を受けていない、担当のケアマネジャーがいないという場合は、地域包括支援センターに連絡すれば、申請や緊急対応の相談ができます。
1ヶ月あたりの自己負担には上限があり、一般的な所得の世帯では月44,400円を超えた分が高額介護サービス費として払い戻されます。「お金がないからサービスを増やせない」と決めつけず、まず窓口に緊急性を伝えることが大切です。地域包括支援センターやケアマネジャーのほか、介護の窓口でもショートステイに対応できる施設を相談員が無料でお調べします。
- 担当のケアマネジャーに電話し、「もう限界に近い」と率直に伝える
- 地域包括支援センターに電話し、ショートステイなど緊急に使えるサービスがないか相談する
- 家族や親族に、一日だけでも介護を代わってもらえないか連絡する
- 食事の準備がつらいときは、配食サービスや宅配の利用を検討する
ショートステイや施設入所を今すぐ考えてもいいのですか?
結論はい。ショートステイや施設入所の検討は、限界を感じた時点で始めてよい前向きな選択です。数日〜1週間程度の短期利用から、そのまま入所の検討につなげる流れも一般的です。
ショートステイ(短期入所生活介護など)は、数日から1週間程度の宿泊で介護から離れる時間を作れる制度で、介護保険の限度額内であれば自己負担1〜3割で利用できます。「まだ大丈夫」と我慢を重ねるより、限界の手前で使うことで、共倒れや介護放棄を防ぐ効果が期待できます。
在宅での介護が難しいと感じる場合は、特別養護老人ホーム(特養・原則要介護3以上)や介護老人保健施設(老健)、介護付有料老人ホーム、認知症の方向けのグループホーム(認知症対応型共同生活介護)なども選択肢に入ります。施設に頼ることは、ご本人を見捨てることではありません。専門職に日常のケアを任せることで、家族は「介護に追われる人」から「会いに行く家族」に戻ることができます。施設探しに迷ったときは、介護の窓口の相談員が無料でご状況に合わせた候補をご提案します。
介護放棄してしまいそうな自分を責めすぎていませんか?
結論介護放棄は、特別に冷たい人が起こすのではなく、疲れ果てた誰にでも起こりうることです。自分を責め続けるより、今日、1本の電話をかけることが、ご本人とあなた自身を守る一番の方法です。
ここまで読んで、「自分は虐待をしているのかもしれない」とつらい気持ちになった方もいらっしゃるかもしれません。ですがそう感じて自分を振り返れている時点で、あなたはすでに一歩踏み出しています。介護放棄に本当に至ってしまう手前で、多くの人が疲れ果て、孤立し、助けを求める方法がわからなくなっています。
相談現場では、切羽詰まった状態でようやく連絡をくださるご家族が少なくありません。それでも「もっと早く相談すればよかった」と話す方がほとんどで、相談したことを後悔したという声はほとんど聞きません。あなたの状況を責める人はいません。地域包括支援センターやケアマネジャーは、あなたを罰するためではなく、支えるために存在しています。
介護は一人で抱えるものではありません。今日この記事を読んでくださったことも、状況を変えるための大切な一歩です。まずは電話一本から、頼ることを始めてみてください。
よくある質問
一言でいうと、介護放棄とは何ですか?
一言でいうと、食事・入浴・排泄の介助や通院など、必要な世話を著しく怠ることです。高齢者虐待防止法では、身体的虐待・心理的虐待・性的虐待・経済的虐待と並ぶ虐待の5類型の一つ「ネグレクト」として位置づけられています。
介護放棄で通報したら、家族が逮捕されますか?
通報がすぐに逮捕につながることは通常ありません。市区町村がまず事実確認を行い、ショートステイの手配や介護サービスの調整など、支援を中心とした対応を進めます。ただし低栄養や大きな怪我など深刻な結果が生じている場合は、保護責任者遺棄など刑事責任が問われる可能性があります。
介護放棄をしてしまいそうです。今すぐ何をすればいいですか?
まずは地域包括支援センターか、担当のケアマネジャーがいれば率直に「限界に近い」と伝えてください。窓口が閉まっている時間帯は、市区町村の代表電話や警察相談専用電話(#9110)も選択肢になります。ショートステイなど数日単位の緊急避難を相談することもできます。
通報は匿名でもできますか?通報した人だとわかってしまいますか?
匿名での通報・相談が可能で、通報者を特定する情報は守られます。虐待をしてしまっている本人からの相談も、責められることなく支援の対象として受け止められます。一人で抱え込まず、まず電話をしてみてください。
経済的に余裕がなく、ショートステイの利用をためらっています。
介護保険の要介護度ごとの限度額の範囲内であれば、自己負担は1〜3割です。1ヶ月の自己負担が一般的な所得の世帯で上限44,400円を超えた分は、高額介護サービス費として払い戻されます。まずはケアマネジャーか地域包括支援センターに、緊急利用の相談をしてください。
家族(親やきょうだいなど)が介護放棄をしているように見えます。私はどうすればいいですか?
気づいた時点で、地域包括支援センターや市区町村の高齢者虐待相談窓口に相談してください。通報・相談は匿名でもでき、養護者本人への支援も行われる制度です。様子を責めるより、まず専門機関につなぐことが、ご本人と養護者の双方を守ることにつながります。
参考(一次情報)
- 厚生労働省「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」
- 厚生労働省「令和5年度 高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査結果」
- 厚生労働省 地域包括支援センターの相談窓口案内
- 厚生労働省「介護保険制度の概要」
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