最終更新: 2026-07-06
老人ホームの費用が払えない・抑えたいときの対処法
老人ホームの費用が払えない・払えなくなりそうなときの対処法を解説。高額介護サービス費や補足給付などの軽減制度、月額の安い施設への住み替え、生活保護での入居、ご家族の負担の考え方、滞納したときの流れと相談窓口まで、はじめてのご家族向けにやさしく整理します。
この記事の要点
- 費用が払えなくなる背景には、介護度の上昇・想定より長い入居期間・物価上昇などがあり、決して珍しいことではありません
- 高額介護サービス費(一般的な所得の世帯で月44,400円が上限)や補足給付など、申請すれば使える軽減制度をまず確認しましょう
- 食費・居住費を軽減する補足給付の対象は特養・老健・介護医療院・ショートステイで、有料老人ホーム・サ高住・グループホームは対象外です
- 月額の安い施設への住み替えや、生活保護を受けながらの入居も現実的な選択肢です。介護費用はご本人の年金・資産でまかなうのが原則です
- 滞納してもすぐ退去にはなりませんが、選択肢は時間とともに減っていきます。滞納が起きる前に施設・ケアマネジャー・市区町村へ相談しましょう
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老人ホームの費用が払えなくなるのはどんなとき?
結論老人ホームの費用が払えない状態とは、年金や貯蓄で毎月の利用料をまかないきれず、貯蓄の取り崩しや支払いの遅れが続いていく状態のことです。決して珍しいことではなく、早く気づいて動くほど選択肢は多く残ります。
「入居したときは払えると思っていたのに」というご相談は、とても多く寄せられます。見通しが甘かったというより、入居後に費用が変わっていく要因がいくつもあるためで、ご自身を責めて抱え込む必要はありません。
不安を感じたら、最初の一歩は現状の見える化です。預貯金の残高を、毎月の不足額(施設の請求額から年金収入を引いた額)で割ると、いまのままで続けられるおおよその月数がわかります。この月数が24ヶ月を切っているようなら、この記事の対処法を今日から順に進めていきましょう。
この記事では、確認したい軽減制度、月額の安い施設への住み替え、生活保護での入居、ご家族の負担の考え方、滞納したときの流れと相談先を順に整理します。月額費用の内訳や相場の全体像は、親記事の費用のしくみの解説をご覧ください。まずは、払えなくなる典型パターンを確認しましょう。
- 介護度が上がって費用が増えた: 介護サービスの自己負担(1〜3割)や加算、おむつ代・医療費が入居時より増えていく
- 想定より入居が長くなった: 貯蓄を取り崩す前提の資金計画では、入居が長くなるほど残高が先に尽きてしまう
- 自宅の生活費と二重になっている: 配偶者が自宅で暮らしている場合、家の維持費と施設費用が同時にかかり続ける
- 物価上昇で月額が上がった: 食材費・光熱費の高騰を受けて、管理費や食費の改定が続いている
- ご家族の補填が限界になった: ご本人の年金だけでは足りず、子ども世代が差額を負担し続けて苦しくなる
まず確認したい費用軽減の制度は?
結論最初に確認したいのは、高額介護サービス費と補足給付(特定入所者介護サービス費)、そして自治体独自の助成です。いずれも申請しなければ適用されませんので、該当しそうな制度から市区町村に確認しましょう。
注意したいのは、補足給付の対象が特別養護老人ホーム(特養)・介護老人保健施設(老健)・介護医療院・ショートステイに限られる点です。有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)・グループホーム(認知症対応型共同生活介護)は対象外のため、これらにお住まいの場合は高額介護サービス費と自治体独自の助成が中心になります。
高額介護サービス費は、既に支払った分も原則2年前までさかのぼって申請できます。心当たりがあれば、過去の利用分もあきらめずに確認してみてください。また、高額医療・高額介護合算療養費制度は毎年8月から翌年7月までの1年間で計算し、加入している医療保険(後期高齢者医療制度など)の窓口に申請します。入院や通院が続いた年は対象になりやすいため、医療費の記録もあわせて保管しておきましょう。
| 制度 | 内容 | 対象のめやす |
|---|---|---|
| 高額介護サービス費 | 1ヶ月の介護保険自己負担が上限を超えた分が払い戻される | 一般的な所得の世帯は月44,400円が上限(所得により月15,000円〜140,100円) |
| 補足給付(特定入所者介護サービス費) | 施設の食費・居住費が所得に応じた限度額まで軽減される | 住民税非課税世帯+預貯金などの資産要件。特養・老健・介護医療院・ショートステイが対象 |
| 高額医療・高額介護合算療養費制度 | 1年間の医療費と介護費の合計が上限を超えた分が払い戻される | 医療と介護の負担が両方重い世帯 |
| 社会福祉法人等利用者負担軽減制度 | 社会福祉法人が運営する特養などで利用者負担の一部が軽減される | 住民税非課税で特に生計が困難な方(実施状況は法人・自治体による) |
| 自治体独自の助成・減免 | 利用料の助成や介護保険料の減免など | 内容は市区町村により異なるため介護保険の窓口で確認 |
上限額・要件は厚生労働省の介護保険制度資料をもとにした2026年時点の概要です。補足給付の資産要件は所得段階により異なります(単身でおおむね預貯金など500万〜1,000万円以下)。軽減前の基準費用額(2024年8月改定)は1日あたり食費1,445円・多床室(特養)915円・ユニット型個室2,066円です。
月額の安い施設への住み替えは現実的?
結論はい、費用を理由にした住み替え(ダウンサイジング)は珍しいことではなく、有効な選択肢です。めやすとして貯蓄が尽きる1〜2年前には検討を始めると、あせらずに施設を選べます。
なお、月額を下げる方法は住み替えだけではありません。同じ施設内で個室から多床室へ移る、利用しているサービスや加算の内容を見直すといった工夫で、月数千円〜数万円変わることもあります。まずはいまの請求書の内訳を、生活相談員やケアマネジャーと一緒に確認することから始めましょう。
そのうえで住み替えを考える場合、費用面の本命になりやすい特養は地域により待機があります。そこで、特養への申し込みを早めに済ませ、待機中は月額の低い施設で暮らすという二段構えが実務的です。
住み替えで気をつけたいのが、いまの施設に支払った入居一時金の返還です。一時金は一定期間(償却期間)をかけて利用料に充てられていく契約が一般的で、償却期間内に退去すれば未償却分が返還されます。契約書の償却条件と返還見込み額を確認してから、住み替えの資金計画を立てましょう。
また、住み替えには引越し費用や新しい施設の初期費用もかかります。月額の差だけでなく、1〜2年単位の総額でいくら軽くなるかで比較するのが失敗しないコツです。
| 主な住み替え先 | 特徴 | 月額のめやす |
|---|---|---|
| 特別養護老人ホーム(特養) | 原則要介護3以上。補足給付の対象で、住民税非課税世帯は食費・居住費が軽減される | 約7〜15万円 |
| 軽費老人ホーム(ケアハウス) | 所得に応じた費用設定。自立〜軽度の方向けの一般型と介護型がある | 約7〜14万円 |
| 月額を抑えた住宅型有料老人ホーム・サ高住 | 郊外の施設や築年数の経った施設は月額が低め。空きがあれば待機なく入居できる | 約10〜16万円 |
関西エリアの概算のめやすです(2026年時点・介護サービスの自己負担1割の場合)。所得・部屋タイプ・要介護度により変わります。
生活保護を受けながら老人ホームに入れますか?
結論入れます。生活保護を受けながら入居できる老人ホームは実際にあります。特養などの公的施設のほか、民間の住宅型有料老人ホームやサ高住にも、住宅扶助の範囲内で入居できる施設があります。
生活保護制度では、家賃にあたる部分は住宅扶助、日々の生活費は生活扶助、介護保険の自己負担分は介護扶助として支給されます。介護扶助により介護サービスの自己負担は原則かからないため、家賃と生活費が基準内に収まる施設であれば、生活保護を受けながら暮らし続けられます。
申請にあたっては、持ち家や解約返戻金のある保険などの資産は、原則として先に活用することが求められます。また、ご家族へ援助の可否を確認する扶養照会が行われることがありますが、援助が難しい事情があれば申請時に伝えられます。
受け入れの可否や部屋数は施設ごとに異なり、空室状況にも左右されます。生活保護対応を明示していない施設でも相談に応じることがあるため、1件ずつの確認が必要です。介護の窓口では、生活保護に対応した施設探しのご相談も無料でお受けしています。進め方は次のとおりです。
- 福祉事務所に相談する: 貯蓄が尽きる見通しが立った段階で早めに相談します(施設に入居中でも申請できます)
- 対応施設を探す: 家賃が住宅扶助の基準内か、受け入れ実績があるかを施設ごとに確認します
- 申請・調査を受ける: 資産や収入の調査を経て、要件を満たせば決定されます(申請から原則14日以内に通知)
家族はどこまで支援するべき?本人の資産が原則
結論介護費用は、ご本人の年金と資産でまかなうのが原則です。ご家族に扶養義務はありますが、ご自身の生活を犠牲にしてまで負担し続ける必要はないと考えられています。
民法上、子どもには親への扶養義務がありますが、その程度は「自分たちの生活を維持したうえで、余力の範囲で援助するもの」と考えられるのが一般的です。教育費や住宅ローン、ご自身の老後資金を取り崩してまで補填を続けると、親子共倒れになりかねません。
実際の支援では、まずご本人の年金額・預貯金・保険・自宅などを一覧にして、本人のお金であと何年暮らせるかを見える化します。そのうえで、足りない分を誰がいくら補填しているのかを記録し、きょうだいがいる場合は分担を早めに話し合っておくと、後々のもめごとを防げます。
あわせて避けたいのが、介護費用のために仕事を辞めるという判断です。収入が途絶えるとご家族側の生活が立ちゆかなくなり、共倒れの危険が一気に高まります。費用の問題は「家族がもっと出す」ではなく、制度の活用と住み替えで解決する方向で考えましょう。
また、住民票の世帯を分ける世帯分離により、負担段階の判定が変わって高額介護サービス費の上限額や補足給付の対象に影響する場合があります。効果や影響は世帯の状況によって異なるため、市区町村の窓口で確認してみてください。
滞納するとどうなる?流れと早期相談の重要性
結論支払いが遅れても、すぐに退去にはなりません。督促、連帯保証人への請求、契約解除の予告という段階を踏むのが一般的で、滞納が起きる前・起きた直後の相談が何より大切です。
施設側も、長く暮らしてきた入居者に突然退去してほしいわけではありません。事情を正直に伝えれば、分割払いへの変更や費用の安い部屋への移動の提案など、施設内でできる工夫を一緒に考えてくれることが多いものです。黙ったまま滞納が続くことが、信頼関係をいちばん損ないます。
一時的な資金不足であれば、社会福祉協議会が窓口の生活福祉資金貸付制度など、公的な貸付でつなげる場合もあります。一方、民間のカードローンなどでの穴埋めは、利息でかえって状況を悪化させやすいため避けましょう。
相談現場では、滞納が始まってから駆け込むご家族よりも、「あと1年ほどで貯蓄が心配」という段階でご相談いただいたご家族のほうが、補足給付の申請、特養への申し込み、月額の低い施設への住み替えといった選択肢を落ち着いて比較できています。通帳の残高に不安を感じた時点が、相談のいちばんよいタイミングです。
| 時期のめやす | 起こること | この段階でできること |
|---|---|---|
| 支払いが遅れた直後 | 施設から電話や書面で支払いの確認・督促がある | 事情を正直に伝え、分割払いや支払日の変更を相談する |
| 滞納1〜3ヶ月 | 連帯保証人(身元引受人)へ連絡・請求がいく | 軽減制度を申請し、住み替えや特養申込の検討を始める |
| 滞納3〜6ヶ月ごろ | 契約解除の予告(催告)があり、期限までの支払いを求められる | 福祉事務所や地域包括支援センターに相談し、転居先を確保する |
| それ以降 | 契約解除・退去の請求に至る | 退去日や未払い分の支払い方法を文書で取り決める |
一般的な流れの例です(2026年時点)。契約解除までの猶予期間や手順は入居契約書の定めによるため、重要事項説明書とあわせて確認してください。
費用の不安はどこに相談できる?窓口一覧
結論最初の相談先は、施設の生活相談員と担当のケアマネジャーです。制度の申請は市区町村の介護保険窓口、生活の立て直しは地域包括支援センターや福祉事務所が力になってくれます。
どの窓口も相談は無料です。お金の相談は福祉の現場では日常的なテーマですから、「こんなことを聞いていいのだろうか」とためらう必要はありません。
介護の窓口(関西4府県対応)でも、「月いくらまでなら続けられるか」から逆算した施設探しや住み替えのご相談を無料でお受けしています。費用の不安は、時間がたつほど選択肢が減っていきます。どうにもならなくなる前に、まずは現状の整理からご一緒させてください。
| 相談先 | 主に相談できること |
|---|---|
| 施設の生活相談員・ケアマネジャー | 支払いの猶予・分割、ケアプランや利用サービスの見直し |
| 市区町村の介護保険窓口 | 高額介護サービス費・補足給付など軽減制度の申請 |
| 地域包括支援センター | 介護と暮らし全般の総合相談(無料) |
| 福祉事務所 | 生活保護の相談・申請、生活困窮者自立支援制度 |
| 社会福祉協議会 | 生活福祉資金などの貸付、日常的な金銭管理の支援 |
| 法テラス(日本司法支援センター) | 未払い金や契約に関する法律相談(収入等の要件により無料) |
よくある質問
費用を滞納すると、すぐに退去させられますか?
いいえ、通常はすぐに退去にはなりません。督促、連帯保証人への請求、契約解除の予告(催告)という段階を踏み、数ヶ月の猶予があるのが一般的です。ただし放置するほど不利になるため、支払いが難しいとわかった時点で施設に事情を伝え、分割払いなどを相談しましょう。
生活保護を受けていても有料老人ホームに入れますか?
入れる施設はあります。家賃が住宅扶助の基準内に収まることなどが条件で、住宅型有料老人ホームやサ高住を中心に受け入れ実績のある施設があります。受け入れの可否は施設ごとに異なるため、福祉事務所やケアマネジャー、紹介窓口を通じて1件ずつ確認しましょう。
補足給付(負担限度額認定)は有料老人ホームでも使えますか?
使えません。補足給付の対象は特別養護老人ホーム(特養)・介護老人保健施設(老健)・介護医療院・ショートステイで、有料老人ホーム・サ高住・グループホームは対象外です。有料老人ホームでは、介護サービスの自己負担に対する高額介護サービス費や自治体独自の助成を確認しましょう。
子どもには親の施設費用を払う法律上の義務がありますか?
民法上の扶養義務はありますが、自分たちの生活を維持したうえで余力の範囲で援助するものと考えられるのが一般的で、生活を犠牲にしてまで負担する義務まではないとされています。まずはご本人の年金・資産で組み立て、足りない場合は軽減制度や住み替え、生活保護を検討しましょう。
入居一時金を払った施設から住み替えると、お金は戻りますか?
償却期間内の退去であれば、未償却分が返還されるのが一般的です。また、入居から90日以内の解約には、利用した日数分の費用などを除いて一時金が返還される短期解約特例(いわゆる90日ルール)があります。返還額の計算方法は契約書と重要事項説明書で確認してください。
世帯分離をすると介護費用は安くなりますか?
住民票の世帯を分けることで所得段階の判定が変わり、高額介護サービス費の上限額や補足給付の対象に影響して負担が下がる場合があります。ただし効果は世帯の収入構成によって異なり、国民健康保険料など別の負担が変わることもあるため、手続き前に市区町村の窓口で影響を確認しましょう。
参考(一次情報)
- 厚生労働省「サービスにかかる利用料」
- 厚生労働省「介護保険制度の概要」
- 厚生労働省「生活保護制度」
- 厚生労働省「生活福祉資金貸付制度」
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