最終更新: 2026-07-06
住所地特例とは
住所地特例とは、市外・県外の施設に入居して住民票を移しても、引っ越し前の市区町村が介護保険の保険者のままになる仕組みです。対象施設の一覧(特養・老健・介護医療院・有料老人ホーム・サ高住など)、グループホームが対象外である理由、転出時の届出手続き、呼び寄せ介護での使い方と注意点を、はじめての方にやさしく解説します。
この記事の要点
- 住所地特例とは、特別養護老人ホーム(特養)や有料老人ホームなどの対象施設に入居して住民票を施設へ移しても、引っ越し前の市区町村が引き続き介護保険の保険者になる仕組みです
- 目的は、施設が多い市区町村に介護給付費の負担が集中するのを防ぐこと。ご家族にとっては、市外・県外の施設も介護保険の心配なく選べる制度的な裏付けになります
- 対象は、特養・介護老人保健施設(老健)・介護医療院・有料老人ホーム・軽費老人ホーム(ケアハウス)・サービス付き高齢者向け住宅(サ高住・有料老人ホーム相当)など。グループホームと定員29人以下の地域密着型の施設は対象外です
- 手続きは、元の市区町村への転出届とあわせて「住所地特例適用届」を提出するだけです。多くの自治体で異動から14日以内とされ、施設の相談員が案内してくれるのが一般的です
- 呼び寄せ介護では施設選びが住民票に縛られません。ただし、先にお子さんの自宅で同居してから施設に入ると保険者が変わる点、グループホームは先に住民票を移す必要がある点に注意しましょう
住所地特例とは?どんな仕組みですか?
結論住所地特例とは、特別養護老人ホーム(特養)などの対象施設に入居して住民票を施設の所在地へ移しても、引っ越し前の市区町村が引き続き介護保険の保険者(保険の運営者)であり続ける仕組みです。
介護保険は原則として、住民票のある市区町村が保険者となって保険料を集め、サービス費用を給付します(住所地主義)。この原則をそのまま当てはめると、市外の施設へ入居して住民票を移すたびに保険者が変わってしまいます。そこで介護保険法第13条は、対象施設に入居して住所を移した場合は、元の住所地の市区町村が保険者のまま変わらないという例外を設けました。これが住所地特例です。
たとえば奈良県の自宅から大阪市の有料老人ホームへ入居した場合、住民票は大阪市へ移りますが、介護保険の保険者は元の市町村のままです。介護保険被保険者証も元の市町村が発行し続け、大阪市の施設で介護保険のサービスを問題なく利用できます。
対象になるのは、65歳以上の方(第1号被保険者)と、要介護・要支援認定に関わる40〜64歳の医療保険加入者(第2号被保険者)です。なお、同じ市区町村内の施設へ移る場合はそもそも保険者が変わらないため、この特例の出番はありません。
なぜ住所地特例があるの?|施設が多いまちを守るためです
結論介護給付費の一部は保険者の市区町村が負担するため、入居者の保険者がすべて施設所在地へ移ると、施設が多いまちほど財政負担が重くなってしまいます。これを防ぐのが住所地特例の目的です。
介護保険のサービス費用は、保険料と国・都道府県・市区町村の公費でまかなわれ、その一部を保険者である市区町村が負担しています。もし住所地特例がなければ、特養や老健を積極的に整備したまちほど市外から入居した方の給付費まで抱えることになり、施設をつくればつくるほど財政が苦しくなるという矛盾が生じます。
住所地特例は、給付費の負担を元の住所地の市区町村が持ち続けることで、施設の立地の偏りと財政負担の偏りを切り離す仕組みです。ご家族の立場では、「施設のあるまちに遠慮する必要はない」「市外・県外の施設も堂々と選んでよい」という制度的な裏付けと言えます。同じ考え方の住所地特例は、国民健康保険や後期高齢者医療制度にも設けられています。
住所地特例の対象施設は?一覧表でチェック
結論対象は、介護保険施設(特養・老健・介護医療院)と、特定施設にあたる有料老人ホーム・軽費老人ホーム(ケアハウス)・養護老人ホーム、そして有料老人ホームに該当するサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)です。
当サイトで紹介している介護付有料老人ホーム・住宅型有料老人ホーム・サ高住の多くは、住所地特例の対象です。サ高住については、安否確認と生活相談だけを提供する住宅は対象外ですが、実際には食事の提供などを行う住宅が大半のため、ほとんどが対象になります。
一方、グループホーム(認知症対応型共同生活介護)と定員29人以下の地域密着型の施設は対象外です。これらは「住み慣れた地域での生活を支える」地域密着型サービスに位置づけられ、原則としてその市区町村に住民票のある方しか利用できません。市外から入居したい場合は、先に住民票を移す必要があります。
| 施設種別 | 住所地特例 | 補足 |
|---|---|---|
| 特別養護老人ホーム(特養) | 対象 | 定員29人以下の地域密着型特養は対象外 |
| 介護老人保健施設(老健) | 対象 | 在宅復帰をめざすリハビリ中心の施設 |
| 介護医療院 | 対象 | 長期の医療と介護を一体的に受けられる施設 |
| 介護付有料老人ホーム | 対象 | 定員29人以下の地域密着型特定施設は対象外 |
| 住宅型有料老人ホーム | 対象 | 特定施設の指定がなくても対象になります |
| 軽費老人ホーム(ケアハウス)・養護老人ホーム | 対象 | 制度上は特定施設として扱われます |
| サービス付き高齢者向け住宅(サ高住) | 対象(条件あり) | 食事の提供などを行い有料老人ホームに該当するもの(大半が該当) |
| グループホーム(認知症対応型共同生活介護) | 対象外 | 原則、施設のある市区町村の住民のみ入居できます |
| 地域密着型特養・地域密着型特定施設 | 対象外 | 定員29人以下の小規模な施設。同一市区町村の住民のみ |
介護保険法第13条にもとづく整理(2026年時点)。サ高住は2015年4月の法改正で対象に加わりました。個別の施設が対象かどうかは、施設または市区町村の介護保険窓口でご確認ください。
住所地特例で変わること・変わらないこと
結論住民票は施設の所在地へ移しますが、保険者・保険料・各種申請の窓口は元の市区町村のまま変わりません。
誤解されやすいのですが、住所地特例は「住民票を移さなくてよい制度」ではありません。住民基本台帳の考え方では、実際に生活の本拠がある場所へ住民票を置くのが原則で、終(つい)のすみかとして有料老人ホームや特養に入居したら、住民票も施設へ移すのが基本です。そのうえで介護保険の所属だけが元の市区町村に残る、と整理すると分かりやすいでしょう。
介護保険料の金額は市区町村ごとに異なりますが、住所地特例の間は元の市区町村の基準額・所得段階で計算されます。自己負担が高額になったときに払い戻される高額介護サービス費(一般的な課税世帯の上限は月44,400円)や、特養・老健・介護医療院で住民税非課税世帯の食費・居住費が軽減される補足給付(負担限度額認定)の申請先も、元の市区町村です。
| 項目 | 住所地特例での扱い |
|---|---|
| 住民票 | 施設の所在地へ移します(実際に住む場所に置くのが原則) |
| 保険者 | 元の住所地の市区町村のまま変わりません |
| 介護保険被保険者証 | 元の市区町村が発行し続けます(住所地特例の適用が記載されます) |
| 介護保険料 | 元の市区町村へ納付。金額も元の市区町村の基準で計算されます |
| 要介護認定 | 元の市区町村が担当。認定済みならそのまま引き継がれます |
| 高額介護サービス費・負担限度額認定などの申請 | 元の市区町村の窓口へ申請します |
| 住民向けの行政サービス・選挙 | 住民票を移すため、施設のある市区町村で受けます |
手続きの流れ|転出届とあわせて「住所地特例適用届」を提出します
結論元の市区町村で転出届を出すときに、あわせて介護保険の窓口へ「住所地特例適用届」を提出し、引っ越し後は施設所在地の市区町村で転入届(14日以内)を出します。
手続き自体はシンプルで、施設の相談員やケアマネジャー(介護支援専門員)が案内してくれるのが一般的です。書き方に迷ったら、元の市区町村の介護保険担当課へ電話で確認すれば教えてもらえます。
届出を忘れると保険者の情報がうまく引き継がれず、保険料の請求や給付の調整といった手間が生じることがあります。転出届と同じ日にまとめて済ませるのが安心です。なお、対象施設から別の市区町村の対象施設へ直接移った場合も、保険者は最初の入所前の市区町村のまま変わりません。
| タイミング | 手続き | 届出先 |
|---|---|---|
| 入居が決まったら | 転出届を提出 | 元の市区町村の窓口 |
| 転出届とあわせて | 介護保険の住所地特例適用届を提出 | 元の市区町村の介護保険担当課 |
| 引っ越し後14日以内 | 転入届を提出 | 施設所在地の市区町村の窓口 |
| 別の対象施設へ移るとき | 住所地特例変更届を提出 | 元の市区町村の介護保険担当課 |
| 退居して自宅などへ戻るとき | 住所地特例終了届を提出 | 元の市区町村の介護保険担当課 |
西宮市など各市区町村の案内をもとにした一般的な流れです(2026年時点)。届出の名称や様式は市区町村により少し異なり、多くの自治体で異動から14日以内の届出とされています。郵送での提出を受け付けている自治体もあります。
呼び寄せ介護でどう役立つ?|施設選びが住民票に縛られません
結論離れて暮らす親御さんをお子さんの近くの施設へ呼び寄せる場合も、保険者は元の市区町村のままです。介護保険の心配をせずに、市外・県外の施設を候補にできます。
たとえば、和歌山の実家でひとり暮らしをするお母さまを、大阪府内の介護付有料老人ホームへ呼び寄せるケースを考えます。住所地特例により、保険者は和歌山の市町村のまま、大阪の施設で介護保険サービスを利用できます。要介護認定もそのまま引き継がれるため、呼び寄せのために認定を取り直す必要はありません。
注意したいのは順番です。先にお子さんの自宅へ住民票を移して同居し、その後で施設に入る場合、保険者はお子さんの市区町村に変わります。自宅への転居は住所地特例の対象ではないためです。どちらが損というものではありませんが、保険料の基準や申請窓口が変わるため、「実家から直接施設へ」なのか「いったん同居を挟む」のかで手続きの流れが違うことは知っておきましょう。
相談現場では、「親を関西へ呼び寄せたいが、住民票や保険がどうなるか分からず一歩を踏み出せない」というご相談をよくお受けします。実際には、グループホームを希望する場合を除けば、住民票が施設選びの制約になることはほとんどありません。それよりも、呼び寄せ後にご家族が通いやすい立地か、費用を無理なく続けられるかのほうが大切な検討ポイントです。介護の窓口では、大阪・兵庫・京都・奈良への呼び寄せを前提とした施設探しを無料でお手伝いしていますので、手続きの段取りもあわせてお気軽にご相談ください。
注意点|グループホーム希望なら住民票の順番を先に整理しましょう
結論グループホーム(認知症対応型共同生活介護)は住所地特例の対象外のため、市外から入るには先に住民票を移す必要があります。地域密着型サービスの使い方にも一部ルールがあります。
いずれも、知らずに進めると手戻りが起きやすいポイントです。施設の種別を絞り込む段階で「住所地特例の対象かどうか」を確認しておくと、その後の手続きがスムーズになります。
- グループホームは対象外: 原則、施設のある市区町村へ住民票を移してからの申込みになります。入居条件(要支援2以上+認知症の診断)とあわせて、住民票を移す時期と申込みの順番を先に整理しておきましょう
- 定員29人以下の小規模な施設に注意: 地域密着型特養や地域密着型特定施設(小規模な介護付きホーム)も対象外です。見学の際に「住所地特例の対象ですか」と確認すると確実です
- 訪問・通いの地域密着型サービスは利用できます: 2015年の法改正で、住所地特例の対象者は施設所在地の市区町村の地域密着型サービス(定期巡回・随時対応型訪問介護看護や認知症対応型のデイサービスなど)と介護予防・日常生活支援総合事業を利用できるようになりました。サ高住や住宅型有料老人ホームで外部の介護サービスを使う方に関係します
- ケアプランの担当の引き継ぎ: 要介護の方はケアマネジャー(自己負担なし)、要支援の方は地域包括支援センターがケアプランを担当します。転居で担当が変わるため、引き継ぎ方法を施設と相談しておきましょう
- 届出漏れに注意: 介護保険は「住民票は移すが保険者は変えない」という独特の手続きです。年金や銀行の住所変更と混同せず、転出のときにまとめて済ませましょう
まとめ|保険は元のまち・暮らしは新しいまち、と覚えましょう
結論住所地特例により、市外・県外の施設へ入居しても介護保険は元の市区町村のまま使えます。グループホームなど対象外の施設にだけ気をつければ、施設探しの範囲は住民票に縛られません。
制度の名前はいかめしいですが、ご家族が実際にやることは届出が中心で、施設と市区町村が支えてくれます。市外・県外も含めて施設を探したい方、呼び寄せの段取りに迷っている方は、介護の窓口の無料相談もお気軽にご利用ください。
- 入りたい施設が住所地特例の対象か(特養・老健・介護医療院・有料老人ホーム・ケアハウス・サ高住はおおむね対象)
- 手続きは転出届+住所地特例適用届のセット。施設の相談員が案内してくれます
- 呼び寄せは「実家から直接施設へ」か「同居を挟むか」で保険者が変わります
- グループホーム希望なら、住民票を移す段取りを先に整理しましょう
よくある質問
住民票を移さずに施設へ入ることはできますか?
短期入所(ショートステイ)や入院と違い、有料老人ホームや特養など生活の本拠が施設へ移る入居では、住民基本台帳の考え方から住民票も施設へ移すのが原則です。住所地特例があるため、住民票を移しても介護保険の保険者は変わりません。「住民票を動かすと保険が使えなくなるのでは」という心配は不要です。
県外の施設でも住所地特例は使えますか?
使えます。市区町村をまたぐ転居であれば、県内・県外を問わず適用されます。たとえば東京から大阪府内の施設へ呼び寄せる場合も、保険者は東京の元の区市町村のままです。なお、同じ市区町村内の施設へ移る場合は保険者が変わらないため、この特例自体が不要です。
保険料の金額は変わりますか?どちらの市区町村に納めますか?
元の市区町村へ納め続け、金額も元の市区町村の基準(所得段階)で計算されます。施設のあるまちの保険料水準は影響しません。年金からの天引き(特別徴収)も、切り替わりの時期を除いてそのまま続くのが一般的です。
入居予定の施設が住所地特例の対象かどうか、どう確認すればよいですか?
施設へ直接尋ねるのが確実です。特養・老健・介護医療院・有料老人ホーム・軽費老人ホーム(ケアハウス)は対象で、サ高住は食事の提供などを行い有料老人ホームに該当すれば対象です。都道府県や市区町村が対象施設の一覧を公表している場合もあります。
グループホームに市外から入りたい場合はどうすればよいですか?
グループホーム(認知症対応型共同生活介護)は住所地特例の対象外のため、原則として先に施設のある市区町村へ住民票を移してから申し込みます。転入後すぐの申込みをどう扱うかは自治体により運用が異なるため、施設のある市区町村の介護保険窓口へ事前に確認しておくと安心です。
施設から別の市の施設へ住み替えたら、保険者はどうなりますか?
対象施設から対象施設へ直接移る場合は、引き続き最初の入所前の市区町村が保険者のままです。その際は元の市区町村へ住所地特例変更届を提出します。退居して自宅などへ戻った場合は特例が終了し、新しい住所地の市区町村が保険者になります。
参考(一次情報)
- e-Gov法令検索「介護保険法」(第13条 住所地特例)
- 厚生労働省 社会保障審議会介護保険部会 参考資料「住所地特例」
- 厚生労働省老健局「住所地特例に係る事務の見直しの概要について」
- 西宮市「介護保険の住所地特例について」
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