最終更新: 2026-07-20
介護と仕事の両立を続けるには?使える制度と両立支援の始め方
介護と仕事の両立とは、家族の介護をしながら働き続けることです。両立を難しくする要因や年間約10万人にのぼる介護離職者数の背景をふまえ、介護休業・介護休暇・介護休業給付金・在宅サービスなど使える制度を3層に整理し、何から始めればよいかを解説します。
この記事の要点
- 介護と仕事の両立とは、家族を介護しながら働き続けることです。働きながら家族を介護している人は、全国に約365万人(2022年・総務省調査)にのぼります
- 介護と仕事の両立を難しくする要因は、突発的な対応・精神的負担・情報不足の3つが中心です。介護や看護を理由とした離職者は、2022年で約10.6万人と、年間10万人前後で推移しています
- 両立を支える制度は、休む(介護休業は通算93日、介護休暇は年5日または10日)、収入を補う(介護休業給付金で賃金の67%相当)、負担を減らす(訪問介護やデイサービスなどの在宅サービス)の3層で整理できます
- 介護に直面したら、地域包括支援センターへの相談、要介護認定の申請、ケアマネジャー選びという3つを並行して進めることが、両立の土台づくりになります
- 2025年4月の法改正で、40歳到達時の情報提供や、介護に直面した従業員への個別周知・意向確認が企業の義務になりました。両立支援制度がない会社でも、まずは人事労務への相談から始められます
介護と仕事の両立とは、どのようなことを指しますか?
結論介護と仕事の両立とは、家族の介護をしながら仕事を続けていくことを指します。働きながら家族を介護している人は、全国に約365万人(2022年・総務省調査)にのぼります。
介護と仕事の両立とは、親や配偶者など家族の介護をしながら、それまでどおり仕事を続けていくことをいいます。特定の法律や制度の名前ではなく、介護休業や介護休暇、介護サービスの利用など、複数の制度や仕組みを組み合わせて実現していく状態そのものを指す言葉です。
総務省統計局「令和4年就業構造基本調査」によると、働きながら家族を介護している人は全国に約365万人にのぼります。介護は一部の特別な家庭だけの問題ではなく、働く人の誰にとっても起こりうる身近なテーマだと分かります。
とはいえ、親の介護が始まったばかりの段階では、このまま仕事を続けられるのだろうか、休んだら職場に迷惑をかけるのではないか、といった漠然とした不安を抱える方が少なくありません。この記事では、両立を難しくする要因や介護離職の現状をふまえたうえで、両立を支える制度を「休む」「収入を補う」「負担を減らす」という3つの層に整理し、まず何から手をつければよいかを順番に解説します。
介護と仕事の両立が難しいのは、なぜですか?
結論介護と仕事の両立が難しいのは、突発的な対応・精神的負担・情報不足という3つの要因が重なりやすいためです。介護や看護を理由とした離職者は、年間およそ10万人前後で推移しています。
介護と仕事の両立を難しくする要因は、大きく3つに整理できます。次の3つが同時に重なると、相談する余裕もないまま「自分が仕事を辞めて介護するしかない」という判断に傾きやすくなります。
総務省統計局「令和4年就業構造基本調査」によると、介護・看護を理由とした離職者は令和4年(2022年)で約10.6万人、平成29年(2017年)の調査でも約9.9万人と、年間およそ10万人前後で推移しています。離職者の約8割は女性で、50代を中心とした働き盛りの世代に多いという特徴があります。
介護離職には、収入の減少や再就職の難しさ、介護が落ち着いたあとの生活の立て直しといったリスクが伴います。介護離職の具体的なリスクや、決断する前に確認したいポイントについては、別記事の介護離職を防ぐための解説でも詳しく取り上げていますので、あわせてご確認ください。
- 突発的な対応: 体調の急変・転倒・入院など、予定を立てにくい出来事にそのつど対応する必要があること
- 精神的負担: いつまで続くか分からない介護に対する、先の見えない不安や孤独感
- 情報不足: 介護休業や介護保険サービスなど、使える制度や相談窓口をそもそも知らないこと
仕事と介護を両立するための制度は、どのように整理できますか?
結論仕事と介護を両立するための制度は、休む・収入を補う・負担を減らすという3つの層で整理できます。3層を組み合わせて使うことが、離職を避けるための現実的な選択肢になります。
介護と仕事の両立を考えるとき、制度や仕組みが多すぎて何から調べればよいか分からなくなりがちです。ここでは、両立を支える制度を役割ごとに3つの層に整理します。1つ目は「休む」ための制度(介護休業・介護休暇)、2つ目は「収入を補う」ための制度(介護休業給付金)、3つ目は「介護そのものの負担を減らす」ための在宅サービスやケアマネジャーへの相談です。
この3層は、どれか1つだけを使えばよいというものではなく、状況に応じて組み合わせて使うことを前提にした仕組みです。次の表で全体像を確認したうえで、それぞれの層について詳しく見ていきましょう。
| 支える視点 | 主な制度・サービス | こんなときに使う |
|---|---|---|
| 休む | 介護休業(通算93日)・介護休暇(年5日または10日) | 要介護認定の申請や施設探しなど、体制づくりにまとまった時間が必要なとき |
| 収入を補う | 介護休業給付金(雇用保険) | 介護休業を取得し、休業中の給与が無給または減額になるとき |
| 負担を減らす | 訪問介護・デイサービスなどの在宅サービス、ケアマネジャーへの相談 | 日々の介護そのものを専門職や外部サービスに任せ、心身の負担を減らしたいとき |
出典: 厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし」「仕事と介護の両立支援ガイド」にもとづく制度の整理(2026年7月時点)。実際に利用できる制度は、雇用形態や勤務先の就業規則によって異なる場合があります。
「休む」ための介護休業と介護休暇は、どう使い分けますか?
結論「休む」ための制度は、通算93日まで取得できる介護休業と、年5日(対象家族2人以上なら年10日)取得できる介護休暇の2つがあり、必要な期間の長さで使い分けます。
介護休業は、要介護状態にある対象家族を介護するために、対象家族1人につき通算93日まで、3回に分けて取得できる休業制度です。育児・介護休業法にもとづく権利で、要件を満たせばパートや契約社員の方も取得できます。要介護認定の申請やケアマネジャー選び、施設探しなど、体制づくりにまとまった時間が必要なときに向いています。
一方、介護休暇は、対象家族が1人なら年5日、2人以上なら年10日取得でき、1時間単位でも取得できる短期の休みです。通院の付き添いやケアマネジャーとの面談など、数時間から1日で終わる用事に向いています。当日の申出でも取得できる点も、介護休業との大きな違いです。
2つの制度の主な違いは、次の表のとおりです。対象家族の範囲や申請の流れは別記事の介護休業についての解説、取得単位や有給・無給の扱いは別記事の介護休暇についての解説で、それぞれ詳しく整理しています。
| 比較項目 | 介護休業 | 介護休暇 |
|---|---|---|
| 主な使いどき | 体制づくりなど、まとまった対応が必要なとき | 通院の付き添いなど、単発の用事があるとき |
| 取得できる日数 | 対象家族1人につき通算93日まで | 対象家族1人なら年5日、2人以上なら年10日 |
| 取得の単位・回数 | 原則1日単位、3回まで分割可能 | 1日単位に加えて1時間単位でも取得可能 |
| 収入の支え | 雇用保険の介護休業給付金(賃金の67%相当) | 公的な給付金はなし(会社規定により有給の場合あり) |
出典: 厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし」にもとづく制度の比較(2026年7月時点)。介護休暇は2025年4月から、勤続6か月未満を対象外にする労使協定の仕組みが廃止されました。
仕事を休んでいる間の収入は、どのように補えますか?
結論仕事を休んでいる間の収入は、雇用保険から支給される介護休業給付金(休業開始時賃金の67%相当)で補うことができます。
介護休業は法律上、有給にすることまでは義務付けられていないため、休業中の給与を無給とする会社が多いのが実情です。ただし、雇用保険の被保険者であるなど一定の要件を満たせば、休業開始時賃金日額の67%相当が介護休業給付金として支給されます。
支給額は、休業開始前6か月間の賃金をもとにした休業開始時賃金日額に、支給日数と67%を掛けて計算します。月収別の目安は、次の表のとおりです。
申請はハローワークへ、休業が終わったあとにまとめて行うのが基本です。支給要件や必要書類、対象家族1人につき3回まで分割した場合の考え方、税金や社会保険料の扱いなど、より詳しい内容は別記事の介護休業給付金の解説でまとめていますので、あわせてご覧ください。
| 休業開始時の賃金(月額目安) | 介護休業給付金の目安(67%相当・月換算) |
|---|---|
| 月30万円程度 | 月20万円程度 |
| 月25万円程度 | 月17万円程度 |
| 月20万円程度 | 月13万円程度 |
出典: 厚生労働省の介護休業給付金の計算方法(休業開始時賃金日額×支給日数×67%)にもとづく概算(2026年7月時点)。支給額には上限・下限があり毎年8月に見直されるため、正確な金額は勤務先またはハローワークにご確認ください。
介護そのものの負担を減らすには、どのようなサービスがありますか?
結論介護そのものの負担を減らすには、訪問介護・デイサービスなどの在宅サービスと、ケアマネジャーへの相談を組み合わせるのが基本です。要支援1・2、要介護1〜5の7段階に応じて、相談する窓口が変わります。
仕事と介護の両立は、休む・収入を補うという2つの制度だけでは長く続けにくいのが実情です。日々の介護そのものを家族だけで抱え込まず、訪問介護やデイサービスなどの介護保険サービスに任せられる部分を増やすことが、3つ目の柱になります。
訪問介護(ホームヘルプ)は、ホームヘルパーが自宅を訪問し、食事や入浴などの身体介護、掃除・調理などの生活援助を行うサービスです。デイサービス(通所介護)は、日帰りで施設に通い、食事・入浴・機能訓練やレクリエーションを受けられるサービスで、本人の閉じこもり防止と、家族が介護から離れる時間(レスパイト)の両方に役立ちます。
これらを組み合わせるケアプランは、要介護1〜5の方はケアマネジャー(介護支援専門員)、要支援1・2の方は地域包括支援センターが窓口になって作成し、費用の自己負担はありません。誰に相談すればよいかは、次の表で確認できます。
訪問介護・デイサービスの具体的な内容や料金、ケアマネジャーの探し方や変更方法、地域包括支援センターに相談できることについては、それぞれ別記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
| サービス・相談先 | 内容 | 利用の窓口 |
|---|---|---|
| 訪問介護(ホームヘルプ) | ホームヘルパーが自宅を訪問し、身体介護・生活援助を行う | ケアマネジャー(要支援の方は地域包括支援センター) |
| デイサービス(通所介護) | 日帰りで施設に通い、食事・入浴・機能訓練を受ける | ケアマネジャー(要支援の方は地域包括支援センター) |
| ケアマネジャーへの相談 | ケアプランの作成やサービスの組み合わせ方を相談する(要介護の方は費用無料) | 地域包括支援センターからの紹介、または居宅介護支援事業所 |
| 地域包括支援センター | 制度全般の総合相談や、要支援の方のケアプラン作成を行う公的窓口 | お住まいの市区町村が設置(住所地により担当が決まる) |
出典: 厚生労働省「介護保険制度の概要」「介護サービス情報公表システム」にもとづくサービス内容の整理(2026年7月時点)。利用できるサービスの内容や回数は、要介護度や支給限度額によって異なります。
勤務先にはいつ、どのように相談すればよいですか?
結論勤務先への相談は、介護が必要になった段階でできるだけ早く、人事労務や上司に伝えるのが基本です。2025年4月からは、企業側の相談体制の整備も義務になっています。
介護休業や介護休暇は権利として法律で保障されていますが、実際に取得するには、対象家族の状況や休みたい時期を勤務先に伝える必要があります。相談のタイミングは、要介護認定の結果が出てからでなくてもかまいません。親の体調が悪化しており通院や手続きで休みが必要になりそうだ、という段階で早めに伝えておくと、業務の調整もしやすくなります。
伝え方に迷う場合は、対象家族の状態、いつ頃・どの程度の休みが必要になりそうか、利用したい制度(介護休業・介護休暇)の見込みという3点を、人事労務担当または直属の上司に伝えるところから始めるとよいでしょう。制度の詳しい要件や必要書類は、担当窓口に確認しながら進めるのが一般的です。
2025年4月に施行された改正育児・介護休業法では、40歳到達時など早い段階での情報提供に加え、介護に直面したと申し出た従業員への制度の個別説明と利用意向の確認、相談窓口の整備が、企業規模を問わず義務になりました。そのため、以前より会社に相談しやすい環境が整いつつあります。
両立支援の制度が就業規則に整っていない、あるいは前例がないと感じる会社であっても、介護休業や介護休暇そのものは、要件を満たせば法律上取得できる権利です。まずは人事労務に相談し、対応が難しいと感じた場合は、勤務先を管轄する都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)へ相談する方法もあります。個別の対応については、勤務先または労働局にご確認ください。
両立を続けるために、まず何から始めればよいですか?
結論両立を続けるためには、地域包括支援センターへの相談・要介護認定の申請・ケアマネジャー選びの3つを並行して進めることが最初の一歩になります。
介護に直面したとき、何から手をつければよいか分からず時間がすぎてしまうと、突発的な対応に追われて休職や離職を考えざるを得なくなることがあります。あわせて勤務先にも早めに相談し、必要に応じて介護休業や介護休暇の取得を検討しましょう。介護休業は自分ひとりで介護をやり遂げるための期間ではなく、この体制づくりを進めるための期間として使うのが実務的な考え方です。
介護離職を決断する前には、いったん立ち止まって、両立支援制度の利用や在宅サービスの追加に加えて、施設への入居という選択肢も含めて情報収集しておくことをおすすめします。介護の窓口の相談現場では、在宅での介護に限界を感じてから施設を探し始め、選択肢が限られてしまったというご家族のお話もよく伺います。特別養護老人ホーム(特養、原則要介護3以上)、介護老人保健施設(老健、要介護1以上で在宅復帰を目指す方向け)、グループホーム(認知症対応型共同生活介護、要支援2以上・認知症の診断・原則同一市区町村が条件)など、状態に応じた選択肢を早めに知っておくと、いざというときに慌てずにすみます。
関西4府県(大阪・京都・兵庫・奈良)にお住まいの方は、介護の窓口の相談員が施設の空き状況や費用感を無料でお調べします。対応エリア外にお住まいの方は、お近くの地域包括支援センターにご相談ください。
優先順位をつけるなら、まずは次の3つを並行して進めることをおすすめします。
- 地域包括支援センターへの相談: お住まいの市区町村が設置する総合相談窓口で、何度でも無料で相談できます
- 要介護認定の申請: 市区町村の窓口で申請し、結果通知までは原則30日以内が目安です
- ケアマネジャー選び: 要介護の方はケアマネジャー、要支援の方は地域包括支援センターが窓口になります
よくある質問
一言でいうと、介護と仕事の両立とはどのようなことですか?
一言でいうと、介護と仕事の両立とは、家族の介護を理由に仕事を辞めず、両方を続けていくことです。休む(介護休業・介護休暇)・収入を補う(介護休業給付金)・負担を減らす(訪問介護やデイサービスなどの在宅サービス)という3層の制度を組み合わせることで実現しやすくなります。
介護と仕事の両立が難しいと感じるのはなぜですか?
介護と仕事の両立が難しいと感じる理由は、突発的な対応が必要になること、先の見えない精神的負担、そして制度やサービスを知らないという情報不足の3つが中心です。情報不足は、地域包括支援センターやケアマネジャーへの相談で解消しやすい部分でもあります。
介護離職者は年間どれくらいいますか?
介護離職者は、総務省の令和4年(2022年)調査では約10.6万人でした。前回の平成29年(2017年)調査の約9.9万人からも増えており、年間およそ10万人前後で推移しています。
仕事を休んでいる間の収入は、どう補えばよいですか?
仕事を休んでいる間の収入は、介護休業を取得した場合、雇用保険から休業開始時賃金の67%相当が介護休業給付金として支給されることで補えます。対象家族1人につき通算93日を上限に、3回に分けた休業のそれぞれが支給対象になります。
両立支援制度を導入していない会社では、どうすればよいですか?
両立支援制度を導入していない会社であっても、介護休業や介護休暇そのものは、要件を満たせば法律上取得できる権利です。2025年4月からは、介護に直面した従業員への個別周知や意向確認、相談窓口の整備が企業の義務になっているため、まずは人事労務へ相談してみましょう。
介護と仕事の両立に向けて、まず何から始めればよいですか?
介護と仕事の両立に向けてまず取り組むべきことは、地域包括支援センターへの相談、要介護認定の申請、ケアマネジャー選びの3つを並行して進めることです。あわせて勤務先の人事労務にも早めに相談し、介護休業や介護休暇の利用を検討しましょう。
参考(一次情報)
- 厚生労働省「仕事と介護の両立支援ガイド」
- 厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし」
- 総務省統計局「令和4年就業構造基本調査」
- 厚生労働省「介護離職を防ぐための取組事例集」
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