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最終更新: 2026-07-19

成年後見制度はひどい?

成年後見制度とは、判断能力が不十分な方の財産管理や契約を家庭裁判所の関与のもとで支援する制度です。「ひどい」と言われやすい理由や、後見人の約8割が専門職である実情、途中でやめられない点、申立て前に確認すべきポイントをやさしく整理します。

この記事の要点

  • 成年後見制度(法定後見)は、いったん利用を始めると本人の判断能力が回復しない限り原則として本人が亡くなるまで続き、目的を果たしても自分の判断でやめることはできません。
  • 最高裁判所の統計(令和6年、申立件数41,841件)では、選任された後見人等のうち親族は約2割にとどまり、司法書士・弁護士・社会福祉士などの専門職が約8割を占めています。
  • 専門職が後見人になった場合の基本報酬は、大阪家庭裁判所のめやすで月額2万円(管理財産1,000万円以下)からが目安で、この負担は本人が亡くなるまで続きます。
  • 後見人が管理する財産は本人の生活のためだけに使うのが原則で、孫への学費援助や生前贈与など、家族のために使うことは基本的にできません。
  • 日常生活自立支援事業(利用料は1回1,200円前後が目安)や家族信託など、より軽い負担で使える代替手段もあるため、申立て前に地域包括支援センターなどへ相談することで後悔を減らせます。

成年後見制度とは、そもそもどのような制度ですか?

結論成年後見制度とは、認知症や知的障害などで判断能力が不十分な方の財産管理や契約を、家庭裁判所が関わりながら後見人などが支援する制度です。「ひどい」という声の多くは、途中でやめられない点や専門職への報酬が続く点に関わっています。

成年後見制度とは、認知症・知的障害・精神障害などで判断能力が不十分になった方の預貯金の管理や、介護サービス・施設入居の契約といった法律行為を、家庭裁判所が関わりながら後見人などが支援する制度です。すでに判断能力が低下した方のために家庭裁判所が支援者を選ぶ法定後見制度と、元気なうちに将来の支援者を自分で決めておく任意後見制度の2種類があります。

インターネットで「成年後見制度 ひどい」と検索すると、後見人が思うように選べなかった、財産を家族のために使えなくなった、といった声が目に留まります。こうした声の背景には、制度の仕組み上避けられない部分と、始める前に知っておけば防げた誤解の両方が混ざっています

この記事では、なぜ「ひどい」という印象を持たれやすいのか、その理由を最高裁判所や家庭裁判所の統計にもとづいて具体的に整理します。そのうえで、誤解されやすい点や、より軽い代替手段との比較、申立て前に確認しておきたいポイントまで、順番にお伝えします。

なぜ「成年後見制度はひどい」と言われることがあるのですか?

結論一度始めると原則やめられないこと、後見人の約8割が家族以外の専門職であること、財産が本人の生活のためだけに限定されることの3点が、主な理由として挙げられます。

相談現場や利用者の声を整理すると、「ひどい」と感じられやすい理由には、共通するパターンがあります。次の3つが代表的です。

  • 原則として途中でやめられない: 不動産の売却や遺産分割など、目的を果たした後も利用をやめることができず、原則として本人が亡くなるまで続きます。
  • 後見人を家族が自由に選べるとは限らない: 親族を候補者として挙げることはできますが、実際に選ぶのは家庭裁判所で、専門職が選ばれる割合のほうが高くなっています。
  • 財産が本人の生活のためだけに限定される: 家族への援助や生前贈与など、本人以外のために財産を動かすことは原則としてできません。

一度始めた後見は、本当に途中でやめられないのですか?

結論本当です。法定後見は、本人の判断能力が回復したと医学的に認められる場合などを除き、原則として本人が亡くなるまで続きます。不動産売却など当初の目的を果たしても、それだけを理由にやめることはできません。

「不動産を売却するためだけに」「遺産分割協議を進めるためだけに」と、一時的な目的で法定後見の利用を始める方は少なくありません。しかし、目的を果たした後も、後見そのものをやめることは原則としてできません。法定後見が終了するのは、本人が亡くなったとき、または本人の判断能力が回復したと医師の診断などにより認められたときに限られます。

認知症などによる判断能力の低下は回復が難しいことが多いため、実質的には本人が亡くなるまで続く長期的な仕組みと考えておく必要があります。専門職が後見人になった場合は、この間の報酬の負担も続きます。

この「やめられない」という性質こそが、成年後見制度が「ひどい」と語られる大きな理由の一つです。だからこそ、いつ、何のために必要かをはっきりさせてから申立てを検討することが、後悔を防ぐ第一歩になります。

後見人は家族が自由に選べないというのは本当ですか?

結論本当です。申立ての際に親族を候補者として挙げることはできますが、最終的に選ぶのは家庭裁判所です。最高裁判所の統計(令和6年)では、選任された後見人等のうち親族は約2割、専門職が約8割を占めています。

「家族が後見人になれると思っていたのに、知らない専門職が選ばれた」という戸惑いも、「ひどい」という印象につながりやすい場面の一つです。しかし、後見人を最終的に決めるのは家庭裁判所であり、家族が自由に選べる制度ではありません

親族を候補者として申し立てた場合、実際に親族が選ばれることも少なくありませんが、希望した人が選ばれなかったことを理由に申立てを取り下げることは原則できません。この点をあらかじめ理解しておくことが、後悔を防ぐポイントです。

最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況(令和6年1月〜12月)」によると、2024年(令和6年)の申立件数は41,841件で、選任された後見人等の内訳は次のとおりです。

後見人等になった人割合の目安(令和6年)
親族(配偶者・子・兄弟姉妹など)約2割
親族以外の専門職(司法書士・弁護士・社会福祉士など)約8割

最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況(令和6年1月〜12月)」による、申立件数41,841件の選任結果にもとづく概数です(2026年時点)。管理財産が多い場合や、親族間で意見が分かれている場合などに、専門職が選ばれやすい傾向があります。

後見人への報酬は、いくらをいつまで払い続けるのですか?

結論専門職が後見人になった場合、大阪家庭裁判所のめやすでは基本報酬が月額2万円(管理財産1,000万円以下)からで、この負担は後見が続くかぎり、本人が亡くなるまで継続します。

報酬は本人の財産から支払われ、金額は家庭裁判所が事案ごとに決定します。大阪家庭裁判所が公表するめやすでは、基本報酬は月額2万円(管理財産1,000万円以下)が目安で、管理財産が多いほど増額されます。親族が後見人になった場合も報酬を請求することはできますが、請求しないことも可能です。

月2万円という金額だけを見ると小さく感じられるかもしれませんが、原則として本人が亡くなるまで続くため、利用期間が長くなるほど総額は大きくなります。目安を試算すると、次のようになります。

利用期間の目安基本報酬(月額2万円)の総額目安
5年約120万円
10年約240万円
20年約480万円

大阪家庭裁判所「成年後見人等の報酬額のめやす」(令和4年2月)による基本報酬(管理財産1,000万円以下・月額2万円)をもとにした概算です(2026年時点)。実際の利用期間や金額は本人の年齢・健康状態・管理財産額により異なり、特別な事務があった場合は付加報酬が加わることもあります。

本人の財産は、家族のために使うことができないのですか?

結論原則として使えません。後見人が管理する財産は本人の生活のために使うのが基本で、家族への生前贈与や援助、立て替えの返済といった目的での支出は認められにくいのが実情です。

「後見人がついたら、家族のためにまとまったお金を用意できると思っていた」というケースは、実際には期待どおりにいかないことがほとんどです。後見人が管理する財産は、あくまで本人の生活と権利を守るために使うものであり、家族のために使うことは原則としてできません。よくある場面を整理すると、次のようになります。

家族が希望しやすいこと制度上の扱い
孫の入学祝いや学費を、本人の預金から援助したい原則できません(本人の財産は本人の生活のために使うのが基本です)
相続税対策として、生前贈与を進めたい原則できません(本人にとっての必要性を説明できない財産の移動は認められにくくなっています)
同居家族の生活費の一部を、本人の年金から負担してほしい原則できません(本人の支出として説明できる範囲に限られます)
本人が住んできた自宅を売って、施設費用に充てたい家庭裁判所の許可があれば可能です(後見人だけの判断では売却できません)
冠婚葬祭費など、まとまった金額を急に引き出したい内容によっては可能ですが、後見制度支援信託等を利用している場合は家庭裁判所の指示書が必要になることがあります

一般的な運用の目安です(2026年時点)。個別の可否は本人の状況や家庭裁判所・後見人の判断によります。

「ひどい」という声の裏には、どのような誤解がありますか?

結論後見人を家族が完全に自由に選べる、始めてから気軽にやめられる、家族は財産に一切関われなくなる、といった誤解が、実際の制度への戸惑いを大きくしていることがあります。

ここまで見てきた「ひどい」と感じられやすい理由の中には、制度の仕組みとして避けられない部分と、事前に正しく理解しておけば戸惑いを減らせる部分の両方があります。よくある誤解を整理しました。

  • 誤解: 後見人は家族が自由に選べる → 実際: 候補者として親族の名前を挙げることはできますが、決定するのは家庭裁判所です。
  • 誤解: 専門職が選ばれても、家族の意向で交代させられる → 実際: 不正行為が疑われる場合など正当な理由がない限り、原則として交代はできません。
  • 誤解: 後見が始まれば、状況に応じていつでも自由にやめられる → 実際: 本人の判断能力が回復したと認められる場合などを除き、本人が亡くなるまで続きます。
  • 誤解: 後見人がついたら、家族は本人の財産に一切関われなくなる → 実際: 後見人からの収支報告を受けたり、日常的に連絡・相談したりすることはできますが、最終的な決定権は後見人にあります。

成年後見制度以外に、どのような選択肢がありますか?

結論判断能力が残っている段階であれば、社会福祉協議会の日常生活自立支援事業(利用料は1回1,200円前後が目安)や、家族信託といった、家庭裁判所の関与や継続的な報酬が発生しにくい選択肢もあります。

「今すぐ後見人が必要というより、通帳の管理や将来への備えが不安」という段階であれば、成年後見制度以外の選択肢を検討する余地があります。代表的な制度を比較すると、次のようになります。

家族信託は、判断能力があるうちに契約を結んでおく必要があるため、認知症などの診断がすでに出ている場合は選べません。日常生活自立支援事業は比較的始めやすい一方、判断能力が大きく低下すると続けられず、成年後見制度への移行が必要になります。どの制度が合うか迷うときは、地域包括支援センターや社会福祉協議会の窓口に相談してみてください。施設探しとあわせた段取りは、介護の窓口の相談員が無料でお手伝いします。

制度利用できる場面支援する人を選べるかやめやすさ
法定後見判断能力が不十分になった後候補者は挙げられるが、決めるのは家庭裁判所原則、本人が亡くなるまでやめられない
任意後見判断能力があるうちに契約しておく(効力は低下後)本人が自分で選べる契約であらかじめ定めた内容による
家族信託判断能力があるうちに契約しておく本人が自分で選べる(家族などが受託者になる)契約内容にもとづき、家族間で比較的柔軟に見直せる
日常生活自立支援事業契約内容を理解できる判断能力が残っているうち社会福祉協議会が支援員を選ぶ本人の意思でいつでも終了できる

各制度の一般的な整理です(2026年時点)。家族信託は信託法にもとづく契約で、家庭裁判所の関与や継続的な報酬は原則発生しませんが、施設入居契約や医療同意の手続きなど身上保護の代理権は原則含まれません。日常生活自立支援事業の利用料は訪問1回あたり1,200円前後が平均的な目安です(厚生労働省資料・2026年時点)。本人の状態や目的によって適した制度は異なるため、個別の判断は専門家や家庭裁判所・社会福祉協議会にご確認ください。

申立てを検討する前に、どこに相談すればよいですか?

結論地域包括支援センターや市区町村の中核機関、家庭裁判所の窓口などに、申立て前の相談ができます。申立てから利用開始まではおおむね2〜4か月程度かかるため、早めの相談が安心です。

「ひどい」という声に不安を感じて申立てをためらう必要はありませんが、勢いだけで申し立てて後悔しないために、事前に整理しておきたい点があります。

介護の窓口の相談現場では、特別養護老人ホーム(特養、原則要介護3以上)やグループホーム(認知症対応型共同生活介護、要支援2以上かつ認知症の診断があり、原則として施設と同一市区町村に住民票がある方が対象)、介護付き有料老人ホーム(要介護度の条件は施設により異なります)などへの入居契約を進める段階になって、「本人の預金が動かせない」と気づき、成年後見制度の利用を急いで検討し始めるご家族に出会うことがあります。施設探しと並行して、早めに中核機関や地域包括支援センターへ相談しておくと、慌てずに準備を進められます。施設の空き状況やご予算に合う候補探しは、介護の窓口の相談員が無料でお調べしますので、あわせてお気軽にご相談ください。

  • 何のために必要か(施設入居契約、預貯金の管理、不動産の売却、遺産分割など)を具体的にする
  • 本人の財産の内容(預貯金・不動産・負債など)をおおまかに把握しておく
  • 親族を後見人の候補者として立てるかどうかを、家族内で話し合っておく
  • 日常生活自立支援事業や家族信託など、代替手段で対応できないかを確認する

よくある質問

一言でいうと、成年後見制度はなぜ「ひどい」と言われるのですか?

一言でいうと、原則として途中でやめられず、専門職が選ばれた場合は月2万円前後の報酬が本人が亡くなるまで続く点が、負担感につながりやすいためです。本人の財産と権利を守るための制度でもあるため、目的をはっきりさせてから検討することが大切です。

成年後見制度は、いったん始めた後に取り消すことができますか?

原則としてできません。法定後見は、本人の判断能力が回復したと医学的に認められる場合などを除き、本人が亡くなるまで続きます。不動産の売却や遺産分割など当初の目的を果たした後も、それだけを理由にやめることはできません。

後見人になってほしい家族を、必ず指名できますか?

候補者として名前を挙げることはできますが、必ず指名できるわけではありません。最高裁判所の統計(令和6年)では、選任された後見人等のうち親族は約2割、司法書士・弁護士・社会福祉士などの専門職が約8割を占めています。

専門職の後見人がついた場合、報酬はいつまで払うのですか?

本人が亡くなるまで、または後見が終了するまで払い続けます。大阪家庭裁判所のめやすでは、管理財産1,000万円以下の場合で月額2万円が基本報酬の目安とされ、管理財産が多いほど増額されます。

成年後見制度より軽い負担で使える制度はありますか?

あります。社会福祉協議会が実施する日常生活自立支援事業は、契約内容を理解できる判断能力が残っている方向けの制度で、本人の意思でいつでもやめられます。判断能力があるうちに家族信託を契約しておく方法もあります。

申立てを検討する前に、まずどこに相談すればよいですか?

地域包括支援センターや市区町村の中核機関、家庭裁判所の窓口などに相談できます。目的や財産の状況を整理してから相談すると、成年後見制度が本当に必要か、他の方法で対応できるかを一緒に検討してもらえます。

参考(一次情報)

  • 最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況(令和6年1月〜12月)」
  • 大阪家庭裁判所「成年後見人等の報酬額のめやす」(令和4年2月)
  • 厚生労働省 成年後見制度利用促進ポータルサイト「成年後見はやわかり」
  • 厚生労働省「日常生活自立支援事業」

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