最終更新: 2026-07-05
介護離職を防ぐには
介護や看護を理由に仕事を辞める介護離職は年間約10万人。収入減や再就職の難しさなどリスクが大きい一方、介護休業(通算93日・給付金67%)や介護休暇、介護サービスの活用で防げる場合が多くあります。制度の内容と会社への伝え方、相談の順番をやさしく解説します。
この記事の要点
- 介護や看護を理由とした離職者は年間およそ10万人。2022年の総務省調査では約10.6万人と、働く人の誰にでも起こりうる問題です
- 介護離職には収入の減少・再就職の難しさ・介護後の生活の立て直しという3つのリスクがあり、離職後にかえって負担が増えたと感じる人が多いのが実情です
- 介護休業は通算93日・3回まで分割でき、雇用保険から賃金の67%相当の介護休業給付金が支給されます。自分で介護する期間ではなく、体制づくりの期間として使うのがコツです
- 2025年4月の育児・介護休業法改正で、相談窓口の整備や制度の個別説明が企業の義務になりました。辞める前に、まず会社と地域包括支援センターへ相談しましょう
- 施設やサービスに頼ることは介護の放棄ではありません。制度と外部の力を組み合わせれば、仕事を続けながら介護できる場合が多くあります
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介護離職とは?辞める前に知ってほしい結論
結論介護離職とは、家族の介護を理由に仕事を辞めることです。収入や再就職、介護が終わった後の生活への影響が大きいため、まずは制度と介護サービスで両立の道を探ることが大切です。
介護離職とは、親や配偶者など家族の介護のために、それまで続けてきた仕事を辞めることです。ある日突然親が倒れて入院し、退院後の生活のめどが立たないまま、気づけば「自分が辞めて介護するしかない」と思い詰めてしまう。介護離職の多くは、こうした準備のない状態で起こるのが実情です。
最初に結論からお伝えすると、介護離職は本人にも家族にもリスクが大きく、両立支援制度と介護サービスをうまく使えば回避できる場合が多いと考えられています。介護休業(通算93日)や介護休暇といった法律上の制度に加えて、訪問介護(ホームヘルプ)やデイサービス(通所介護)、施設への入居など、家族の代わりに日々の介護を担ってくれる仕組みは想像以上に充実しています。
この記事では、介護離職の現状データとリスク、介護休業など使える制度の一覧、会社への伝え方と相談の順番までを、介護がはじめての方にも分かるように順番に解説します。
介護離職は年間どれくらい?データで見る現状
結論介護や看護を理由とした離職者は年間およそ10万人が目安です。総務省の令和4年(2022年)調査では約10.6万人で、40〜50代の働き盛り世代、特に女性に多いのが特徴です。
総務省統計局の「就業構造基本調査」によると、令和4年(2022年)の調査では、過去1年間に介護・看護を理由に離職した人は約10.6万人でした。前回の平成29年(2017年)調査の約9.9万人から増えており、年間およそ10万人前後の方が介護を理由に仕事を離れている計算になります。
同じ調査では、働きながら介護をしている人は約365万人にのぼるとされています。介護・看護を理由に離職した人の約8割は女性で、年代では50代が中心とされますが、40代や男性の離職も少なくありません。介護離職は一部の特別な家庭の話ではなく、働く人の誰にでも起こりうる身近な問題といえます。
| 調査年 | 介護・看護を理由とする離職者数(年間) |
|---|---|
| 平成29年(2017年)調査 | 約9.9万人 |
| 令和4年(2022年)調査 | 約10.6万人 |
出典: 総務省統計局「就業構造基本調査」。過去1年間に介護・看護を理由に前の仕事を離職した人数の概数です。2026年時点で公表されている直近の調査は令和4年調査です。
介護離職の3つのリスク|収入・再就職・その後の生活
結論介護離職には、収入の減少、再就職の難しさ、介護が終わった後の生活の立て直しという3つの大きなリスクがあります。離職後にかえって負担が増えたと感じる人も少なくありません。
介護のための時間を確保したいという気持ちから離職を選ぶ方は多いのですが、辞めた後に待っている変化を事前に知っておくことがとても大切です。厚生労働省の委託調査でも、介護離職をした人の多くが、離職後にかえって経済面・精神面・肉体面の負担が増えたと回答しています。収入が途絶える不安の中で介護に専念すると、休む時間も相談相手も減ってしまうためです。
辞めたら楽になるどころか、離職後のほうがつらくなったという声は珍しくありません。主なリスクを表に整理しました。
| リスク | 具体的な内容 |
|---|---|
| 収入の減少 | 給与や賞与がなくなり、貯蓄と親の年金に頼る生活になりがちです。厚生年金の加入期間や退職金にも影響し、自分の老後資金まで目減りします |
| 再就職の難しさ | 介護は数年単位で続くことが多く、ブランクが延びるほど、また年齢が上がるほど、以前と同じ条件での再就職は難しくなる傾向があります |
| 介護後の生活 | 介護が終わった時に仕事も収入も途絶えていると、住まいや老後資金など生活の立て直しそのものが大きな課題になります |
| 心身の負担 | 介護に専念すると休む時間や相談相手が減り、孤立から共倒れや介護うつにつながることもあります |
一般的に指摘されるリスクの整理です。影響の大きさは家計や家族構成など個々の状況により異なります。
仕事と介護の両立に使える制度一覧|介護休業・介護休暇など
結論育児・介護休業法には、介護休業(通算93日・3回まで分割)、介護休暇(年5日)、残業免除、短時間勤務などの両立支援制度があります。パートや契約社員の方も、要件を満たせば利用できるのが基本です。
辞める前に、まず法律で定められた両立支援制度を確認しましょう。正社員だけでなく、パート・契約社員など有期雇用の方も、一定の要件を満たせば利用できるのが基本です。
介護休業中は勤務先から給与が出ない会社が多いものの、雇用保険から介護休業給付金として休業開始時賃金の67%相当が支給されるのが一般的です。収入がゼロになるわけではないと知っておくだけでも、落ち着いて計画を立てやすくなります。主な制度は次のとおりです。
| 制度 | 内容の目安 |
|---|---|
| 介護休業 | 対象家族1人につき通算93日まで、3回まで分割して取得できます。雇用保険から介護休業給付金(休業開始時賃金の67%相当)が支給されます |
| 介護休暇 | 対象家族1人なら年5日、2人以上なら年10日。1時間単位でも取得でき、通院の付き添いやケアマネジャーとの面談に使えます |
| 所定外労働の制限(残業免除) | 申し出れば、介護が終わるまで残業が免除されます |
| 時間外労働・深夜業の制限 | 時間外労働を月24時間・年150時間以内に制限でき、深夜勤務の免除も請求できます |
| 短時間勤務などの措置 | 時短勤務・時差出勤・フレックスタイムなどのいずれかを、利用開始から3年以上の間で2回以上利用できます |
| テレワーク | 介護中の社員が在宅勤務を選べるようにすることが、2025年4月から企業の努力義務になりました |
出典: 厚生労働省「育児・介護休業法」に基づく制度の概要(2026年時点)。介護休業給付金の支給要件や手続きの詳細は、勤務先の人事労務またはハローワークでご確認ください。
介護休業は「自分で介護する期間」ではなく「体制を整える期間」
結論介護休業の93日は、自分が介護に専念するための期間ではなく、要介護認定の申請やサービスの手配など、働きながら介護を続けられる体制をつくるための準備期間と考えるのが基本です。
介護休業の93日を「自分が付きっきりで介護する期間」と考えてしまうと、休業が終わった時に介護体制が何も変わっておらず、そのまま退職につながりやすくなります。そうではなく、93日は働きながら介護を続けるための体制づくりに使うのが上手な活用方法です。
3回まで分割できるのも大切なポイントです。最初の入院・退院のタイミング、在宅介護が難しくなり施設を検討するタイミング、看取りが近づいたタイミングなど、介護の節目ごとに分けて使うと無理がありません。休業中に取り組むことの例としては、次のようなものがあります。
- 要介護認定の申請と、結果が出るまでの対応(申請から結果まで1か月程度が目安)
- 地域包括支援センターへの相談、ケアマネジャー(介護支援専門員)選びと契約
- 訪問介護やデイサービスなど、在宅サービスの利用体制づくり
- 在宅での両立が難しそうな場合の、施設の情報収集・見学・申し込み
- 家族やきょうだいとの役割分担、介護費用の話し合い
会社にはどう伝える?相談の順番と伝え方のコツ
結論退職を切り出す前に、会社には両立したい意思を、地域包括支援センターには介護体制づくりを相談するのが基本の順番です。介護を理由とした解雇や降格などの不利益取扱いは法律で禁止されています。
会社に伝える時のポイントは、退職を申し出るのではなく、「介護と両立しながら働き続けたい」という意思をまず伝えることです。介護の状況(誰を・どこで・どの程度)と、使いたい制度や働き方の希望を簡単なメモにして人事労務に相談すると、話がスムーズに進みます。
介護休業などの申し出や取得を理由とした解雇・降格といった不利益取扱いは、育児・介護休業法で禁止されています。一人で抱えて疲弊する前に、早めに共有することが両立への近道です。誰に何を相談すればよいか迷ったら、次の順番が目安になります。
| 順番 | 相談先 | 相談する内容 |
|---|---|---|
| 1 | 地域包括支援センター | 要介護認定の申請、当面の対応、使える介護サービス全般 |
| 2 | 会社の上司・人事労務 | 介護に直面したことの共有、介護休業・介護休暇など社内制度の確認 |
| 3 | ケアマネジャー | 勤務時間に合わせたケアプランの作成、サービス事業者との調整 |
| 4 | 家族・きょうだい | 役割分担、費用の分担、施設も含めた今後の方針 |
ケアプランの作成は、要介護1〜5の方は居宅介護支援事業所のケアマネジャーに依頼でき、自己負担はありません。要支援1・2の方は地域包括支援センターが窓口になります。
2025年4月の法改正で何が変わった?(育児・介護休業法)
結論2025年4月施行の改正育児・介護休業法で、介護離職防止のための研修や相談窓口の整備、介護に直面した社員への個別の制度説明・意向確認などが、企業規模を問わず義務化されました。
介護離職が社会的な課題となる中、2025年4月に施行された改正育児・介護休業法では、企業に求められる両立支援が大きく強化されました。介護に直面したと申し出た社員に対して、会社が制度を個別に説明し、利用の意向を確認することも義務になっています。つまり、介護のことを会社に相談しやすい環境づくりが、法律で後押しされる時代になっています。
「介護は個人的な事情だから言い出しにくい」と感じている方も、まずは人事や社内の相談窓口に一声かけてみる価値があります。主な改正ポイントは次のとおりです。
| 改正ポイント | 内容 |
|---|---|
| 雇用環境整備の義務化 | 両立支援制度に関する研修の実施や相談窓口の設置など、いずれかの措置がすべての企業に義務付けられました |
| 個別の周知・意向確認 | 介護に直面したと申し出た社員に、制度の内容を個別に説明し、利用の意向を確認することが義務になりました |
| 早期の情報提供 | 40歳前後の時期に、介護保険制度や両立支援制度の情報を会社から提供することが義務になりました |
| 介護休暇の要件緩和 | 勤続6か月未満の社員を労使協定で対象外にできる仕組みが廃止され、入社間もない人も取得しやすくなりました |
| テレワークの推進 | 介護中の社員が在宅勤務を選べるようにすることが努力義務になりました |
出典: 厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」(2025年4月施行)。
離職を考える前に|限界が近づいているサイン
結論介護のための遅刻・早退の常態化、睡眠不足の連続、有給休暇がすべて介護で消えるといった状態は、働き方の工夫だけでは両立が難しくなっているサインです。介護体制の見直しどきと考えましょう。
限界まで頑張ってから動くのではなく、サインの段階で介護体制を見直すことが、離職を防ぐいちばんの近道です。在宅サービスの増量や施設入居も含めて、介護体制そのものを見直すタイミングかどうかを確認してみてください。在宅介護の限界サインについては、別の記事でさらに詳しく解説しています。
相談現場では、退職を決めてから来られる方よりも、限界を感じ始めた段階で相談に来られた方のほうが、残されている選択肢がずっと多いと感じます。介護休業を使って施設を探し、入居後は元の働き方に戻れたというケースも少なくありません。次のようなサインが重なってきたら、見直しのきっかけと考えましょう。
- 介護のための遅刻・早退・欠勤が毎週のように続いている
- 有給休暇や介護休暇をほぼ使い切り、自分の休息に充てる日がない
- 夜間の介護で睡眠不足が続き、仕事中の集中力が落ちている
- 仕事中も介護のことが頭から離れず、ミスが増えた
- 「自分が辞めるしかない」という考えが繰り返し浮かぶ
施設やサービスに頼ることは「介護の放棄」ではありません
結論介護のプロや施設に任せることは、家族の役割を手放すことではありません。共倒れを防ぎ、家族としての時間と関係を守るための前向きな選択肢のひとつです。
「親を施設に預けるなんて申し訳ない」「自分の手で介護するのが子どもの務め」と、自分を責めてしまう方はとても多くいらっしゃいます。その気持ちは、家族を大切に思っているからこそのものです。ただ、介護を一人で抱えた結果、仕事も健康も失って共倒れになることは、介護されるご本人が望む姿ではないはずです。
食事や入浴などの日常のケアをプロに任せることで、ご家族は「介護をする人」から「会いに行く家族」に戻ることができます。施設への入居後に、かえって穏やかに話せる時間が増えたという声も多く聞かれます。施設やサービスに頼ることは介護の放棄ではなく、家族の関係と生活を守るための選択肢です。
受け皿となる施設には、原則要介護3以上の方が対象の特別養護老人ホーム(特養)、リハビリを受けながら在宅復帰を目指す介護老人保健施設(老健)、介護付き有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)、認知症の方が少人数で暮らすグループホーム(認知症対応型共同生活介護)など、状態や予算に応じた幅広い選択肢があります。仕事を続けながらの施設探しが大変な時は、介護の窓口の相談員が無料でご希望に合う施設をお調べしますので、お気軽にご相談ください。
よくある質問
介護離職をする人は年間どれくらいいますか?
総務省統計局の令和4年(2022年)就業構造基本調査では、過去1年間に介護・看護を理由に離職した人は約10.6万人でした。年間およそ10万人前後で推移しており、40〜50代の働き盛り世代、特に女性に多い傾向があります。
介護休業中の収入はどうなりますか?
勤務先からの給与は無給となる会社が多いものの、雇用保険の介護休業給付金として、休業開始時賃金の67%相当が支給されるのが一般的です(対象家族1人につき通算93日まで・支給要件あり)。手続きは多くの場合、会社を通じてハローワークに申請します。
介護休暇と介護休業は何が違いますか?
介護休暇は通院の付き添いなど単発の用事に使う年5日(対象家族2人以上なら年10日)の休みで、1時間単位でも取得できます。介護休業はまとまった体制づくりのための休みで、対象家族1人につき通算93日まで、3回に分けて取得できます。日常の用事は介護休暇、介護の節目は介護休業と使い分けるのが一般的です。
会社に介護のことを伝えると不利になりませんか?
介護休業などの申し出や取得を理由とした解雇・降格・減給といった不利益取扱いは、育児・介護休業法で禁止されています。2025年4月からは、申し出た社員に会社が制度を個別に説明し、利用の意向を確認することも義務化されており、伝えることが支援を受ける第一歩になります。
介護休業の93日で介護が終わらない場合はどうすればよいですか?
93日は介護をやり遂げる期間ではなく、体制づくりのための期間です。期間内に要介護認定やケアプラン、在宅サービスや施設入居の手配を整え、その後は介護休暇や残業免除、時短勤務などを組み合わせて両立を続けるのが基本の考え方です。体制づくりに迷う場合は、地域包括支援センターやケアマネジャーに早めに相談しましょう。
一度介護離職をすると、再就職は難しいですか?
介護期間が長引くほどブランクが延び、年齢も上がるため、以前と同じ条件での再就職は難しくなる傾向が指摘されています。だからこそ、辞める前に介護休業や介護サービスで両立の道を探ることが大切です。すでに離職された方は、ハローワークの職業相談や職業訓練などの公的支援も活用できます。
参考(一次情報)
- 総務省統計局「令和4年就業構造基本調査」
- 厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内(2025年4月施行)」
- 厚生労働省「介護休業制度 特設サイト」
- 厚生労働省「雇用保険制度(介護休業給付金)」
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