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最終更新: 2026-07-04

高額療養費制度とは

高額療養費制度は、1ヶ月の医療費の自己負担が上限額を超えた分が払い戻される医療保険のしくみです。69歳以下・70歳以上の所得区分別の自己負担限度額、世帯合算・多数回該当、申請方法、高額介護サービス費との違いまでやさしく解説します。

この記事の要点

  • 高額療養費制度とは、1ヶ月の医療費の自己負担が所得に応じた上限額を超えたとき、超えた分が払い戻される公的医療保険のしくみです
  • 上限額は年齢と所得で決まり、69歳以下は区分ア〜オ、70歳以上は現役並み・一般・住民税非課税に分かれます(年収約370万〜770万円なら月8万円強が目安)
  • マイナ保険証か限度額適用認定証を使うと、窓口での支払いを最初から限度額までに抑えられます
  • 差額ベッド代・入院中の食事代・先進医療の技術料は対象外です。介護サービスの自己負担には別途、高額介護サービス費という制度があります
  • 医療と介護の両方の負担が重い世帯は、年単位で合算できる高額医療・高額介護合算療養費制度も使えます(一般的な世帯で年56万円が基準)

高額療養費制度とは?1ヶ月の医療費負担に上限を設けるしくみ

結論高額療養費制度とは、1ヶ月(1日から末日まで)にかかった医療費の自己負担額が所得に応じた上限額(自己負担限度額)を超えたとき、超えた分が払い戻される公的医療保険の制度です。

病気やけがで入院や手術をすると、窓口で支払う3割(年齢や所得により1〜3割)の自己負担だけでも、ひと月に数十万円となることがあります。そんなときでも、1ヶ月の自己負担が上限額を超えた分は、あとから払い戻されます。協会けんぽや健康保険組合などの会社の健康保険、国民健康保険、後期高齢者医療制度といった公的医療保険に加入しているすべての方が対象で、利用のための追加保険料はかかりません。

上限額は、年齢(69歳以下か70歳以上か)と所得によって決まります。計算は暦月(月の1日から末日)ごとに行い、原則として医療機関ごと・入院と外来ごとに分けて数えるのが基本です。あとでご紹介する世帯合算を使うと、ご家族の分や複数の医療機関の自己負担をまとめられる場合があります。

なお、2026年8月診療分からは自己負担限度額を段階的に引き上げる見直しが決定されています(令和8年度予算案)。この記事では2026年7月時点の現行額をもとに、改定のポイントもあわせてご紹介します。

【69歳以下】自己負担限度額はいくら?区分ア〜オの一覧表

結論69歳以下の方の自己負担限度額は、所得に応じて区分ア〜オの5段階に分かれます。年収約370万〜770万円(区分ウ)の方は、月8万円強が上限の目安です

会社員・公務員の方は標準報酬月額、国民健康保険の方は所得をもとに区分が決まります。表の中の「医療費」は、窓口で支払った額ではなく10割分の総医療費を指す点にご注意ください。

2026年8月からは全区分で限度額の引き上げが予定されています(例えば区分ウの定額部分は80,100円から85,800円前後になる見込み)。一方で、月の上限に達しない月が続いても年間の自己負担合計で頭打ちになる年間上限が新設され、長期の治療を続ける方に配慮したしくみとなる予定です。最新額は加入する医療保険にご確認ください。

区分所得の目安(年収)1ヶ月の自己負担限度額多数回該当
約1,160万円〜252,600円+(医療費−842,000円)×1%140,100円
約770万〜1,160万円167,400円+(医療費−558,000円)×1%93,000円
約370万〜770万円80,100円+(医療費−267,000円)×1%44,400円
〜約370万円57,600円44,400円
住民税非課税35,400円24,600円

出典: 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」。2026年7月時点の現行額(2026年8月に引き上げ改定が予定)。年収はおおよその目安で、健康保険は標準報酬月額、国民健康保険は所得区分で判定されます。

【70歳以上】自己負担限度額はいくら?外来だけの上限もあります

結論70歳以上の方は「現役並み」「一般」「住民税非課税」の区分に分かれ、一般区分では外来だけなら個人ごとに月18,000円、入院を含めても世帯ごとに月57,600円が上限です(2026年7月時点)。

70歳以上の方には、69歳以下にはない「外来だけの上限(個人ごと)」が設けられているのが特徴です。年金収入中心の「一般」区分にあてはまる方が多く、通院が続いても負担が増えすぎないよう配慮されています。75歳からは後期高齢者医療制度に移りますが、限度額の考え方はほぼ同じです。

区分(所得の目安)外来のみ(個人ごと)外来+入院(世帯ごと)多数回該当
現役並みIII(年収約1,160万円〜)252,600円+(医療費−842,000円)×1%140,100円
現役並みII(約770万〜1,160万円)167,400円+(医療費−558,000円)×1%93,000円
現役並みI(約370万〜770万円)80,100円+(医療費−267,000円)×1%44,400円
一般(年収156万〜約370万円)18,000円(年間上限144,000円)57,600円44,400円
住民税非課税II8,000円24,600円
住民税非課税I(年金収入80万円以下など)8,000円15,000円

出典: 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」(2026年7月時点)。現役並み区分には外来だけの上限はなく、世帯ごとの上限が適用されます。年収はおおよその目安です。

計算例|医療費100万円・窓口負担30万円なら、いくら戻る?

結論69歳以下・区分ウの方がひと月に100万円の医療費(窓口負担30万円)を支払った場合、自己負担限度額は87,430円です。払い戻しは212,570円で、最終的な自己負担は87,430円になります

手術や入院で医療費が大きくなった月でも、実際の負担は限度額でとまるイメージです。厚生労働省のリーフレットにもある代表的な例で、計算の流れを見てみましょう。

項目金額・計算
総医療費(10割分)1,000,000円
窓口で支払う自己負担(3割)300,000円
自己負担限度額(区分ウ)80,100円+(1,000,000円−267,000円)×1%=87,430円
高額療養費として払い戻される額300,000円−87,430円=212,570円

出典: 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」の計算例(2026年7月時点)。同じ月・同じ医療機関で保険診療のみを受けた場合の概算です。食事代や差額ベッド代は別にかかります。

世帯合算と多数回該当とは?負担がさらに軽くなる2つのしくみ

結論世帯合算は、同じ医療保険に加入する家族の自己負担を1ヶ月単位でまとめて計算できるしくみです。多数回該当は、高額療養費に何度も該当した場合に4回目から上限額が下がるしくみです。

世帯合算では、1人分では上限に届かなくても、同じ医療保険に加入するご家族(例: 夫婦ともに同じ国民健康保険)の自己負担や、同じ方の複数の医療機関・入院と外来の負担を合算し、上限を超えた分の払い戻しを受けられます。ただし69歳以下の方の分は、1件21,000円以上の自己負担だけが合算の対象です(70歳以上の分は金額を問わず合算できます)。ここでいう世帯は住民票の世帯ではなく「同じ医療保険の加入者」の単位なので、共働きで別々の健康保険に入っているご夫婦は合算できない点にご注意ください。

多数回該当は長期治療の方のためのしくみで、直近12ヶ月で3回以上上限に達すると、4回目からは限度額がさらに下がります。例えば区分ウなら月87,430円前後だった上限が44,400円まで下がり、治療が長引いても家計への負担が一定に抑えられます。2026年8月の改定でも、多数回該当の限度額は据え置きの方針とされています。

申請方法は?事後の払い戻しと、事前にそなえる2つの方法

結論高額療養費は、受診後に加入する医療保険へ申請して払い戻しを受ける方法のほか、マイナ保険証や限度額適用認定証を使って、窓口での支払いを最初から限度額までにする方法があります。

申請先は、保険証(資格確認書)や資格情報のお知らせに記載されている保険者です(協会けんぽ、健康保険組合、市区町村の国民健康保険、後期高齢者医療広域連合など)。払い戻しまでは受診した月から3ヶ月以上かかるのが一般的で、申請の時効は診療月の翌月1日から2年です。過去の分もさかのぼって申請できます。健康保険組合などでは、申請しなくても自動的に計算して支給してくれる場合があります。

入院などで高額になることが事前にわかっているときは、マイナ保険証を使えば、事前の手続きなしで窓口での支払いを限度額までにできます(オンライン資格確認に対応した医療機関・薬局で、ご本人が限度額情報の提供に同意した場合)。マイナ保険証を使わない場合は、保険者から限度額適用認定証の交付を受けて窓口に提示する方法が使えます。

方法手続きのタイミング窓口での支払い手続きの概要
事後申請(支給申請)受診後いったん1〜3割の全額を支払う保険者に申請書を提出し、約3ヶ月後に指定口座へ払い戻し
限度額適用認定証受診前限度額まで保険者に交付を申請し、医療機関の窓口に提示
マイナ保険証事前手続き不要限度額まで対応する医療機関で受付時に情報提供へ同意するだけ

支給時期や様式は保険者によって異なります。時効は2年のため、申請忘れに気づいたら早めに保険者へ確認しましょう(2026年時点)。

高額療養費制度の対象外となる費用に注意

結論高額療養費の対象になるのは保険診療の自己負担分だけです。差額ベッド代・入院中の食事代・先進医療の技術料などは対象外で、上限に関係なく全額自己負担となります。

とくに入院では、次のような費用が高額療養費とは別にかかります。

  • 差額ベッド代: 個室や少人数室を希望した場合の室料で、1日数千円〜数万円かかることもあります
  • 入院時の食事代(標準負担額): 一般的な区分で1食510円前後が目安です(2026年時点。所得の低い方には軽減があります)
  • 先進医療の技術料・自由診療: 保険がきかない部分は全額自己負担です
  • 通院の交通費、パジャマや日用品のレンタル代など

食事代などの金額は物価動向により見直されることがあります。これらの費用の一部は医療費控除(確定申告)の対象になるため、領収書は保管しておきましょう。

高額介護サービス費との違いは?混同しやすい2つの制度

結論高額療養費制度は医療保険、高額介護サービス費は介護保険の制度です。医療費は高額療養費制度、介護費は高額介護サービス費と、月ごとの上限のしくみが別々に用意されています

名前が似ているため相談の場でもよく混同されますが、対象となる費用も申請先も異なります。高額介護サービス費は、介護保険サービスの自己負担(1〜3割)の合計が月の上限を超えた分が払い戻されるしくみで、一般的な課税世帯の上限は月44,400円です(課税所得に応じて月15,000円〜140,100円)。訪問介護やデイサービスだけでなく、特別養護老人ホーム(特養)・介護老人保健施設(老健)・介護医療院といった施設サービスの自己負担も対象になります。ただし、施設でかかる食費・居住費(滞在費)・日常生活費は対象外です。

在宅介護とご本人やご家族の通院が重なる時期、施設入居と入院が重なる時期は、両方の制度をそれぞれ申請することで負担を大きく抑えられます。どちらの制度の話なのか迷ったら、医療の領収書か介護の領収書かで切り分けて考えると整理しやすくなります。

比較項目高額療養費制度高額介護サービス費
根拠となる保険公的医療保険介護保険
対象となる費用病院・診療所・薬局などの保険診療の自己負担介護保険サービスの自己負担(1〜3割)
計算の単位1ヶ月(暦月)ごと1ヶ月(暦月)ごと
上限額の例57,600円(69歳以下・区分エ)など所得区分による44,400円(一般的な課税世帯)など課税所得による
申請先加入する医療保険の保険者市区町村(初回に口座を登録)
対象外の例差額ベッド代・食事代・先進医療の技術料施設の食費・居住費・日常生活費、福祉用具購入費など

出典: 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」「高額介護サービス費の負担限度額が見直されます」(2026年時点)。上限額はいずれも所得区分により異なります。

高額医療・高額介護合算療養費制度|年単位で医療と介護を合算

結論高額医療・高額介護合算療養費制度は、毎年8月1日〜翌年7月31日の1年間にかかった医療保険と介護保険の自己負担を世帯で合算し、年間の限度額を超えた分が払い戻される制度です。

月ごとの高額療養費・高額介護サービス費を使ってもなお、医療と介護の両方が続く世帯では年間の負担が積み重なります。この制度はその仕上げにあたるもので、一般的な所得の世帯では年56万円が基準額です。例えば70歳以上・一般区分の世帯で、1年間の医療と介護の自己負担合計が70万円だった場合、56万円を超えた14万円が払い戻される計算になります(概算)。

申請は年に1回、介護保険側(市区町村)と医療保険側の両方への手続きが必要で、基準日(7月31日)時点で加入している医療保険が窓口になります。市区町村や保険者から対象になりそうな世帯へお知らせが届くこともあるため、案内が届いたら忘れずに手続きしましょう。医療費と介護費の両方が重い時期の家計の見通しは、施設の選び方や入居のタイミングにも関わります。介護の窓口でも、こうした負担軽減制度をふまえたご相談を無料でお受けしています。

所得の目安(年収)70歳未満がいる世帯70歳以上の世帯
約1,160万円〜212万円212万円
約770万〜1,160万円141万円141万円
約370万〜770万円67万円67万円
〜約370万円(一般)60万円56万円
住民税非課税34万円31万円または19万円

出典: 厚生労働省「高額介護合算療養費制度について」。毎年8月1日〜翌年7月31日の1年間の自己負担合計に対する年間限度額の目安(2026年時点)。70歳以上の住民税非課税世帯は所得により31万円と19万円に分かれます。

介護中のご家族が知っておきたい実務ポイント

結論高額療養費は申請しないと戻らないお金です。入院が決まったらマイナ保険証か限度額適用認定証の準備、領収書の保管、介護側の制度との併用を意識しておくと安心です。

相談現場では、「親の入院費と施設の費用が同時にかかって家計が心配」というご相談を非常によくうかがいます。実際には、高額療養費制度・高額介護サービス費・合算療養費を組み合わせると、想定していたより負担を抑えられるケースが少なくありません。一方で、時効の2年を過ぎて払い戻しを受けそこねていたケースや、世帯合算・多数回該当を知らずに申請していなかったケースもあります。医療費・介護費の領収書や保険者からの通知は、月ごとにまとめて保管しておくことをおすすめします。

医療的なケアが続く方の施設探しでは、介護医療院や介護老人保健施設(老健)のように医療体制が整った施設を選ぶのか、特別養護老人ホーム(特養)や介護付き有料老人ホームに入居して外部の医療機関に通院・入院するのかで、費用のかかり方と使える制度が変わってきます。迷ったときは、入院中なら病院の医療ソーシャルワーカー(MSW)、在宅ならケアマネジャーや市区町村窓口が心強い相談先です。

医療費と介護費の見通しを立てたうえで施設を探したい方は、介護の窓口の相談員が、ご予算とお体の状態に合う施設を無料でお調べします。お気軽にご相談ください。

  • 入院が決まったら: マイナ保険証の利用登録を確認、使わない場合は限度額適用認定証を申請
  • 毎月: 医療費・介護費の領収書と支給決定通知を保管
  • 高額な月が続いたら: 多数回該当(4回目から上限引き下げ)が適用されているか確認
  • 毎年: 高額医療・高額介護合算療養費のお知らせや申請時期(8月〜翌7月分)を確認
  • 2026年8月から: 自己負担限度額の改定内容を、加入する医療保険の案内で確認

このテーマの詳しいガイド

よくある質問

高額療養費制度は、事前に何もしていなくても使えますか?

はい。公的医療保険に加入していれば、どなたでも対象です。受診後に加入先の保険者へ申請すれば、上限額を超えた分が払い戻されます。時効は診療月の翌月1日から2年なので、過去2年分まではさかのぼって申請できます。

払い戻しはいつ、どうやって受け取れますか?

医療機関からの請求内容を確認したうえで支給されるため、受診した月から3ヶ月以上かかるのが一般的です。申請時に指定した口座への振り込みで受け取ります。健康保険組合などでは、申請不要で自動的に支給される場合もあります。

月をまたいで入院した場合はどうなりますか?

高額療養費は暦月(1日〜末日)ごとに計算するため、月をまたぐと自己負担がそれぞれの月で別々に計算され、同じ日数でも負担合計が増えることがあります。緊急ではない入院や手術で日程に幅があるときは、同じ月に収まるかどうかを医療機関に確認してみるのも一つの方法です。

高額療養費制度と高額介護サービス費は同時に使えますか?

はい。医療保険と介護保険の別々の制度なので、それぞれ申請して併用できます。さらに年単位では、高額医療・高額介護合算療養費制度で世帯の医療費と介護費を合算でき、月と年の三段構えで負担を抑えられます。

限度額適用認定証は今も必要ですか?マイナ保険証があれば不要ですか?

オンライン資格確認に対応した医療機関・薬局でマイナ保険証を使い、情報提供に同意すれば、認定証がなくても窓口の支払いが限度額までになります。対応していない医療機関にかかる場合や、マイナ保険証を使わない場合は、従来どおり保険者に限度額適用認定証を申請して提示します。

2026年8月から高額療養費制度は変わりますか?

変わります。2026年8月診療分から自己負担限度額を段階的に引き上げる見直しが決定されており、あわせて年間上限の新設も予定されています。長期治療の方に配慮して、多数回該当の限度額は据え置きの方針です。最新の金額は加入する医療保険や厚生労働省の案内でご確認ください。

参考(一次情報)

  • 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
  • 厚生労働省 社会保障審議会医療保険部会「高額療養費制度について」
  • 厚生労働省「高額介護サービス費の負担限度額が見直されます」
  • 厚生労働省「高額介護合算療養費制度について」
  • 全国健康保険協会(協会けんぽ)「高額療養費」

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