最終更新: 2026-07-04
高額療養費制度はいくら以上で戻る?
高額療養費制度はいくら以上払ったら戻るのかを解説。70歳以上・69歳以下(区分ア〜オ)の自己負担限度額の早見表、月100万円の医療費での計算例、世帯合算・多数回該当の条件、申請の時効2年、2026年8月の改定までやさしく説明します。
この記事の要点
- 高額療養費制度の上限額(自己負担限度額)は、年齢(70歳以上か69歳以下か)と所得区分の組み合わせで決まります
- 目安は、70歳以上・一般所得なら世帯で月57,600円、69歳以下・年収約370万〜約770万円なら80,100円+(医療費−267,000円)×1%です(2026年7月診療分まで)
- 2026年8月診療分から上限額は段階的に引き上げられ、たとえば区分ウは85,800円+(医療費−286,000円)×1%になります
- 直近12か月で3回以上対象になると、4回目からは多数回該当でさらに下がります(区分ウ・エは月44,400円)
- 払い戻しは原則として申請が必要で、時効は診療月の翌月1日から2年です
高額療養費制度はいくらから戻る?まず結論
結論高額療養費制度とは、1か月(暦月)の保険適用の医療費の自己負担額が、年齢と所得で決まる上限額を超えたとき、超えた分があとから払い戻される公的医療保険の制度です。目安として、70歳以上の一般的な所得の方は世帯で月57,600円、69歳以下の年収約370万〜約770万円の方は月80,100円強を超えた分が戻ります。
「いくら以上払ったら戻るのか」という質問への答えは、実はひとつではありません。高額療養費の上限額(自己負担限度額)は、70歳以上か69歳以下かという年齢と、所得区分の2つの組み合わせで決まります。同じ医療費がかかっても、年齢や年収によって戻る金額は人それぞれ違います。
代表的な目安は次のとおりです(2026年7月診療分まで)。70歳以上・一般所得区分の方は、入院を含めて世帯で月57,600円。69歳以下・年収約370万〜約770万円(区分ウ)の方は、80,100円+(医療費−267,000円)×1%です。この上限額を超えて支払った分が、申請により払い戻されます。
なお、2026年8月診療分から上限額は段階的に引き上げられることが決まっています。この記事では、現在の金額と2026年8月からの金額をあわせて紹介します(厚生労働省の資料に基づく2026年時点の情報です)。
上限額の計算に入る費用・入らない費用は?
結論上限額と比べる自己負担額に数えるのは、保険が適用される診療や薬代の窓口負担分だけです。入院中の食費や差額ベッド代、自由診療の費用は計算に入りません。
計算は暦月単位(毎月1日〜末日)です。月をまたいだ入院は月ごとに別々に計算されるため、同じ金額の支払いでも、1つの月にまとまった場合と2つの月に分かれた場合では戻る金額が変わることがあります。
また、特別養護老人ホーム(特養)や介護老人保健施設(老健)、介護医療院などに入所している方でも、医療保険で病院を受診した分の自己負担は高額療養費の対象です。一方、施設の利用料そのものは介護保険の制度(高額介護サービス費)で軽減を図ります。
医療機関の請求書のうち、どの部分が対象になるかは次のように整理できます。
- 計算に入るもの: 病院・診療所・歯科・調剤薬局で支払った保険適用の自己負担分(1〜3割の窓口負担)
- 計算に入らないもの: 入院中の食費・居住費、差額ベッド代、先進医療や自由診療の費用、診断書代などの実費
- 介護保険サービスの自己負担も対象外(高額介護サービス費という別の制度の対象になります)
70歳以上の自己負担限度額はいくら?
結論70歳以上の方は、一般的な所得(年収約156万〜約370万円)であれば、外来だけなら個人ごとに月18,000円、入院を含めると世帯ごとに月57,600円が上限です(2026年7月診療分まで)。
70〜74歳の方も、75歳以上で後期高齢者医療制度に入っている方も、基本的に同じ枠組みです。年金収入が中心の世帯の多くは「一般」区分にあたり、大きな手術や長めの入院があっても、保険適用分の自己負担は世帯で月57,600円までが目安になります。
| 所得区分(年収の目安) | 外来(個人ごと) | 外来+入院(世帯ごと) |
|---|---|---|
| 現役並みIII(約1,160万円〜) | ―(右欄で計算) | 252,600円+(医療費−842,000円)×1% |
| 現役並みII(約770万〜約1,160万円) | ―(右欄で計算) | 167,400円+(医療費−558,000円)×1% |
| 現役並みI(約370万〜約770万円) | ―(右欄で計算) | 80,100円+(医療費−267,000円)×1% |
| 一般(約156万〜約370万円) | 18,000円(年間上限144,000円) | 57,600円 |
| 住民税非課税II | 8,000円 | 24,600円 |
| 住民税非課税I(年金収入80万円以下など) | 8,000円 | 15,000円 |
出典: 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」。2026年7月診療分までの金額で、式中の「医療費」は10割分です。2026年8月診療分から、現役並み・一般区分を中心に段階的な引き上げが予定されています。
69歳以下の自己負担限度額はいくら?(区分ア〜オ)
結論69歳以下の方は所得に応じて区分ア〜オの5段階に分かれます。年収約370万〜約770万円(区分ウ)なら、2026年7月診療分までは80,100円+(医療費−267,000円)×1%が1か月の上限です。
式に出てくる「医療費」は、窓口で支払った金額ではなく10割分の総額です。たとえば3割負担で窓口30万円を支払った場合は、医療費100万円として計算します。
2026年8月診療分からは、区分ウの上限が85,800円+(医療費−286,000円)×1%に引き上げられます。あわせて、1年間の自己負担額に上限を設ける仕組みも新設される予定で、さらに2027年8月には所得区分を細かく分ける第2段階の見直しが予定されています。
| 区分 | 年収の目安 | 2026年7月診療分まで | 2026年8月診療分から |
|---|---|---|---|
| ア | 約1,160万円〜 | 252,600円+(医療費−842,000円)×1% | 270,300円+(医療費−901,000円)×1% |
| イ | 約770万〜約1,160万円 | 167,400円+(医療費−558,000円)×1% | 179,100円+(医療費−597,000円)×1% |
| ウ | 約370万〜約770万円 | 80,100円+(医療費−267,000円)×1% | 85,800円+(医療費−286,000円)×1% |
| エ | 〜約370万円(住民税課税) | 57,600円 | 61,500円 |
| オ | 住民税非課税 | 35,400円 | 36,900円 |
出典: 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」および社会保障審議会医療保険部会資料(2026年時点)。年収はあくまで目安で、実際には健康保険では標準報酬月額、国民健康保険では年間所得で区分を判定します。
計算例: 月100万円の医療費なら、いくら戻る?
結論年収400万円台(区分ウ)の方に1か月で医療費100万円(窓口負担30万円)がかかった場合、上限額は87,430円です。差額の約21万円が払い戻される計算になります(2026年7月診療分まで)。
計算の流れを見てみましょう。医療費100万円を区分ウの式にあてはめると、80,100円+(1,000,000円−267,000円)×1%=80,100円+7,330円=87,430円。窓口でいったん30万円を支払っても、最終的な自己負担は87,430円が上限となり、差額の212,570円が申請により戻ります。なお、2026年8月診療分からは同じケースで上限額が92,940円になります。
もうひとつ、70歳以上の例です。78歳・後期高齢者医療制度(2割負担)・一般区分の方が入院し、1か月の医療費(10割分)が50万円だった場合、窓口負担は10万円ですが上限額は世帯で57,600円。差額の42,400円が戻る計算です。
| 例 | 医療費(10割分) | 窓口で支払う額 | 1か月の上限額 | 戻る金額(目安) |
|---|---|---|---|---|
| 48歳・年収400万円台(区分ウ)・3割負担 | 100万円 | 300,000円 | 87,430円 | 約212,570円 |
| 78歳・一般区分・2割負担 | 50万円 | 100,000円 | 57,600円 | 約42,400円 |
2026年7月診療分までの限度額で計算した概算例です。保険適用の医療費のみで計算しており、食費や差額ベッド代などは含みません。
世帯合算はいくらから?家族の医療費もまとめられる?
結論同じ医療保険に加入している家族の自己負担は1か月単位で合算でき、合計が上限額を超えれば高額療養費の対象になります。ただし69歳以下の分は、1件21,000円以上の自己負担だけが合算の対象です。
1人分では上限額に届かなくても、世帯合算で対象になるケースは少なくありません。合算できるのは同じ医療保険の加入者同士です。たとえば夫婦とも同じ国民健康保険に入っている場合や、会社員の本人とその被扶養者という組み合わせは合算できますが、夫婦がそれぞれ別の会社の健康保険に入っている場合は合算できません。
69歳以下では、医療機関ごと、入院・外来ごと、医科・歯科ごとに1件と数え、1件21,000円以上の自己負担だけを合算します。70歳以上の方の自己負担は、金額の大小にかかわらずすべて合算できます。
例として、夫婦とも60代前半・区分ウの世帯で、夫の窓口負担が6万円(医療費20万円)、妻が3万円(医療費10万円)だった場合。どちらも21,000円以上なので合算でき、合計9万円に対する上限額は80,100円+(300,000円−267,000円)×1%=80,430円。差額の9,570円が戻る計算です。
多数回該当: 4回目からはいくらに下がる?
結論直近12か月の間に3回以上高額療養費の対象になると、4回目からは「多数回該当」として上限額がさらに下がります。区分ウ・エの方や70歳以上・一般区分の方は、月44,400円が上限になります。
がんの治療や長期の入院など、高額な医療費が何か月も続くご家庭のための仕組みです。4回目からは、区分ウ・エや70歳以上・一般区分で月44,400円まで下がります。この多数回該当の金額は、2026年8月の見直し後も据え置かれる予定です。
| 区分 | 通常の上限額 | 4回目以降(多数回該当) |
|---|---|---|
| 69歳以下・区分ア | 252,600円+α | 140,100円 |
| 69歳以下・区分イ | 167,400円+α | 93,000円 |
| 69歳以下・区分ウ | 80,100円+α | 44,400円 |
| 69歳以下・区分エ | 57,600円 | 44,400円 |
| 69歳以下・区分オ | 35,400円 | 24,600円 |
| 70歳以上・現役並みI〜III | 80,100円+α〜252,600円+α | 44,400円〜140,100円 |
| 70歳以上・一般 | 57,600円 | 44,400円 |
「+α」は(医療費−基準額)×1%の加算分です。通常の上限額は2026年7月診療分までの金額。70歳以上の住民税非課税区分には多数回該当の適用はありません。出典: 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」。
申請しないと戻らない?手続きの流れと2年の時効
結論高額療養費は、原則としてご自身で加入先の医療保険に申請しないと払い戻されません。申請できる権利は診療月の翌月1日から2年で時効となるため、心当たりがあれば早めに確認すると安心です。
申請先は、協会けんぽや健康保険組合、市区町村の国民健康保険、後期高齢者医療広域連合など、加入している医療保険の窓口です。国民健康保険や後期高齢者医療制度では対象になった方へ申請のお知らせが届く自治体が多く、健康保険組合によっては申請不要で自動的に払い戻される場合もあります。振り込みは診療月から3か月以上あとになるのが一般的です。
逆にいえば、時効の2年以内であればさかのぼって申請できます。過去の入院や手術の領収書が残っていれば、確認してみる価値があります。また、これから入院の予定がある場合は、マイナ保険証を利用するか、事前に限度額適用認定証の交付を受けておくと、窓口での支払い自体を上限額までにとどめられます。
相談現場では、老人ホーム探しの費用のご相談の際に、高額療養費の払い戻しをご存じなかったご家族に出会うことが少なくありません。過去2年分の医療費を確認して申請したところ、まとまった金額が戻り、入居費用の一部にあてられたケースもあります。医療費・介護費の負担軽減制度を含めた資金計画は、介護の窓口の相談員が無料でお調べしますので、お気軽にご相談ください。
よくある質問
高額療養費制度は、月いくら以上医療費を払ったら対象になりますか?
年齢と所得区分によって異なります。目安として、70歳以上・一般的な所得の方は世帯で月57,600円、69歳以下・年収約370万〜約770万円(区分ウ)の方は80,100円+(医療費−267,000円)×1%を超えた分が払い戻されます(2026年7月診療分まで)。まずはご自身の所得区分を確認することが第一歩です。
2026年8月から高額療養費の上限額は変わりますか?
変わります。2026年8月診療分から全所得区分で上限額が引き上げられ、たとえば区分ウは80,100円+αから85,800円+αになります。一方で、多数回該当の金額は据え置かれる予定です。さらに2027年8月には所得区分を細分化する第2段階の見直しが予定されています。
高額療養費はいつ、どうやって戻ってきますか?
加入している医療保険(協会けんぽ・健康保険組合・国民健康保険・後期高齢者医療制度)に申請すると、指定した口座に振り込まれます。医療機関からの請求内容を確認してから支給されるため、診療月から3か月以上あとになるのが一般的です。
申請を忘れていた場合、さかのぼって請求できますか?
できます。高額療養費を申請できる権利の時効は、診療月の翌月1日から2年です。2年以内の分であればまとめてさかのぼって申請できますので、過去の領収書や医療費通知を確認してみてください。
入院中の食費や差額ベッド代も高額療養費の対象になりますか?
対象になりません。高額療養費の計算に入るのは保険適用の自己負担分だけで、入院中の食費・居住費、差額ベッド代、先進医療の技術料などは全額自己負担のままです。入院費用の総額を見積もるときは、保険適用分と分けて考えることが大切です。
介護施設の利用料は高額療養費の対象になりますか?
対象外です。特別養護老人ホーム(特養)などの介護保険サービスの自己負担には、高額介護サービス費という別の軽減制度があります。また、医療と介護の両方の負担が重い世帯には、年単位で合算して払い戻す高額医療・高額介護合算療養費制度もあります。
参考(一次情報)
- 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
- 厚生労働省 社会保障審議会医療保険部会「高額療養費制度の見直しについて」
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)「高額な医療費を支払ったとき(高額療養費)」
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