最終更新: 2026-07-11
認知症の物盗られ妄想への対応|疑われた家族の気持ちの整理と接し方
物盗られ妄想とは、認知症の症状の一つで、大切な物を盗まれたと思い込み、身近で介護する家族を疑いやすい状態のことです。なぜ介護者ほど疑われやすいのかという心理的な背景と、否定せず受け流す接し方のコツ、自分を責めなくてよい理由をやさしく解説します。
この記事の要点
- 物盗られ妄想は、4大認知症のうち約6〜7割を占めるアルツハイマー型認知症の、軽度から中等度の時期によくみられるBPSD(行動・心理症状)の一つで、記憶障害などの中核症状とは区別されます
- 毎日の世話を最も長く担う1人に疑いが集中しやすいため、対応を家族2人以上で共有し合うことが、特定の人の心の負担を減らす助けになります
- 「盗っていない」と正面から否定するより、一緒に探す・話題をそらす・演技も交えて受け流すなど3つの工夫を使い分けるほうが、本人の興奮をやわらげやすいとされています
- 通帳や印鑑は1か所に隠しきらず、家族内で2か所以上把握しておくと、「盗まれた」と訴えられたときに一緒に探しやすくなります
- 近隣トラブルや財産管理の不安に発展した場合は、地域包括支援センター・認知症疾患医療センター・成年後見制度という3つの相談先が主な選択肢になります
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物盗られ妄想とは?どのような症状ですか?
結論物盗られ妄想とは、認知症の症状の一つで、「大切な物を盗まれた」と思い込み、身近にいる家族を疑ってしまう状態のことです。記憶障害などの中核症状とは別に現れるBPSD(行動・心理症状)で、4大認知症のうち約6〜7割を占めるアルツハイマー型認知症の、軽度から中等度の時期に特によくみられるとされています。
「お金を盗ったでしょう」「通帳がない、あなたが持って行ったんでしょう」。長年大切に思ってきた親や配偶者から、ある日突然そう言われたときのショックは、経験した人にしか分からないつらさがあります。しかも疑われるのは、たいてい毎日いちばん近くで世話をしている家族です。「あんなに頑張っているのに」という悔しさと悲しさで、心がすり減ってしまうご家族は少なくありません。
物盗られ妄想は、記憶障害や見当識障害といった中核症状そのものではなく、BPSD(行動・心理症状)と呼ばれる周辺症状の一つです。物をどこにしまったか忘れてしまう記憶障害を土台に、不安や心理的な要因が重なって表れると考えられています。ご本人の人柄が意地悪になったわけでも、家族への愛情がなくなったわけでもありません。
認知症の妄想の中でも代表的な症状で、軽度から中等度のアルツハイマー型認知症で特によくみられ、重度の段階になるとむしろ目立たなくなる傾向があるとされています。理由は次の章でくわしく説明します。
この記事では、身近な家族ほど疑われやすい理由、否定や説得が逆効果になりやすい理由、その場でできる対応、介護者自身の心の守り方、家族での分担、通帳など貴重品の管理方法、深刻化した場合の相談先までを順に解説します。
- 「財布(通帳)がない、あなたが盗ったんでしょう」と繰り返し訴える
- 同じ物を何度も「盗まれた」と言い、家中を疑わしそうに探し回る
- 同居し世話をしている家族など、特定の1人だけを名指しで疑う
- 本人の目の前で否定すると、かえって興奮し疑いを強めることがある
なぜ物盗られ妄想は、身近な家族ほど標的になりやすいのですか?
結論物盗られ妄想で身近な家族ほど標的になりやすいのは、日常的に持ち物に触れる機会が多いことに加え、最も甘えられる安心な相手だからこそ不安や不満をぶつけやすいためと考えられています。毎日いちばん長く世話をする1人に、疑いが集中しやすい傾向があります。
物盗られ妄想の入り口には、多くの場合「しまい忘れ」という記憶障害があります。大切な物ほど特別な場所にしまい込み、しまったこと自体を忘れてしまうため、「誰かに盗まれた」という説明のほうが受け入れやすくなります。疑いの矛先は、持ち物に触れる機会が最も多い、日常的に世話をしている家族に向かいやすく、介護を最も頑張っている人ほど、皮肉にも標的にされやすいという構図です。
身近な家族は、本人にとって最も気を許せる、安心できる相手でもあります。他人には見せない不満やいら立ちを遠慮なくぶつけられる相手だからこそ疑いが向きやすいとされています。子どもが親に甘えるときと同じように、最も安心できる相手にこそ負の感情をぶつけてしまうのです。
また、物盗られ妄想は記憶や判断力の低下が比較的軽い時期に多くみられます。「以前のようにできないもどかしさ」という喪失感がうっすらと残っている本人も少なくありません。その満たされない気持ちが、最も身近な介護者への疑いという形で、「弱っていく自分」と向き合うなかで生まれるやり場のない感情として表れていると考えられています。
| 背景となる要因 | 本人の中で起きていること | 疑いが向かいやすい相手 |
|---|---|---|
| しまい忘れ(記憶障害) | 大切な物ほど特別な場所にしまい、しまった事実を忘れる | 最初に一緒に探した人、日頃から持ち物に触れる人 |
| 自尊心を守ろうとする心理 | 「自分が忘れるはずがない」という思いから、紛失より盗難のほうが受け入れやすい | 家の中に出入りする家族、来客 |
| 安心できる相手への甘え | 他人には見せない不満や不安を、遠慮なくぶつけられる | 同居し日常的に世話をしている1人の家族 |
| 能力低下への喪失感 | 「できなくなっていく自分」への不安やくやしさを抱えている | 世話をされる場面が多い相手、最も近い介護者 |
背景は複数が重なっていることが多く、どれか1つに断定せず、不安を和らげる関わり方を優先することが大切です(2026年時点の一般的な整理)。
否定や説得をすると、なぜ症状が悪化しやすいのですか?
結論物盗られ妄想は、「盗っていない」と正面から否定したり理屈で説得したりすると、説明の中身は忘れても責められた不快な感情だけが残りやすく、かえって疑いを深めてしまうことがあるとされています。
認知症では、直前の出来事や説明された内容そのものは忘れても、そのときに味わった感情は記憶として残りやすいことが知られています。「あなたが盗ったんでしょう」と訴えたときに強く否定されたり怒られたりすると、説明の中身は忘れても、「否定された」「責められた」という嫌な感情だけが残ります。
その結果、「どうして分かってくれないのだろう」「やっぱりこの人が盗ったから、必死に否定するのだ」というように、かえって疑いが強まってしまうことがあるとされています。良かれと思って行った説得が、本人の中では「怪しい反応」として受け取られてしまうのです。
「探し物はよくあることだから」と説明したり、過去の失敗を持ち出して言い訳のように返したりするのも、同じように逆効果になりやすい対応です。本人にとっては、訴えを軽く扱われた、はぐらかされたという印象だけが残ってしまいます。
- 避けたい対応: 「盗っていない」と正面から否定する、大きな声で反論する
- 避けたい対応: 「またその話?」と取り合わない、過去の物忘れを引き合いに出す
- おすすめの対応: 「それは心配ですね、一緒に探しましょう」とまず気持ちを受け止める
- おすすめの対応: 説明や説得ではなく、行動(一緒に探す・話題を変える)で示す
物盗られ妄想への具体的な対応法は?接し方のコツを教えてください
結論有効とされる対応は、否定せず気持ちを受け止めたうえで、一緒に探す・話題をそらす・演技も交えて受け流すという3つの工夫を状況に応じて使い分けることです。今日から試せる具体的な方法を紹介します。
最も基本になるのが「一緒に探す」対応です。「それは大変、一緒に探しましょう」と歩調を合わせ、実際に探す姿を見せます。見つける役はできるだけご本人にゆずり、「あった、よかったですね」と一緒に喜ぶと、不安がやわらぎやすくなります。本人が好んで物を隠す場所をあらかじめ把握しておくと、スムーズです。
興奮が強く、探しても見つからない状況が続くときは、無理に解決しようとせず、話題や場所を変えることも効果的です。「少し休みましょう、お茶を淹れますね」など、本人が関心を持ちやすい別の話題に切り替えると、気持ちが自然と落ち着くことがあります。
状況によっては、多少の演技を交えることも実践的な工夫の一つとされています。たとえば「後で確認しておきますね」と時間を置いたり、「こちらにも同じような物がありましたよ」と話をそらしたりする方法です。事実と異なる対応に抵抗を感じるご家族もいますが、本人を落ち着かせ安心してもらうことを優先する工夫として、介護の現場でもよく用いられています。
一度の対応でうまくいかなくても、気に病む必要はありません。うまくいった声かけをメモに残しておくと、次の助けになります。
| 本人の様子 | 対応の例(声かけ) | ポイント |
|---|---|---|
| 「通帳がない、盗まれた」と興奮している | 「それは心配ですね。一緒に探しましょう」 | 否定せずまず気持ちを受け止め、行動をともにする |
| 特定の引き出しを何度も疑わしそうに探す | 少し離れた場所から「こちらも見てみましょうか」と誘導する | 本人が自分で見つけたと思える形に導く |
| 探しても見つからず、興奮がおさまらない | 「少し休みましょう、お茶にしませんか」と話題を変える | 無理に解決しようとせず、気持ちを切り替える |
| 家族を名指しで責め続ける | 「私も心配なので、一緒に確認してみますね」と味方の立場を示す | 対立せず、本人と同じ側に立つ姿勢を伝える |
対応の効果は本人の性格や症状の程度によって差があります。いくつか試しながら合う方法を見つけていくことが大切です。
疑われるたびに心が消耗します。介護者はどう自分を保てばいいですか?
結論「盗んだ」と疑われるつらさで消耗するのは、介護の仕方が悪いからではありません。次に挙げる5つのサインのうち1つでも当てはまれば、がんばりが足りないのではなく、助けを求めてよい合図です。
献身的に介護をしているご家族ほど、身に覚えのない疑いを受けたときのショックは大きくなります。「今まで頑張ってきたことを全部否定された気がする」と、涙ながらに話されるご家族は少なくありません。こうした感情は、大切な人から疑われるという経験に対する自然な反応であり、決しておかしなことではありません。
先ほど説明したとおり、物盗られ妄想が向かう先は、介護の質が低い人ではなく、いちばん身近で信頼されている人です。疑われるということ自体、それだけ長く深く関わってきた証でもあります。この事実を心のどこかに置いておくだけでも、少し気持ちが軽くなることがあります。
介護の窓口の相談現場では、「実の娘なのに、母から泥棒扱いされてつらい」「恥ずかしくて誰にも言えず、一人で抱え込んでいた」と打ち明けてくださるご家族から、繰り返しご相談をいただきます。恥ずかしいことでも、家族の情が薄いことでもありません。同じ経験をしているご家族は、決して少なくないのです。
- 本人と顔を合わせる前に、気が重くなる、身構えてしまう
- 「また疑われるのでは」と考えると、外出や来客も避けたくなる
- 誰にも今の状況を話せていない、話しても分かってもらえないと感じる
- 眠れない日や涙が出る日が2週間以上続いている
- 本人に対して、強い言葉を返しそうになったことがある
1つでも当てはまる場合は、がんばりが足りないのではなく、助けを求めてよいサインです。ケアマネジャーや地域包括支援センターに、今の気持ちをそのまま話してみてください。
家族の中で対応が特定の1人に偏らないようにするには?
結論物盗られ妄想は身近な1人に疑いが集中しやすい症状だからこそ、対応を家族2人以上で共有し、かかわる時間を分担することが、特定の人の心の負担を軽くする助けになります。
物盗られ妄想は、最も長く世話をする1人に矛先が向かいやすい症状です。だからこそ、その人だけに対応を任せきりにすると、心身の負担が限界を超えてしまうおそれがあります。同居していない家族も含め、時々かかわることが、負担を分散させる鍵になります。
たとえば、疑われた場面のやり取りを家族間のグループLINEや電話で共有し、他の家族が実際に本人と顔を合わせる機会を意識的に増やすと、疑う対象が1人に固定されにくくなります。自分の目で症状を見ることで、主たる介護者の話を実感を持って受け止めやすくなるという利点もあります。
定期的にデイサービス(通所介護)やショートステイ(短期入所生活介護)を取り入れ、本人と主たる介護者が物理的に離れる時間をつくることも、疑いが向かう時間そのものを減らす工夫になります。「頼るのは申し訳ない」と感じるご家族もいますが、介護保険サービスを使うことは、家族関係を守るための前向きな選択です。
- 疑われた場面のやり取りを、家族間で簡単にでも共有しておく
- 同居していない家族も、定期的に顔を合わせる機会をつくる
- デイサービスやショートステイを取り入れ、物理的に離れる時間をつくる
- 「対応が正しかったか」より「大変だったね」とお互いをねぎらう言葉をかけ合う
通帳や印鑑など、妄想の対象になりやすい物はどう管理すればよいですか?
結論妄想の対象になりやすいのは通帳・印鑑・財布・貴金属など本人にとって特に大切な物です。1か所に隠しきらず、家族内で2か所以上、保管場所を把握しておくことが実務上の工夫になります。
物盗られ妄想では、日常的に使う小銭入れよりも、通帳や印鑑、へそくり、指輪などの貴金属といった、本人にとって「特別に大切な物」が対象になりやすい傾向があります。大切だからこそ厳重にしまい込み、しまった場所を忘れやすいという構造が背景にあるとされています。
実務的な工夫として、家族が通帳や印鑑を預かる場合は、日付と内容を記した簡単な預かり証を本人の見える場所に残しておく方法があります。「盗られた」と訴えられたときに、一緒に確認することで、本人の不安をやわらげやすくなります。
保管場所は、主たる介護者しか知らない状態にせず、家族内で2か所以上の候補を共有しておくと、いざというときに一緒に探しやすくなります。通帳や保険証券など重要な書類は、コピーを取っておくといった備えも、後々の手続きで助けになります。
本人の「自分で管理したい」という気持ちを完全に取り上げると、かえって不信感が強まることもあります。金庫や鍵付きの引き出しなど、自分で管理していると感じられる場所を用意しつつ、家族もその場所を把握しておくというバランスも一つの工夫です。
| 対象になりやすい物 | 背景 | 管理の工夫 |
|---|---|---|
| 通帳・キャッシュカード・印鑑 | 大切な物として、特別な場所にしまい込みやすい | 預かり証を見える場所に残す、保管場所を家族2か所以上で共有する |
| 財布・現金(へそくりを含む) | 肌身離さず持ちたい気持ちが強く、置き場所を頻繁に変えやすい | 定位置を決め、本人と一緒に「ここですね」と確認する習慣をつくる |
| 指輪・時計などの貴金属 | 思い出の品であることが多く、失う不安が特に強い | 普段使わない物は家族が把握し、写真を撮って記録しておく |
| 保険証券・権利証などの重要書類 | 紛失に気づきにくく、発覚が遅れやすい | コピーを取り、内容を家族間で共有しておく |
管理の主導権を家族がすべて奪うと、不安や不信感が強まることがあります。本人の気持ちを尊重しながら、家族も所在を把握できる状態を目指すのが実務上のバランスです(2026年時点の一般的な工夫)。
近隣トラブルや財産管理の心配に発展したら?どこに相談すればよいですか?
結論疑いの対象が近隣住民など外部に広がる、繰り返し警察に通報する、金銭管理に不安が生じるといった場合は、地域包括支援センター・認知症疾患医療センター・成年後見制度という3つが主な相談先になります。
疑いの対象が近所の人やホームヘルパーにまで広がったり、頻繁に警察へ通報したりすると、信頼関係にも影響が及びます。本人が現金を不自然な場所に大量に移そうとする、家族以外の人物を安易に信用してしまうなど、財産管理の面で心配が生じることもあります。こうした状態は、早めに専門的な窓口へつなぐサインです。
地域包括支援センターは、要介護認定の有無にかかわらず、認知症に関するあらゆる相談を無料で受け付けている総合窓口です。近隣トラブルや対応の悩みを伝えると、地域の実情に応じたアドバイスや、関係機関への橋渡しをしてもらえます。
妄想の症状が強く、生活に大きな支障が出ている場合は、認知症疾患医療センターでの専門的な評価も選択肢になります。妄想の背景に、体調不良など治療できる要因が隠れていないかを確認してもらえることもあるとされています。診断や治療方針については、自己判断をせず、主治医・かかりつけ医にご相談ください。
金銭管理そのものに不安が大きくなってきた場合は、成年後見制度の利用が選択肢になります。判断能力が不十分な方に代わり、家庭裁判所が選ぶ後見人などが財産管理を行う制度で、「通帳を誰が管理するか」をめぐる家族間の対立を防ぐ助けにもなります。制度の種類や費用、手続きの流れは「成年後見制度とは」の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
| こんなサインが出たら | 相談先 | 主な役割 |
|---|---|---|
| 対応に悩む、誰に相談すればよいか分からない | 地域包括支援センター | 認知症に関する総合相談窓口(無料)。関係機関への橋渡しも行う |
| 妄想が強く、生活への支障が大きい | 認知症疾患医療センター・かかりつけ医 | 専門的な評価、体調不良など背景要因の確認 |
| 近隣とのトラブルが繰り返される | 地域包括支援センター、市区町村の窓口 | 地域の実情に応じた仲介や助言 |
| 金銭管理への不安、家族間で管理方法がまとまらない | 成年後見制度(家庭裁判所) | 判断能力が不十分な方の財産管理・契約を法的に支援する |
相談先は状況により重なる部分もあります。まずは地域包括支援センターに相談すると、状況に応じて他の窓口を案内してもらえます(2026年時点の一般的な整理)。
物盗られ妄想とうまく付き合っていくには、何を大切にすればよいですか?
結論大切なのは、症状の仕組みを理解して否定せず受け流す工夫を重ねることと、介護者が一人で疑いと責任を抱え込まないことの2つです。専門職や家族の力を借りながら、無理なく続けられる形を探していきましょう。
物盗られ妄想は、ご本人の記憶障害と、弱っていく自分への不安が重なって生まれる症状であり、介護をするご家族の対応が悪いから起こるわけではありません。疑われるつらさを抱えながらも介護を続けているご自身を、まずはねぎらってあげてください。
在宅でのかかわりがどうしても難しくなってきたときは、認知症ケアに実績のあるグループホーム(認知症対応型共同生活介護)や介護付き有料老人ホーム、特別養護老人ホーム(特養)への入居も、無理をしすぎないための選択肢の一つです。
対応を工夫しても状況が変わらないときは、一人で決めようとせず、ケアマネジャーや地域包括支援センター、介護の窓口の相談員にも気軽に声をかけてください。今の状況を話すだけでも、気持ちが整理されることがあります。
よくある質問
物盗られ妄想とは、一言でいうとどのような症状ですか?
一言でいうと、認知症の記憶障害を背景に、大切な物を盗まれたと思い込み、身近な家族を疑ってしまうBPSD(行動・心理症状)です。4大認知症のうち約6〜7割を占めるアルツハイマー型認知症の、軽度から中等度の時期によくみられるとされています。
なぜ介護を頑張っている自分ばかりが疑われるのですか?つらいです。
介護の仕方が悪いからではありません。物盗られ妄想は、日常的に持ち物に触れる機会が多く、最も安心して感情をぶつけられる相手が標的になりやすい症状です。疑われるのは、それだけ長く深くかかわってきた証でもあります。自分を責める必要はありません。
「自分は盗っていない」と説明すれば、分かってもらえますか?
説明の中身は忘れても、否定されたり責められたりした不快な感情は残りやすく、かえって疑いを深めてしまうことがあるとされています。正面から否定するより、「一緒に探しましょう」とまず気持ちを受け止め、行動で示すほうが効果的とされています。
通帳や印鑑はどのように保管すればよいですか?
1か所に隠しきらず、家族内で2か所以上、保管場所を把握しておくことがおすすめです。家族が預かる場合は、日付と内容を記した預かり証を本人の見える場所に残しておくと、訴えられたときに一緒に確認しやすくなります。
近所の人にまで「盗まれた」と言われるようになりました。どうすればいいですか?
近隣トラブルにまで発展した場合は、地域包括支援センターへの相談が最初の窓口になります。妄想の症状が強い場合は認知症疾患医療センター、金銭管理への不安が大きい場合は成年後見制度の利用も選択肢です。診断や対応方針については主治医・かかりつけ医にもご相談ください。
家族の一人だけが疑われ続けてつらそうです。他の家族は何をすればいいですか?
疑われた場面の状況を家族間で共有し、他の家族も定期的に本人と顔を合わせる機会をつくることが助けになります。デイサービスやショートステイを取り入れて物理的に離れる時間をつくることも、特定の1人に負担が偏るのを防ぐ工夫です。
参考(一次情報)
- 厚生労働省「認知症施策推進大綱」
- 厚生労働省「認知症施策推進基本計画」(2024年12月)
- 認知症介護研究・研修センター「認知症介護情報ネットワーク(DCnet)」
- 公益社団法人 認知症の人と家族の会
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