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最終更新: 2026-07-11

軽度認知障害(MCI)とは?認知症との違いとサイン

軽度認知障害(MCI)とは、正常な老化と認知症の中間にあたる状態で、記憶などの認知機能に低下がみられても日常生活は自立して送れる段階です。65歳以上の高齢者の約15%が該当するとされ、加齢による物忘れとの違いや早期に受診したい診療科をわかりやすく解説します。

この記事の要点

  • 軽度認知障害(MCI)とは、記憶などの認知機能に低下がみられても日常生活は自立して送れる、正常な老化と認知症の中間にあたる状態で、65歳以上の高齢者の約15%が該当するとされています
  • 厚生労働省の研究班による2022年度の調査では、65歳以上の高齢者のうちMCIが約15.5%、認知症が約12.3%を占め、合わせると約4人に1人が該当すると推計されています
  • MCIの人のうち年間約10〜15%が認知症へ移行するとされていますが、生活習慣の改善などにより状態が保たれる方もいるとされています
  • 加齢による物忘れとMCI・認知症による物忘れは、体験の一部を忘れるか体験そのものを忘れるかなど5つの視点で見分けやすくなるとされています
  • もの忘れが気になり始めたら、もの忘れ外来・神経内科(脳神経内科)・精神科の3つが主な相談先で、早期の受診が進行を遅らせる可能性につながるとされています

軽度認知障害(MCI)とは?正常な老化と認知症の中間段階

結論軽度認知障害(MCI)とは、記憶などの認知機能に軽度の低下がみられても、日常生活動作は自立して行える、正常な老化と認知症の中間にあたる状態です。厚生労働省の調査では、65歳以上の高齢者の約15%が該当すると推計されています。

MCI(Mild Cognitive Impairment、軽度認知障害)とは、正常な物忘れと認知症のちょうど中間に位置する状態を指す言葉です。もの忘れなど認知機能の一部に低下はみられるものの、買い物や料理、金銭管理といった日常生活の動作は基本的に自分でこなせているため、認知症の診断基準までは満たさない段階とされています。

厚生労働省の情報によると、MCIは、年齢や教育レベルだけでは説明できない記憶障害がある、本人または家族が物忘れを自覚・指摘している、日常生活動作そのものは保たれている、といった特徴で説明されることが多く、病名ではなく状態を表す言葉である点も特徴です。

「認知症の一歩手前」と表現されることもありますが、MCIと診断された方の全員が認知症に進むわけではありません。まずは正しく状態を知り、次の章で加齢による物忘れとの違いを確認してみましょう。

実際には、本人や家族が変化に気づく前に、健康診断や人間ドックの認知機能検査、あるいは別の病気で受診した際の問診をきっかけに、MCIが見つかるケースもあるとされています。

区分認知機能の状態日常生活動作目安となる特徴
正常年齢相応の物忘れの範囲内支障なく自立している物忘れをしても後で思い出せる
軽度認知障害(MCI)記憶などに軽度の低下がみられる基本的に自立している本人や家族が物忘れを自覚・指摘するが生活は送れる
認知症記憶を含む複数の認知機能が低下する部分的に支障が生じる金銭管理や服薬管理などに介助が必要になることがある

上記は目安であり、実際の診断は医師による問診や検査をもとに行われます。気になる症状がある場合は、自己判断せず医療機関にご相談ください。

加齢による物忘れとMCIの物忘れはどう違うのですか?チェックリストで確認

結論加齢による物忘れとMCI・認知症による物忘れには忘れ方や自覚の有無など5つの視点で見分ける目安があり、代表的なのは体験の一部を忘れるか、体験そのものを忘れるかという違いです。

「年のせいの物忘れ」と「MCI・認知症による物忘れ」は、見た目には似ていても中身が異なるとされています。たとえば、昨日の夕食で何を食べたか思い出せないのは加齢による物忘れの範囲内とされますが、夕食を食べたこと自体を覚えていない場合は注意しておきたいサインとされています。

以下のチェックリストはあくまで一般的な目安です。複数の項目に当てはまるからといって必ずMCIや認知症であるとは限りませんが、心配な場合は早めに医療機関へ相談することが勧められます。

視点加齢による物忘れMCI・認知症による物忘れ
忘れ方体験の一部を忘れる(夕食のメニューを思い出せないなど)体験そのものを忘れる(夕食を食べたこと自体を忘れているなど)
自覚物忘れをしている自覚がある自覚が乏しく、指摘されても取り繕うことがある
ヒントの効果ヒントがあれば思い出せるヒントがあっても思い出せないことが多い
進行のしかた急激には進行しない少しずつ、あるいは比較的早く進行することがある
日常生活への影響生活にほとんど支障はないMCIでは軽微、認知症では支障が明らかになる

上記はあくまで一般的な傾向であり、個人差があります。当てはまる項目があっても自己判断はせず、気になる場合は医療機関にご相談ください。

MCIのサインにはどのようなものがありますか?見逃しやすい初期の変化

結論MCIのサインには、同じ話を繰り返す、物の置き場所を何度も忘れるなど6つの変化が代表的とされ、本人よりも家族が先に気づくことが多いとされています。

MCIの段階では、日常生活が大きく破綻するほどの変化は少ないため、家族が年のせいかもしれないと見過ごしてしまうこともあります。ただし、次のような変化が複数、かつ以前と比べて明らかに増えている場合は、注意しておきたいサインとされています。

  • 同じ話や質問を短時間のうちに繰り返すことが増えた
  • 物をどこに置いたか忘れ、探し物をする回数が増えた
  • 約束や予定を忘れることが増えた
  • 料理の手順や味付けを間違えることが増えた
  • 家計簿の管理や家電の操作など、複雑な作業に時間がかかるようになった
  • 意欲や興味が薄れ、趣味や外出を面倒がるようになった

サインが1つあるだけで、すぐにMCIや認知症と決まるわけではありません。複数のサインが重なり、以前と比べて数ヶ月以上続いている場合に、念のため専門機関へ相談することが勧められます。

MCIを放置するとどうなりますか?認知症へ移行する割合

結論MCIの人のうち年間約10〜15%が認知症へ移行するとされていますが、全員が進行するわけではなく、生活習慣の改善などにより状態が保たれる方もいるとされています。

厚生労働省の研究班による2022年度の調査では、65歳以上の高齢者のうちMCIの有病率は約15.5%、認知症の有病率は約12.3%と推計されており、合わせると約27.8%、およそ4人に1人がMCIまたは認知症に該当すると報告されています。

MCIはそのまま何もしなければ必ず認知症に進むというわけではなく、一定期間ののちに認知機能が正常な範囲に戻る方や、大きな変化がないまま経過する方もいるとされています。生活習慣病(高血圧・糖尿病・脂質異常症など)の管理が進んだことなどを背景に、以前の推計と比べて認知機能低下の進行が緩やかになっている可能性も指摘されています。

とはいえ、年間10〜15%という数字は、決して低い割合ではありません。様子を見ているうちに時間が経ってしまったということがないよう、気になるサインがあれば早めに相談することが大切です。

項目割合の目安備考
65歳以上のMCI有病率約15.5%2022年度の調査による推計値
65歳以上の認知症有病率約12.3%2022年度の調査による推計値
MCIと認知症を合わせた割合約27.8%(約4人に1人)65歳以上の高齢者が対象
MCIから認知症への年間移行率約10〜15%全員が移行するわけではないとされる

出典の目安: 厚生労働省の研究班による調査(2022年度)等。数値は調査年や対象、調査方法によって異なる場合があります。

早期発見にはどのようなメリットがありますか?進行を遅らせられる可能性

結論MCIの段階で気づき、生活習慣の見直し・持病の管理・医療機関との継続的な関わりという3つの働きかけを行うことで、認知機能の低下速度を緩やかにできる可能性があるとされています。

MCIは治療法が確立した病気ではありませんが、早い段階で気づくことにはいくつかのメリットがあるとされています。第一に、生活習慣を見直す時間的な余裕が生まれることです。有酸素運動を含む運動習慣、バランスの良い食事、十分な睡眠、人との交流を保つことなどが、認知機能の維持に役立つ可能性があると考えられています。

第二に、高血圧・糖尿病・脂質異常症といった生活習慣病がある場合、その治療や管理を通じて認知機能低下の進行に良い影響を与えられる可能性があるとされています。持病があり主治医がいる方は、もの忘れについても主治医にご相談ください。

第三に、MCIの段階から医療機関とつながっておくことで、その後の変化を定期的に確認でき、万が一認知症に進んだ場合にも早い段階で支援につなげやすくなります。ただし、これらの介入で進行を確実に止められるとまでは言い切れず、あくまで可能性の一つとして捉えることが大切です。

MCIが疑われるときは何科を受診すればよいですか?

結論もの忘れが心配なときの主な相談先は、もの忘れ外来、神経内科(脳神経内科)、精神科の3つで、迷う場合はかかりつけ医や地域包括支援センターに相談する方法もあります。

何科に行けばよいか分からないという声は少なくありません。もの忘れやMCIが心配なときは、次のような診療科・相談先が候補になります。初診の予約に数週間先までかかる医療機関もあるため、気になる様子があれば早めに電話で相談しておくと安心です。

診療科・窓口特徴こんなときに向いている
もの忘れ外来もの忘れや認知症の診断・検査に特化した専門外来まず専門的に調べてもらいたいとき
神経内科(脳神経内科)脳や神経の病気全般を診療し、画像検査などにも対応手足の動きやしびれなど身体症状もあるとき
精神科・心療内科気分の落ち込みや意欲低下など精神面もあわせて相談できるうつ症状や不眠などもみられるとき
かかりつけ医普段の体調を把握したうえで専門機関への紹介状を書いてもらえるどこに行けばよいか分からないとき

診療科の名称や体制は医療機関によって異なります。受診先に迷う場合は、まずかかりつけ医や地域包括支援センターに相談する方法もあります。

受診時に準備しておきたいこと

結論受診をスムーズに進めるには、気になる症状の具体的なメモ、お薬手帳、健康保険証、可能であれば家族の同伴という4点を準備しておくと安心です。

受診の際は、次のようなものを準備しておくと、限られた診察時間の中でも状況を正確に伝えやすくなります。

  • いつ頃からどのような変化があったかを記録したメモ(具体的なエピソードがあると伝わりやすくなります)
  • お薬手帳(現在服用している薬や持病の情報)
  • 健康保険証・医療証
  • 可能であれば家族など普段の様子を知っている人の同伴

受診をためらう方の中には、認知症だと決めつけられるのが怖いという声も少なくありません。もの忘れ外来などの多くはMCIの段階での相談にも対応しており、必ずしも認知症の診断だけを目的とした場所ではない点を知っておくと、一歩を踏み出しやすくなります。

認知症の種類とMCIとの関係

結論認知症にはアルツハイマー型や脳血管性型など4つの代表的な種類があり、どの種類に近い変化なのかによって現れやすい症状や進行のしかたが異なるとされています。

MCIの段階では特定の病型に絞り込むことは難しいものの、その後認知症に進んだ場合には、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症など、原因によっていくつかの種類に分類されます。たとえば、記憶障害が中心になりやすいアルツハイマー型に対し、脳血管性では症状の現れ方にむらが出やすく、レビー小体型では幻視や身体の動きにくさを伴いやすいなど、種類によって注意しておきたいポイントが異なるとされています。

種類によって記憶障害の現れ方や、幻視・歩行の変化といった随伴する症状、進行の速さの傾向が異なるとされています。認知症の種類ごとの特徴や見分け方について詳しく知りたい方は、認知症の種類に関する記事もあわせてご参照ください。もの忘れ外来などを受診した際に、どの種類に近い変化かを医師が確認しながら診断を進めていきます。

家族はどのようにサポートすればよいですか?

結論家族ができるサポートには、否定せずに話を聞く、生活リズムの維持を支える、地域包括支援センターなどの相談窓口を早めに活用するという3つのポイントがあります。

MCIの段階は、本人にとっても家族にとっても不安になりやすい時期です。物忘れを指摘したり、間違いを強く訂正したりすると、本人の自尊心を傷つけ、かえって受診や相談を避けるきっかけになることもあります。最近疲れているみたいだから一緒に病院に行こう、といった責めない伝え方を心がけることが大切です。

相談現場では、本人は困っていないと言うものの家族だけが心配しているというケースがよく聞かれます。本人の自尊心を傷つけないよう、一緒に健康診断を受けよう、もの忘れ外来は誰でも念のため行く場所だから、といった声かけで受診につなげる工夫をしている家族の方も多くいらっしゃいます。

あわせて、運動習慣や趣味の継続、人との交流など、これまでの生活リズムをできるだけ維持できるようさりげなく支えることも助けになるとされています。家族だけで抱え込む必要はありません。お住まいの地域の地域包括支援センターは、要介護認定に関する相談だけでなく、もの忘れや今後の生活に関する相談も受け付けています。一人で悩まず、早めに相談窓口を頼ることも選択肢の一つです。

よくある質問

軽度認知障害(MCI)を一言でいうとどのような状態ですか?

一言でいうと、記憶などの認知機能にわずかな低下がみられても日常生活は自立して送れている、正常と認知症の中間の状態です。65歳以上の高齢者の約15%が該当するとされていますが、全員が認知症に進むわけではありません。

MCIと診断されたら必ず認知症になりますか?

いいえ、必ず認知症になるとは限りません。MCIの人のうち年間約10〜15%が認知症へ移行するとされる一方、生活習慣の改善などにより状態が保たれる方もいるとされています。

加齢による物忘れとMCIはどうやって見分ければよいですか?

体験の一部を忘れるか体験そのものを忘れるか、また物忘れの自覚があるかどうかなどが目安の一つとされています。判断が難しいときは自己判断をせず、もの忘れ外来など専門機関に相談することをお勧めします。

MCIが心配なときは何科を受診すればよいですか?

もの忘れ外来のほか、神経内科(脳神経内科)や精神科、かかりつけ医が主な相談先です。近くにもの忘れ外来がない場合は、地域包括支援センターに相談すると受診先の案内を受けられることがあります。

MCIの検査にはどのようなものがありますか?

問診に加え、記憶などを確認する認知機能検査、必要に応じて脳の画像検査(MRIやCTなど)を組み合わせて評価することが多いとされています。具体的な検査内容は医療機関によって異なるため、疑問があれば主治医にご相談ください。

家族にMCIの疑いがある場合、どのように接すればよいですか?

物忘れを強く指摘せず、健康診断や定期受診のついでに相談する形で受診を促す方法があります。不安をあおらず、生活リズムを保てるよう見守る姿勢が大切とされています。

参考(一次情報)

  • 厚生労働省 e-ヘルスネット「軽度認知障害(MCI)」
  • 厚生労働省 認知症及び軽度認知障害(MCI)の有病率等に関する調査研究
  • 国立長寿医療研究センター
  • 日本神経学会「認知症疾患診療ガイドライン」

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