最終更新: 2026-07-04
老健と特養の違い
老健と特養の違いをやさしく解説します。老健はリハビリで在宅復帰を目指す一時利用の施設、特養は終身で暮らす生活の場です。目的・入所条件・医療体制・月額費用の目安を比較表で整理し、特養待機中の橋渡し利用や住み替えの流れも紹介します。
この記事の要点
- 老健(介護老人保健施設)はリハビリをして在宅復帰を目指す一時利用の施設、特養(特別養護老人ホーム)は介護を受けながら終身で暮らす生活の場です
- 対象は老健が要介護1以上、特養が原則要介護3以上。入所期間は老健が原則3〜6ヶ月目安(3ヶ月ごとに判定)、特養は期限なしです
- どちらも公的な介護保険施設のため入居一時金は不要で、補足給付(負担限度額認定)による居住費・食費の軽減も共通して使えます
- 月額の目安は多床室で約9〜13万円、ユニット型個室で約13〜17万円と、同じ部屋タイプならおおむね同水準です(2026年時点)
- 特養の待機期間を老健で過ごす橋渡し利用が現実的な方法で、老健に入所したまま特養へ申し込むこともできます
老健と特養の違いとは?まず結論から
結論いちばん大きな違いは施設の目的です。老健はリハビリをして自宅へ戻ることを目指す一時利用の施設、特養は介護を受けながら終身で暮らす生活の場です。
介護老人保健施設(老健)とは、病院と自宅の中間に位置づけられる公的な介護保険施設で、医師の管理のもとリハビリテーションや看護・介護を受けながら在宅復帰を目指す施設です。入院で体力が落ちた方が、家に帰る準備をととのえる場所とイメージすると分かりやすいでしょう。
一方、特別養護老人ホーム(特養)とは、常に介護が必要で自宅での生活が難しい方が、食事・入浴・排せつなどの介護を受けながら原則として終身で暮らせる公的な介護保険施設です。看取りへの対応も進んでおり、終の住まいとして選ばれることが多い施設です。
つまり老健は「在宅復帰を目指して一時的に入所する施設」、特養は「期限なく暮らし続ける生活の場」という役割の違いがすべての土台になります。名前が似ているため混同されがちですが、目的がまったく異なるため、どちらが合うかはご本人の状態とこの先の見通しで決まります。
老健と特養の違い早見表|目的・期間・対象・医療体制
結論両者の違いは、目的・入所期間・対象となる要介護度・医療とリハビリの体制・費用・入りやすさの6点で整理できます。まず下の表で全体像をつかみましょう。
特に注意したいのが対象者の違いです。老健は要介護1以上、特養は原則として要介護3以上が対象で、要介護1・2の方は特養には原則申し込めません(やむを得ない事情がある場合の特例入所を除きます)。
また入所期間は、老健が原則3〜6ヶ月を目安に3ヶ月ごとに継続の判定が行われるのに対し、特養には期限がありません。老健も状態によって結果的に長くなることはありますが、あくまで在宅復帰が前提の施設です。
| 項目 | 老健(介護老人保健施設) | 特養(特別養護老人ホーム) |
|---|---|---|
| 施設の目的 | リハビリをして在宅復帰を目指す | 介護を受けながら生活する(終の住まい) |
| 入所期間 | 原則3〜6ヶ月が目安(3ヶ月ごとに判定) | 期限なし(終身利用が可能) |
| 対象者 | 原則65歳以上・要介護1以上 | 原則65歳以上・要介護3以上(1・2は特例入所) |
| 医師の体制 | 常勤の医師を配置(入所者100人に1人以上が基本) | 非常勤の配置医(嘱託医)が一般的 |
| リハビリ | 理学療法士などのリハビリ職を配置(入所者100人に1人以上) | 機能訓練指導員による機能維持が中心 |
| 月額費用の目安 | 約9〜17万円 | 約9〜16万円 |
| 入りやすさ | 比較的入りやすい(数週間〜数ヶ月が目安) | 地域により待機が長い場合がある |
人員配置は厚生労働省の運営基準にもとづく標準的な体制、費用は自己負担1割・30日の概算です(2026年時点)。費用の詳細は後述の比較表をご覧ください。
共通点は?どちらも公的施設で費用の軽減制度が使えます
結論老健と特養はどちらも介護保険で利用する公的施設のため、入居一時金が不要で、所得の低い方には居住費・食費を軽減する補足給付(負担限度額認定)が共通して使えます。
違いばかりが注目されますが、共通点を知っておくと民間施設と比較するときの判断がしやすくなります。どちらも介護保険法にもとづく介護保険施設で、入居一時金や敷金は不要、月々の支払いだけで利用できます。民間の有料老人ホームに比べて費用が抑えられている傾向がある点も共通です。
また、住民税非課税世帯などの方は、特定入所者介護サービス費(補足給付)により居住費と食費に負担の上限が設けられます。補足給付は老健・特養のどちらでも使える制度で、対象になれば月の負担が数万円単位で下がることもあります。利用には市区町村への負担限度額認定の申請が必要で、預貯金などの資産要件もあります。
- 介護保険の施設サービスとして利用する公的施設(入居一時金・敷金なし)
- 補足給付(負担限度額認定)で居住費・食費が軽減される
- 高額介護サービス費により、介護保険の自己負担には月の上限がある
- 申し込みは施設へ直接行い、入所の必要性が高い方が優先される
費用はどちらが安い?月額目安を比較
結論同じ部屋タイプで比べると月額はおおむね同水準で、多床室なら約9〜13万円、ユニット型個室なら約13〜17万円が目安です(2026年時点)。
費用は要介護度・部屋タイプ・所得段階で変わるため、一概にどちらが安いとは言い切れません。傾向としては、老健は医療やリハビリの体制が手厚いぶん介護保険の自己負担(施設サービス費)がやや高め、いっぽう多床室の居住費(国の基準費用額)は特養が1日915円、老健が1日437円と老健のほうが低く設定されています(2024年8月改定)。結果として同じ部屋タイプなら、老健と特養の月額はおおむね同水準に収まります。
なお、在宅復帰の機能が標準的な水準に満たない一部の老健(その他型・療養型)では、2025年8月から多床室に月8,000円程度の室料負担が導入されています。多床室を検討する場合は、室料の有無を施設に確認すると安心です。
薬代の扱いにも違いがあります。特養では医療機関を受診して医療保険で支払うのに対し、老健では薬代や施設内の医療費が原則として施設側の包括費用に含まれます。高額な薬を使っている方は老健の受け入れ判断に影響することがあるため、事前にお薬手帳を見せて相談しましょう。
| 部屋タイプ | 老健の月額目安 | 特養の月額目安 |
|---|---|---|
| 多床室(相部屋) | 約9〜12万円 | 約9〜13万円 |
| 従来型個室 | 約13〜15万円 | 約10〜14万円 |
| ユニット型個室 | 約13〜17万円 | 約13〜16万円 |
要介護3・自己負担1割・30日で概算した2026年時点の目安です。居住費・食費は厚生労働省の基準費用額(2024年8月改定)、施設サービス費は令和6年度介護報酬をもとにしており、加算・医療費・日用品費などで変動します。補足給付の対象者はここからさらに下がります。
どう使い分ける?よくある3つのパターン
結論典型的な使い分けは、退院後のリハビリには老健、在宅介護が限界で終身の住まいを探すなら特養、特養の待機中は老健を橋渡しに、という3パターンです。
実際のご相談で多いのは次の3つの場面です。ご本人の今の状態に加えて、「この先どこで暮らすか」という見通しをあわせて考えると選びやすくなります。
相談現場では、退院日が迫っているのに行き先が決まらず、あせって民間施設に決めてしまうご家族を多く見てきました。まず老健で数ヶ月の時間をつくり、その間に特養や他の施設をじっくり比較する、という順番にすると費用にも気持ちにも余裕が生まれます。特養の待機期間を老健で過ごす「橋渡し」は、実務でもよく使われる現実的な方法です。
| よくある状況 | 向いている使い方 | 理由 |
|---|---|---|
| 退院後、すぐ自宅に戻るのは不安 | 老健でリハビリをしてから在宅復帰 | 常勤医師とリハビリ職の体制で、体力の回復と在宅準備を支援してもらえるため |
| 在宅介護が限界で、この先は施設で暮らしたい | 特養へ入所を申し込む | 期限なく終身で暮らせて、費用も公的水準に抑えられるため |
| 特養に申し込んだが、順番待ちが長い | 待機中を老健で過ごす(橋渡し利用) | 介護とリハビリを受けながら、安全な環境で特養の順番を待てるため |
老健から特養へ住み替える流れ
結論老健に入所したまま特養へ申し込み、リハビリを続けながら待機し、特養から連絡が来たら面談・入所判定を経て住み替えるのが一般的な流れです。
老健に入所している間も、特養への申し込みは可能です。特養の入所は申込順ではなく、介護の必要性が高い方から決まる仕組みが一般的なため、住み替えの可能性が少しでもあるなら早めに申し込んでおくことが大切です。複数の特養へ同時に申し込むこともできます。
老健の支援相談員に「特養を待っている」と伝えておくと、3ヶ月ごとの継続判定の際に事情を考慮してもらいやすく、申込書類の準備や施設探しも手伝ってもらえます。どの特養なら申し込みやすいか分からないときは、介護の窓口の相談員がお住まいの地域の待機状況をふまえて無料でお調べします。
| ステップ | すること | ポイント |
|---|---|---|
| 1. 特養を探して申し込む | 見学のうえ、入所申込書や介護保険証の写しなどを施設へ提出 | 複数施設に申し込み可能。老健の支援相談員も手伝ってくれます |
| 2. 老健で待機する | 3ヶ月ごとの継続判定を受けながらリハビリを継続 | 特養待機中であることを老健側に共有しておきます |
| 3. 特養から連絡が来る | 面談や健康状態の確認を経て、入所判定会議で決定 | 健康診断書などの書類準備が必要になります |
| 4. 契約して住み替える | 特養と契約し、老健の退所手続きと引っ越しを行う | 日程調整は両施設の相談員が支援してくれます |
申し込みから入所までの期間は地域・施設によって大きく異なります。空き状況は変わりやすいため、申し込み後も年1回程度は施設に状況を確認すると安心です。
選ぶ前に確認したい7つのポイント
結論目的(在宅復帰か終身か)と要介護度をまず確認し、医療・リハビリの必要度、費用と軽減制度、待機状況、看取り対応の順にチェックすると選びやすくなります。
見学や問い合わせの際は、次の7点を順に確認していくと、ご本人に合う施設かどうかを判断しやすくなります。
- この先の見通し: 自宅に戻ることを目指すのか、終身の住まいを探すのか
- 要介護度: 要介護1・2の方は特養が原則対象外のため、老健や他の施設種別も視野に入れる
- 医療の必要度: たんの吸引や高額な薬など、医療的ケアの内容を伝えて受け入れ可否を確認する
- リハビリの必要度: 集中的なリハビリが必要なら老健、機能維持が中心なら特養でも対応しやすい
- 費用: 補足給付(負担限度額認定)の対象になるかを市区町村に確認し、月額を試算する
- 待機状況: 特養は地域差が大きいため、複数の施設で待機の目安を聞いておく
- 看取り: 最期まで暮らすことを想定するなら、看取り対応の体制と実績を確認する
迷ったときは?よくある誤解と相談先
結論老健は入れば安心の終の住まいではなく、特養は申し込めばすぐ入れる施設ではない、という2つの誤解に注意しましょう。迷ったらケアマネジャーや地域包括支援センター、紹介窓口への相談が近道です。
よくある誤解の1つ目は、老健に入れればずっといられるという思い込みです。老健は在宅復帰を目指す施設のため、3ヶ月ごとの判定で退所に向けた話し合いが行われます。実際の平均在所日数は約310日(おおむね10ヶ月、厚生労働省の介護サービス施設・事業所調査)と目安より長めですが、終身利用を前提にはできません。次の行き先を早めに考えておくことが大切です。
2つ目は、特養は申し込めばすぐ入れるという誤解です。要介護3以上の入所申込者は全国で約25万人(厚生労働省・令和4年度調査)と減少傾向にはあるものの、地域や施設によっては数ヶ月〜数年の順番待ちが前提になります。
どちらの施設が合うか迷ったら、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに相談すると、地域の実情に合った候補を挙げてもらえます。関西で施設探しを急いでいる方は、介護の窓口の相談員が待機状況や費用をふまえて候補施設を無料でお調べしますので、お気軽にご相談ください。
よくある質問
老健にはずっと入所できますか?
原則はできません。老健は在宅復帰を目指す施設で、3ヶ月ごとに入所継続の判定が行われ、3〜6ヶ月が入所期間の目安とされています。実際の平均在所日数は約310日(厚生労働省の介護サービス施設・事業所調査)と長めですが、終身利用を前提とする施設ではありません。
老健と特養はどちらが安いですか?
同じ部屋タイプならおおむね同水準で、月9〜17万円程度が目安です(2026年時点)。多床室の居住費は老健のほうが低い一方、施設サービス費は老健がやや高めです。どちらも補足給付(負担限度額認定)の対象のため、住民税非課税世帯の方は負担が大きく下がります。
要介護2でも特養に入れますか?
原則は要介護3以上ですが、認知症の症状で日常生活に支障がある場合や虐待のおそれがある場合など、やむを得ない事情があれば要介護1・2でも特例入所が認められることがあります。判断には市区町村が関与するため、まずケアマネジャーか施設に相談しましょう。なお老健は要介護1から利用できます。
老健に入りながら特養に申し込めますか?
申し込めます。特養の待機期間を老健で過ごす方法は広く行われており、老健の支援相談員が申し込みを手伝ってくれることも多いです。複数の特養へ同時に申し込むこともできます。
特養の待機期間はどれくらいですか?
地域と施設によって数ヶ月から数年まで大きく異なります。全国の入所申込者(要介護3以上)は約25万人で減少傾向にあります(厚生労働省・令和4年度調査)。都市部でも比較的空きが出やすい施設はあるため、複数申し込みと定期的な状況確認がポイントです。
医療的ケアが必要な場合はどちらを選ぶべきですか?
日常的な医学的管理やリハビリが必要な方は、常勤医師のいる老健が適しています。ただし、たんの吸引や経管栄養などへの対応力は施設ごとに異なるため、個別の確認が必要です。長期にわたって医療と介護の両方が必要な方は、介護医療院という選択肢もあります。
参考(一次情報)
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