最終更新: 2026-07-06
老健(介護老人保健施設)とは
在宅復帰を目指すリハビリ施設「老健(介護老人保健施設)」を解説。対象(要介護1以上)、3〜6ヶ月といわれる入所期間の実態、PT・OT・STによるリハビリ体制、特養との違い、費用の目安と軽減制度、入所の流れ、退所後の選択肢までやさしく整理します。
この記事の要点
- 老健(介護老人保健施設)はリハビリで在宅復帰を目指す通過型の公的施設。対象は原則65歳以上・要介護1以上
- 入所期間は3〜6ヶ月が目安。ただし全国の平均在所日数は約310日(約10ヶ月)で、特養待ちの長期利用も多いのが実態
- 理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)が配置され、入所後3ヶ月は集中的な個別リハビリを受けられる
- 費用は月約9〜17万円が目安。入居一時金は不要で、住民税非課税世帯には食費・居住費を軽減する補足給付がある
- 3ヶ月ごとに入所継続の判定があるため、退所後の住まい(在宅・特養・民間施設)は入所直後から考えはじめると安心
老健(介護老人保健施設)とは?どんな施設?
結論介護老人保健施設(老健)とは、リハビリテーションと医療的なケアを受けながら自宅への復帰を目指す、「病院と自宅の中間」に位置づけられる公的な介護保険施設です。対象は原則65歳以上・要介護1以上の方です。
病気やけがの治療を終えて退院したものの、「今のままでは自宅での生活が不安」という時期に、心身の機能を立て直す場として使われます。医師が常勤し(入所者100人に1人以上)、看護職員やリハビリ専門職が配置されているため、退院直後の受け皿として広く利用されています。
特別養護老人ホーム(特養)が「終身の住まい」であるのに対し、老健はあくまで在宅復帰のための「通過施設」です。原則3ヶ月ごとに入所を続けるかどうかの判定があり、長く住み続けることを前提とした施設ではありません。
対象は要介護1以上の方で、要支援1・2では入所できません。なお、40〜64歳の方でも特定疾病により要介護認定を受けていれば対象になります。
運営できるのは地方公共団体や医療法人、社会福祉法人などに限られる、公的性格の強い施設です。入所のほかにショートステイ(短期入所療養介護)やデイケア(通所リハビリテーション)を併設していることが多く、在宅介護を支える地域の拠点としての役割も担っています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | 介護老人保健施設(略称は老健) |
| 目的 | リハビリによる在宅復帰と、在宅生活の継続支援 |
| 入所対象 | 原則65歳以上・要介護1以上(要支援の方は入所不可) |
| 入所期間 | 3〜6ヶ月が目安(3ヶ月ごとに継続判定) |
| 医療・リハビリ体制 | 医師が常勤。看護職員、理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)を配置 |
| 初期費用 | 入居一時金は不要 |
入所期間はどのくらい?3〜6ヶ月の目安と「平均約310日」の実態
結論入所期間は3〜6ヶ月が目安とされますが、法律で上限が決まっているわけではありません。全国の平均在所日数は約310日(約10ヶ月)で、目安より長く利用されているのが実態です。
老健では原則3ヶ月ごとに入所継続の判定が行われます。医師・看護職員・リハビリ専門職・支援相談員などが集まり、リハビリの進み具合や家庭の受け入れ体制をみて「在宅復帰できるか、入所を続けるか」を検討する仕組みです。
一方で、回復のペースやご家庭の事情はさまざまです。厚生労働省の調査では老健の平均在所日数は約310日と、目安の3〜6ヶ月を大きく上回っており、半年から1年ほど利用する方も珍しくありません。
ただし、施設は在宅復帰の実績などによって「超強化型」から「その他型」まで複数の類型に分かれており、在宅復帰に力を入れる施設ほど退所に向けた調整が早く始まる傾向があります。どのくらいの期間を想定できるかは、施設ごとに違うと考えておきましょう。
平均在所日数は厚生労働省「介護サービス施設・事業所調査」による全国平均の目安です(2026年時点)。施設の類型やご本人の状態により大きく異なります。
リハビリ体制は?PT・OT・STによる集中リハビリ
結論老健には理学療法士(PT)・作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)といったリハビリ専門職の配置が義務づけられています。特に入所後3ヶ月間は週3回以上を目安とした集中的な個別リハビリを受けられる仕組みがあります。
入所直後の3ヶ月間は「短期集中リハビリテーション」の期間にあたり、機能回復をいちばん期待できる時期です。この期間を過ぎると週2回程度の維持的なリハビリに移行するのが一般的なため、リハビリ目的で老健を使うなら「早めに入所して最初の3ヶ月に集中する」のが基本になります。
人員基準では、リハビリ専門職を入所者100人に対して1人以上置くこととされていますが、実際には複数名を配置して手厚く対応する施設も多くあります。どの職種が何人いて、週に何回・1回何分のリハビリを受けられるかは施設ごとに差が大きいため、見学時に必ず確認したいポイントです。
また、退所後に同じ法人の通所リハビリテーション(デイケア)や訪問リハビリにつなげられるのも老健の強みです。在宅復帰後のリハビリの続け方まで見据えて施設を選ぶと安心です。
- 理学療法士(PT) — 立つ・歩くなど、基本的な身体機能の回復訓練
- 作業療法士(OT) — 食事・着替え・トイレ・入浴など、生活動作の訓練
- 言語聴覚士(ST) — 飲み込み(嚥下)や発声・言葉の訓練
特養・有料老人ホームとの違いは?
結論最大の違いは目的です。老健が「在宅復帰を目指す通過施設」なのに対し、特別養護老人ホーム(特養)や介護付有料老人ホームは「生活の場(住まい)」です。
「入りやすさ」にも違いがあります。特養は原則要介護3以上で待機期間が長くなりがちなのに対し、老健は要介護1から申し込め、退所を前提とした施設のため空きが出やすい傾向があります。
リハビリをして家に帰りたい方は老健、介護を受けながら長く暮らす住まいを探している方は特養や有料老人ホーム、という整理が出発点です。両者の詳しい比較は、記事「老健と特養の違い」で解説しています。
| 項目 | 老健 | 特養 | 介護付有料老人ホーム |
|---|---|---|---|
| 目的 | 在宅復帰(リハビリ) | 終身の生活の場 | 生活の場 |
| 入所期間 | 3〜6ヶ月目安(継続判定あり) | 終身利用可 | 終身利用可(契約による) |
| 対象 | 要介護1以上 | 原則要介護3以上 | 施設による(自立〜要介護) |
| 医師 | 常勤 | 非常勤でも可 | 配置義務なし(協力医療機関と連携) |
| 初期費用 | 不要 | 不要 | 0円〜数百万円(入居金方式の場合) |
| 月額の目安 | 約9〜17万円 | 約6〜15万円 | 約15〜30万円 |
月額の目安は介護保険1割負担・標準的な条件での概算です(2026年7月時点)。所得や部屋タイプ、地域により変わります。
費用の目安は?入居一時金は不要、軽減制度も使える
結論老健の費用は月およそ9〜17万円(1割負担・標準的な食費居住費の場合)が目安です。入居一時金はかからず、住民税非課税世帯には食費・居住費を軽減する補足給付があります。
老健は補足給付(特定入所者介護サービス費)の対象施設です。世帯全員が住民税非課税の場合、所得と資産の要件を満たせば食費・居住費が所得段階に応じて軽減され、月の総額を大きく抑えられます。
また、1ヶ月の介護保険の自己負担が上限(一般的な所得の世帯で月44,400円)を超えた分は、高額介護サービス費として払い戻されます。施設内での診察や薬の費用は原則として施設側の負担に含まれるため、医療費が別建てで膨らみにくいのも特徴です。負担割合や軽減制度が使えるかどうかで実際の金額は大きく変わるため、市区町村の介護保険窓口やケアマネジャーにも確認してみましょう。
| 内訳 | 多床室 | ユニット型個室 |
|---|---|---|
| 施設サービス費(1割負担) | 月約2.5〜3.5万円 | 月約2.5〜3.5万円 |
| 居住費 | 月約1.3万円(437円/日) | 月約6.2万円(2,066円/日) |
| 食費 | 月約4.3万円(1,445円/日) | 月約4.3万円(1,445円/日) |
| 日用品・理美容など | 月1〜2万円程度 | 月1〜2万円程度 |
| 合計の目安 | 月約9〜12万円 | 月約14〜17万円 |
居住費・食費は国の基準費用額(2024年8月改定)をもとに30日で概算した目安です(2026年7月時点)。要介護度・加算・負担割合(1〜3割)で変わるほか、その他型・療養型の老健の多床室では2025年8月から別途室料(月8,000円程度)がかかる場合があります。
入所までの流れ|申込みから数週間〜1ヶ月が目安
結論老健は入りたい施設に直接申し込みます。面談・書類の確認と入所判定会議を経て入所が決まり、申込みから入所まで数週間〜1ヶ月程度が目安です。
入院中の方は、まず病院の医療ソーシャルワーカー(MSW)や退院支援の看護師に「老健を考えている」と伝えるとスムーズです。在宅から入所する場合は、担当のケアマネジャーが窓口になります。
見学の際は、居室や設備だけでなく「リハビリは週何回・1回何分か」「在宅復帰への考え方」「特養待ちでの利用は可能か」を聞いておくと、入所後の行き違いを防げます。
| ステップ | やること | ポイント |
|---|---|---|
| ① 相談 | 病院の相談員やケアマネジャーに相談 | 入院中なら退院支援と並行して進められる |
| ② 施設探し・申込み | 候補の老健を見学し、申込書を提出 | 複数施設への同時申込みも可能 |
| ③ 面談・書類提出 | 本人との面談、診療情報提供書などの提出 | 医療的ケアと服薬の情報が判定の鍵になる |
| ④ 入所判定会議 | 医師・看護・リハビリ職などが受け入れを判定 | 薬剤費が高額な場合は調整が入ることも |
| ⑤ 契約・入所 | 契約と入所日の調整 | 退院日と入所日をそろえるのが理想 |
退所後の選択肢|「次の住まい」は入所中から考える
結論退所後の行き先は在宅復帰だけではありません。特養への申込みや民間施設への住み替えも含め、入所した時点から次の選択肢を考えはじめるのが現実的です。
3ヶ月ごとの継続判定で「そろそろ退所を」と言われてから探しはじめると、時間の余裕がなく選択肢が狭まりがちです。入所して生活が落ち着いたら、リハビリの見通しとあわせて退所後の方向性をご家族で話し合っておきましょう。特に特養は申込みから入所まで時間がかかる地域が多いため、可能性があるなら早めに申し込んでおくのが鉄則です。迷ったときは、地域の施設事情に詳しい相談窓口を早めに頼るのも一つの方法です。
- 在宅復帰 — 通所リハビリテーション(デイケア)・訪問リハビリ・福祉用具を組み合わせて生活を続ける
- 特別養護老人ホーム(特養) — 要介護3以上なら入所中から申し込んで空きを待つ
- 介護付有料老人ホーム・住宅型有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅(サ高住) — 待機が短く住み替えやすい民間の選択肢
- 別の老健への住み替え — 退所期限を区切られた場合の現実的な選択肢
- 介護医療院・医療機関 — 医療の必要度が高くなった場合
「ロング活用」の現実|特養待ちの受け皿になっている
結論実際には、特養の空きを待つ間の住まいとして老健を長く利用する「ロング」と呼ばれる使い方が広くみられます。ただし、どの施設でも長期入所を続けられるわけではありません。
平均在所日数が約310日という数字が示すとおり、「3ヶ月で退所」が全員に当てはまるわけではなく、老健で心身を整えながら特養の結果を待つ方は実際に多くいます。老健側も、地域の受け皿の状況に応じて柔軟に対応しているのが現実です。
一方で、在宅復帰率などの実績は施設の介護報酬の区分に直結するため、在宅復帰の実績を重視する施設ほど長期入所には慎重です。入所前に「特養待ちでの利用は可能か」「どのくらいの期間までいられそうか」を率直に確認しておくと、あとで慌てずにすみます。
相談現場では、継続判定の直前になって「退所期限が近いのに次が決まっていない」と駆け込みでご相談いただくケースが最も多くあります。リハビリの経過・必要な医療的ケア・出せる費用の上限を先に整理しておくと、受け入れ可能な施設を短期間で絞り込めます。退所期限が決まっている方のご相談は優先してお手伝いしますので、期限の1〜2ヶ月前を目安に早めにお声かけください。
よくある質問
老健には最長どれくらいいられますか?
法律上の上限はありませんが、3ヶ月ごとに入所継続の判定があり、在宅復帰が可能と判断されると退所に向けた調整が始まります。全国の平均在所日数は約310日(約10ヶ月)で、半年〜1年ほど利用する方も多いのが実態です。
要支援でも老健に入れますか?
入所は要介護1以上が対象のため、要支援1・2の方は入所できません。ただし、老健のショートステイ(短期入所療養介護)やデイケア(通所リハビリテーション)は要支援の方でも利用できます。
老健の費用は月いくらくらいですか?
介護保険1割負担・標準的な食費居住費の場合、多床室で月約9〜12万円、ユニット型個室で月約14〜17万円が目安です。入居一時金は不要で、住民税非課税世帯には補足給付による食費・居住費の軽減があります。
老健に入りながら特養の申込みはできますか?
できます。老健でリハビリをしながら特養の空きを待つ方は実際に多くいます。特養は原則要介護3以上が対象のため、要介護度を確認したうえで、複数の施設に申し込んでおくのが一般的です。
老健では医療的ケアや持病の薬はどうなりますか?
医師が常勤しているため、インスリン注射や胃ろうなど一定の医療的ケアに対応できる施設が多くあります。ただし薬代は原則施設の負担(包括)になるため、高額な薬を使っている場合は入所判定の際に調整や相談が必要になることがあります。
入所中に外部の病院を受診できますか?
原則として施設の医師が診療し、専門的な検査や治療が必要なときは施設を通じて協力医療機関などを受診します。ご家族の判断だけで受診すると費用の扱いが変わる場合があるため、必ず事前に施設へ相談してください。
参考(一次情報)
- 厚生労働省「介護老人保健施設」(施設の目的・人員基準)
- 厚生労働省「介護サービス施設・事業所調査」(平均在所日数)
- 厚生労働省「サービスにかかる利用料」(基準費用額・補足給付・高額介護サービス費)
- 独立行政法人福祉医療機構 WAM NET「介護老人保健施設」
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