最終更新: 2026-07-06
胃ろうとは
胃ろうとは、お腹に小さな穴を作り胃へ直接栄養を届ける経管栄養の一つ(PEG)です。造設を検討する理由、経鼻チューブとの違い、費用の目安、注入や入浴など日常の管理、受け入れ施設の傾向まで、はじめてのご家族向けにやさしく解説します。
この記事の要点
- 胃ろうとは、お腹に作った小さな穴(ろう孔)から胃に直接栄養を入れる経管栄養の一つで、PEG(ペグ)とも呼ばれます
- 誤嚥性肺炎の予防や、口から十分に食べられないときの栄養確保を目的に検討されるのが一般的です
- 造設やカテーテル交換は医療保険の対象です。栄養剤は医薬品タイプなら保険適用、食品タイプは全額自己負担が一般的です
- 入浴は可能とされ、介護老人保健施設(老健)や介護医療院など看護体制のある施設で受け入れられています
- 胃ろうを造っても嚥下リハビリで口から食べる練習を併用でき、回復して抜去できた例もあるとされています
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胃ろうとは?お腹から胃に直接栄養を届ける経管栄養の一つ
結論胃ろうとは、お腹に小さな穴(ろう孔)を作り、チューブを通して胃に直接栄養剤を入れる経管栄養の一つです。内視鏡を使って造ることが多く、その手術の英語名からPEG(ペグ)とも呼ばれます。
胃ろうとは、病気や加齢で口から十分に食事がとれなくなったときに、お腹に作った小さな穴(ろう孔)からチューブを通して、胃に直接栄養剤や水分・お薬を入れる方法です。鼻やのどにチューブを通さずに栄養を届けられるため、経管栄養の中でも長期の利用に向いているとされています。
造設は内視鏡を使った手術(経皮内視鏡的胃ろう造設術)で行われることが多く、英語の頭文字からPEG(ペグ)と呼ばれます。手術そのものは30分程度で、前後の検査や体調管理を含めて1〜2週間程度の入院となることが一般的です。
ろう孔に取り付ける器具(カテーテル)には、お腹の外側の形がボタン型かチューブ型か、胃の中の固定方法がバルーン型かバンパー型かの組み合わせで4つのタイプがあります。抜けにくさやお手入れのしやすさが異なり、体の状態や生活に合わせて医師が選びます。
なぜ胃ろうにするの?検討される主な場面
結論飲み込む力(嚥下機能)が低下して口から十分に食べられないときの栄養確保や、誤嚥性肺炎を繰り返す場合の負担軽減を目的に検討されるのが一般的です。
食べ物や唾液が誤って気管に入ることを誤嚥(ごえん)といい、繰り返すと肺炎(誤嚥性肺炎)につながりやすいとされています。胃ろうは、誤嚥のリスクに配慮しながら、必要な栄養と水分を安定して確保するための手段の一つとして検討されます。
相談の場面で胃ろうが話題になるのは、次のようなときが多いとされています。
- 脳卒中(脳梗塞・脳出血)の後遺症で嚥下障害が残ったとき
- 認知症が進み、食べ物をうまく飲み込めなくなったとき
- パーキンソン病などの神経の病気で嚥下機能が低下したとき
- 誤嚥性肺炎を繰り返し、口からの食事だけでは体力の維持が難しいとき
- 鼻からのチューブ(経鼻経管栄養)が長期化し、負担が大きくなったとき
胃ろうを造るかどうかは病状の見通しやご本人の意思によって大きく変わります。この記事は一般的な情報の整理であり、実際の判断は主治医・かかりつけ医にご相談ください。
経鼻経管栄養・中心静脈栄養との違いは?
結論同じ経管栄養でも、鼻からチューブを入れる経鼻経管栄養は比較的短期向き、胃ろうは長期向きとされています。中心静脈栄養(TPN)は、胃や腸が使えないときに血管から栄養を入れる方法です。
口から食べる以外の栄養のとり方には、胃や腸を使う経管栄養と、血管に点滴で入れる静脈栄養があります。胃や腸が働いている場合は、体の仕組みに近い経管栄養を優先して検討するのが一般的な考え方とされています。
経鼻経管栄養は手術がいらない一方で、チューブがのどを通ったままになるため違和感が続きやすく、長期になる場合は胃ろうへの切り替えが検討されることが多いとされています。中心静脈栄養はIVHと呼ばれることもあり、高カロリーの輸液を太い静脈から入れる方法です。
| 方法 | 栄養の入り口 | 期間の目安 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 胃ろう(PEG) | お腹のろう孔から胃へ | 長期(おおむね4週間以上) | 顔にチューブがなく、のどの違和感が少ないとされる |
| 経鼻経管栄養 | 鼻からのどを通して胃へ | 比較的短期(数週間程度) | 手術は不要。チューブの違和感や抜けやすさが課題とされる |
| 中心静脈栄養(TPN) | 首や胸元などの太い静脈へ | 胃や腸が使えない場合 | 消化管を使わずに栄養を入れる。感染予防の管理が特に重要とされる |
一般的な分類の目安です(日本臨床栄養代謝学会の資料などを参考に作成、2026年時点)。どの方法が適しているかは病状により異なり、主治医が判断します。
胃ろうの日常生活|注入の流れ・交換の頻度・入浴
結論栄養剤の注入は1日2〜3回、1回30分〜2時間程度かけて行うのが一般的です。カテーテルは定期的な交換が必要ですが、ろう孔が安定すれば入浴も可能とされています。
カテーテルは消耗品のため、定期的な交換が必要です。バルーン型は1〜2か月ごと、バンパー型は4〜6か月ごとの交換が目安とされ、外来や訪問診療などで医師や看護師が交換します。
入浴を心配されるご家族は多いのですが、ろう孔の状態が落ち着いていれば、特別なカバーをつけずにお風呂に入れるとされています。ろう孔のまわりは石けんで優しく洗い、清潔に保つことがケアの基本とされています。
栄養剤の注入は食事に代わる時間として朝・昼・夕などに分けて行い、ご家族のほか、看護職員や研修を修了した介護職員が行います。一般的な流れは次のとおりです。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 1. 準備 | 手を洗い、栄養剤を常温に戻し、上体を30度以上起こした姿勢に整えます |
| 2. 注入前の確認 | カテーテルの位置やお腹の張り、体調に変わりがないかを確かめます |
| 3. 注入 | 栄養剤をゆっくり注入します(1回30分〜2時間程度が目安) |
| 4. 注入後 | 白湯(さゆ)を流してチューブの中を洗い、逆流を防ぐため30分〜1時間ほど上体を起こしたまま過ごします |
| 5. 毎日のケア | ろう孔まわりの皮膚を観察し、赤みやただれ、漏れがないかを確認します |
一般的な流れの一例です。注入の量・速度・姿勢は一人ひとり異なるため、主治医や看護師の指導に従ってください。
胃ろうの費用はどれくらい?医療保険と栄養剤の扱い
結論造設手術やカテーテル交換は医療保険の対象で、自己負担は1〜3割です。毎月かかる栄養剤は、医師が処方する医薬品タイプなら保険適用、食品タイプなら全額自己負担になるのが一般的です。
胃ろうのお金は、造設や交換など医療保険が使える費用と、栄養剤のように毎月かかる費用に分けて考えると整理しやすくなります。造設時の入院費が高額になっても、高額療養費制度により所得に応じた上限を超えた分は払い戻されます。
栄養剤には、医師が処方する医薬品タイプと、食品として購入する食品タイプ(濃厚流動食)があります。どちらを使うかは医療機関や施設の方針によっても異なり、毎月の負担額に差が出るため、退院前や入居前に確認しておくと安心です。
| 項目 | 自己負担の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 造設手術(入院費含む) | 数万円〜10万円程度 | 医療保険1〜3割負担。高額療養費制度の対象 |
| カテーテルの定期交換 | 1回数千円〜1万円程度 | 医療保険の対象。種類や交換場所で変わる |
| 栄養剤(医薬品タイプ) | 月数千円〜1万円台 | 医師の処方で医療保険が適用される |
| 栄養剤(食品タイプ) | 月2万円〜5万円程度 | 原則全額自己負担。施設では食費として扱われることが多い |
| ガーゼなどの消耗品 | 月数千円程度 | 原則自己負担 |
2026年時点の概算目安です。病状・入院日数・所得区分・栄養剤の種類により変わります。高額療養費制度の上限額は所得によって異なります(厚生労働省の資料を参考)。
胃ろうでも入れる施設はある?種別ごとの受け入れ傾向
結論看護職員の配置が手厚い介護老人保健施設(老健)や介護医療院は比較的受け入れやすく、特別養護老人ホーム(特養)や介護付き有料老人ホームは施設ごとの体制によって異なります。
経管栄養の注入は医行為にあたるため、看護職員が行うのが基本です。ただし2012年からは、喀痰吸引等研修を修了した介護職員も、看護師等と連携しながら胃ろうの注入を行えるようになりました(社会福祉士及び介護福祉士法に基づく喀痰吸引等制度)。そのため、看護職員が日中しかいない施設でも、研修修了者がいれば受け入れられる場合があります。
受け入れの可否を分けやすいのは、注入の回数と時間帯です。早朝や夜間の注入が必要な場合は、その時間帯に対応できる職員がいるかどうかがポイントになるとされています。
同じ種別でも施設ごとに体制は大きく異なるため、最後は一つひとつの確認が欠かせません。介護の窓口では、相談員が胃ろうに対応できる施設を無料でお調べしますので、候補探しはお任せください。種別ごとのおおまかな傾向は次のとおりです。
| 施設種別 | 受け入れの傾向 | ポイント |
|---|---|---|
| 特別養護老人ホーム(特養) | 施設により可 | 原則要介護3以上。看護体制や研修修了職員の有無で差がある |
| 介護老人保健施設(老健) | 比較的受け入れやすい | 看護職員の配置が手厚く、リハビリをして在宅復帰を目指す施設 |
| 介護医療院 | 受け入れやすい | 長期の医療的ケアと生活の場を兼ねる施設で、経管栄養を前提とした体制 |
| 介護付き有料老人ホーム | 施設により可 | 看護職員が日中のみか24時間常駐かで対応範囲が大きく変わる |
一般的な傾向の目安です(2026年時点)。同じ種別でも施設ごとに受け入れ体制は異なります。
「胃ろう=もう口から食べられない」ではありません
結論胃ろうを造った後も、嚥下リハビリテーションを続けながら、少しずつ口から食べる練習を併用できる場合があるとされています。回復して胃ろうを抜去できた例もあると報告されています。
胃ろうは「口から食べることを完全にやめる」ための処置ではなく、栄養の土台を確保したうえで、安全な範囲で口から食べる楽しみを続けるための手段にもなり得るとされています。言語聴覚士(ST)などによる嚥下リハビリテーションを続けながら、ゼリーやとろみをつけた食事を少量ずつ味わう方もいらっしゃいます。
嚥下機能が回復して必要な栄養を口からとれるようになれば、胃ろうを使わずに残しておく、あるいは抜去するという選択肢もあるとされています。抜去した後の穴は自然に閉じることが多いとされます。どこまで口から食べられるかは一人ひとり異なるため、主治医やリハビリの専門職と相談しながら進めることが大切です。
「造る・造らない」で悩んだら|ご家族の考え方
結論胃ろうを造るかどうかに、すべての方に当てはまる正解はありません。ご本人の意思や生き方を出発点に、主治医と家族で繰り返し話し合うプロセスが大切とされています。
胃ろうの選択は、栄養や医療の問題であると同時に、ご本人がどのように過ごしたいかという暮らし方の問題でもあります。日本老年医学会のガイドラインでも、人工的な水分・栄養補給を行うかどうかは、本人の意思と生活の質を中心に、導入しない選択や導入後の見直しも含めて丁寧に話し合うプロセスが重視されています。
厚生労働省は、もしものときに備えて本人・家族・医療者が前もって繰り返し話し合う取り組みを、ACP(アドバンス・ケア・プランニング、愛称は人生会議)として勧めています。元気なうちから「口から食べられなくなったらどうしたいか」を家族で話しておくことが、いざというときの大きな支えになります。
相談現場では、「胃ろうにすると施設に入れなくなるのでは」と造設をためらうご家族や、「造らなかったら後悔するのでは」と悩むご家族に数多く出会います。実際には胃ろうに対応する施設は一定数あり、施設探しを理由に選択を急ぐ必要はありません。迷ったときは、ご本人が以前に話していた言葉や大切にしてきた暮らし方を家族で出し合ってみると、少しずつ考えが整理されていくことが多いように感じます。
繰り返しになりますが、造る・造らないの判断や時期は病状によって異なります。実際の判断は主治医・かかりつけ医にご相談ください。
まとめ|胃ろうになっても暮らしの選択肢はあります
結論胃ろうとは、お腹のろう孔から胃に栄養を届ける経管栄養の一つで、費用は医療保険に支えられ、受け入れ施設もあります。わからないことは一人で抱え込まず、主治医や相談窓口を頼ってください。
胃ろうと聞くと大きな決断に感じられますが、日常の管理は流れを覚えれば落ち着いて行えることが多く、入浴や外出も工夫しながら続けられるとされています。「胃ろうになったら何もできなくなる」わけではなく、暮らし方の選択肢は残されています。
介護の窓口では、医療的ケアに対応できる関西の施設探しを相談員が無料でお手伝いしています。胃ろうの方の施設の探し方は状況別のご案内ページでも詳しくまとめていますので、迷ったときはお気軽にご相談ください。
よくある質問
胃ろうとPEG(ペグ)は同じものですか?
PEGは、内視鏡を使って胃ろうを造る手術(経皮内視鏡的胃ろう造設術)の英語の略称です。そこから、造られた胃ろう自体をPEGと呼ぶことも多く、日常的にはほぼ同じ意味で使われるのが一般的です。
胃ろうがあってもお風呂に入れますか?
ろう孔の状態が安定していれば、特別なカバーをつけずに入浴できるとされています。施設のお風呂や訪問入浴でも対応されています。実際の可否や注意点は、主治医や看護師にご確認ください。
胃ろうの交換はどのくらいの頻度で必要ですか?
カテーテルの種類によって異なり、バルーン型は1〜2か月ごと、バンパー型は4〜6か月ごとが目安とされています。交換は医療機関の外来や訪問診療で行われ、医療保険の対象です。
胃ろうだと特別養護老人ホーム(特養)には入れませんか?
入れないわけではありません。看護職員の体制や、喀痰吸引等研修を修了した介護職員の有無によって、受け入れの可否が施設ごとに異なります。申し込みの前に個別の確認が必要です。
胃ろうの栄養剤は医療保険と介護保険のどちらですか?
医師が処方する医薬品タイプの栄養剤は医療保険の対象で、自己負担は1〜3割です。食品タイプ(濃厚流動食)は原則全額自己負担で、施設入居中は食費として扱われることが一般的です。介護保険は栄養剤そのものには使われません。
胃ろうを途中でやめる(抜く)ことはできますか?
嚥下機能が回復し、口から必要な栄養をとれるようになった場合には、抜去を検討できるとされています。抜いた後の穴は自然にふさがることが多いとされます。時期や可否の判断は、主治医にご相談ください。
参考(一次情報)
- 厚生労働省「喀痰吸引等制度」(介護職員等によるたんの吸引・経管栄養)
- 厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(ACP・人生会議)
- 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
- 日本老年医学会「高齢者ケアの意思決定プロセスに関するガイドライン 人工的水分・栄養補給の導入を中心として」
- 日本臨床栄養代謝学会(旧・日本静脈経腸栄養学会)「静脈経腸栄養ガイドライン」
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