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最終更新: 2026-07-06

たんの吸引とは

たんの吸引とは、自力で出しにくいたんを吸引器で取り除く医行為にあたるケアです。必要になる状態、実施できる人(喀痰吸引等制度)、夜間対応の考え方、在宅での続け方、施設種類別の対応傾向と費用の目安をはじめてのご家族向けに解説します。

この記事の要点

  • たんの吸引とは、自力で出せないたんを吸引器と細い管(カテーテル)で吸い出すケアで、口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内部の3種類があります
  • 医行為にあたるため実施できる人は限られますが、研修を修了した介護職員も一定の範囲で実施できます(喀痰吸引等制度)
  • 夜間にも吸引が必要かどうかで、在宅介護の負担も、選べる施設の範囲も大きく変わります
  • 在宅では訪問看護の支援とご家族への手技指導、吸引器の購入で続ける形が一般的です
  • 施設はたん吸引可の表記でも頻度・時間帯・部位によって受け入れが分かれるため、状況を具体的に伝えて個別に確認することが大切です

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たんの吸引とは?どのようなケア?

結論たんの吸引とは、自力でたんを出すことが難しい方のために、吸引器につないだ細い管(吸引カテーテル)でたんを吸い出すケアです。医行為にあたるとされ、実施できる人の範囲が法律で定められています。

私たちはふだん、咳をすることで気道にたまったたんを自然に外へ出しています。しかし、病気や加齢で咳の力が弱くなったり、飲み込む力(嚥下機能)が低下したりすると、たんがのどや気管にたまって呼吸が苦しくなることがあります。そこで、機器の力を借りてたんを取り除くのがたんの吸引です。

吸引を行う部位は、口腔内(口の中)・鼻腔内(鼻の中)・気管カニューレ内部の3つに大きく分けられます。口腔内・鼻腔内の吸引は、のどの手前まで吸引カテーテルを入れてたんを吸い出す方法です。気管カニューレ内部の吸引は、気管切開をした方がのどに装着している管(気管カニューレ)の内側にたまったたんを吸い出す方法で、より専門的な管理が必要とされています。

たんがたまったままになると、呼吸が苦しくなるだけでなく、誤嚥性肺炎や窒息につながるおそれがあるとされています。適切なタイミングで行う吸引は、ご本人の呼吸の安楽と安全を守る大切なケアです。

たんの吸引が必要になるのはどんな状態?

結論飲み込む力や咳の力が弱くなり、自力でたんを出せなくなったときに必要になります。脳血管疾患の後遺症や神経の病気、気管切開の後などが代表的です。

たんの吸引が必要になりやすい状態として、一般的に次のようなものが挙げられます。のどがゴロゴロ鳴る、たんが絡んで眠れない、食事のあとにむせて苦しそうといった様子が続く場合は、たんをうまく出せていないサインの可能性があるとされています。

  • 加齢や脳梗塞・脳出血の後遺症などで、飲み込む力や咳の力が弱くなっている
  • パーキンソン病や筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経の病気で、呼吸や嚥下の機能が低下している
  • 気管切開をしていて、気管カニューレの中にたんがたまりやすい
  • 人工呼吸器を使用していて、自力でたんを出すことが難しい
  • 誤嚥性肺炎を繰り返していて、のどに分泌物がたまりやすい

吸引が必要かどうか、どの部位までの吸引が必要かは病状によって異なります。実際の判断は主治医・かかりつけ医にご相談ください。

たんの吸引は誰ができる?

結論医師・看護師などの医療職に加えて、喀痰吸引等研修を修了した介護職員も一定の範囲で実施できるとされています。ご家族がご本人のために行う場合、資格は求められていません。

たんの吸引は医行為にあたるとされ、誰でも自由に行えるわけではありません。実施できる人と範囲の一般的な整理は、次の表のとおりです。

ポイントは、資格の種類そのものではなく、喀痰吸引等の研修を修了しているかどうかで決まる点です。介護福祉士やホームヘルパーであっても、研修を修了して認定を受け、登録された事業所で医師の指示のもとに行う必要があるとされています。

実施できる人できる吸引の範囲主な条件
医師・看護師・准看護師口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内部のすべて医療職としての業務の中で実施
研修を修了した介護職員(介護福祉士・ヘルパーなど)口腔内・鼻腔内(のどの手前まで)と気管カニューレ内部喀痰吸引等研修の修了と認定、登録された事業所への所属、医師の指示と看護職員との連携
ご家族ご本人のケアに必要な範囲医師や看護師から手技の指導を受けて行うのが一般的(資格は不要)

出典:厚生労働省「喀痰吸引等制度について」、社会福祉士及び介護福祉士法(2026年時点)。

喀痰吸引等制度とは?介護職員ができる範囲

結論喀痰吸引等制度とは、研修を修了した介護職員がたんの吸引と経管栄養を行えるようにした仕組みで、社会福祉士及び介護福祉士法に基づき2012年度から始まりました。

以前は、たんの吸引は原則として医師や看護師などの医療職しか行えませんでした。在宅や施設で医療的ケアを必要とする方が増えたことを受けて、研修を修了した介護職員も一定の範囲で実施できる仕組みが作られました。これが喀痰吸引等制度です。介護職員が実施できるのは、口腔内・鼻腔内(のどの手前まで)・気管カニューレ内部のたんの吸引と、経管栄養(胃ろう・腸ろう・経鼻)とされています。

施設や訪問介護事業所がこの制度で吸引を行うには、研修修了者がいるだけでは足りず、事業所自体が都道府県から登録喀痰吸引等事業者などの登録を受けている必要があります。認定を受けた職員は認定特定行為業務従事者と呼ばれます。研修には次の3つの区分があります。

研修の区分対象となる利用者実施できる行為
第1号研修不特定の多数の方たんの吸引と経管栄養のすべての行為
第2号研修不特定の多数の方たんの吸引と経管栄養のうち、実地研修を修了した行為のみ
第3号研修特定の方(重度障害や難病の方など)その方に必要な行為のみ

出典:厚生労働省「喀痰吸引等制度について」(2026年時点)。

吸引の頻度と夜間対応はなぜ重要?

結論吸引の頻度は1日数回の方から1時間おき程度に必要な方まで幅があります。特に夜間にも吸引が必要かどうかは、在宅介護の負担と施設選びを大きく左右します。

たんの量や吸引の頻度は、病状や体調、姿勢、水分のとり方などによって変わるとされています。日中に数回で落ち着いている方もいれば、就寝中も含めて頻回に必要な方もいます。まずは主治医や訪問看護師と一緒に、1日の吸引回数と必要になる時間帯を整理しておくと、在宅の体制づくりも施設探しもぐっと進めやすくなります。

夜間にも吸引が必要な場合、在宅ではご家族が夜中に起きて対応することになり、睡眠不足や介護疲れにつながりやすい部分です。施設に入る場合は、夜間も看護職員がいる施設か、研修を修了した介護職員が夜勤に配置されている施設であることが前提になります。夜間の吸引に対応できる施設は限られるため、頻度と時間帯の情報整理がとても重要です。

なお、体位の工夫や口腔ケア、水分・栄養の管理、部屋の加湿などで、たんを出しやすくして吸引の回数そのものを減らす取り組みも行われています。日々のケアの工夫は、訪問看護師やかかりつけ医に相談してみましょう。

在宅でたんの吸引を続けるには?

結論訪問看護の支援を受けながら、ご家族が手技の指導を受けて日常の吸引を担う形が一般的です。吸引器はレンタルではなく、購入して用意するのが基本とされています。

在宅で吸引を続ける場合の中心は訪問看護です。看護師が定期的に訪問して呼吸の状態や気管カニューレの管理を行い、ご家族への手技の指導や相談にも応じてくれます。日々の吸引はご家族が担うことが多く、退院前に病院の看護師から指導を受けてから在宅生活を始める流れが一般的です。訪問看護は介護保険または医療保険で利用でき、どちらになるかは病状などによって決まります。

機器の面では、吸引器は介護保険の福祉用具貸与(レンタル)の対象外とされており、購入して用意するのが基本です。吸引カテーテルや消毒液などの消耗品も定期的に必要になります。障害者手帳をお持ちの方や難病と診断されている方は、自治体の日常生活用具給付等事業で購入費の助成を受けられる場合があるため、市区町村の窓口やケアマネジャー(介護支援専門員)に確認してみてください。

また、ご家族の休息(レスパイト)のためのショートステイ(短期入所)は、たんの吸引が必要な方の場合、受け入れ先が限られる傾向があります。看護体制のある短期入所療養介護(介護老人保健施設(老健)や介護医療院などが行うショートステイ)も含めて、早めにケアマネジャーに相談しておくと安心です。対応できる事業所や施設が見つからないときは、介護の窓口の相談員が無料でお調べすることもできます。

施設選びのポイントは?たん吸引可の中身を確認

結論同じ「たん吸引可」の施設でも、対応できる頻度・時間帯・部位は施設ごとに異なります。特に夜間対応の可否は、必ず個別に確認したいポイントです。

施設のパンフレットやホームページに「たん吸引対応可」とあっても、その中身はさまざまです。看護職員がいる時間帯に限って対応する施設が多いため、日中のみ対応可という施設が多い傾向があります。ほかにも、1日数回までなら可、口腔内のみ可(気管カニューレ内部は不可)など、条件は細かく分かれます。

相談現場では、資料に吸引可と書かれていた施設に詳しく確認すると、夜間は対応できない、気管カニューレの方は難しい、と分かるケースが少なくありません。逆に、案内に記載がなくても、看護体制や研修修了者の配置によっては受け入れられることもあります。書面だけで判断せず、吸引の頻度・時間帯・部位を具体的に伝えて確認することが、入居後のミスマッチを防ぐいちばんの近道です。見学や問い合わせでは、次の点を確認しましょう。

  • 1日の吸引回数と必要な時間帯を伝えたうえでの受け入れ可否
  • 夜間の体制(看護職員の夜勤があるか、オンコールか、研修修了の介護職員がいるか)
  • 吸引できる部位(口腔内・鼻腔内のみか、気管カニューレ内部も可か)
  • 今後、吸引の回数が増えた場合にも住み続けられるか
  • 協力医療機関と、状態が変化したときの対応の流れ

介護の窓口では、吸引の頻度や時間帯をうかがったうえで、受け入れできる施設を相談員が無料でお調べします。たん吸引に対応した施設の探し方は、状況別の施設探しページでもご案内しています。

施設の種類別に見るたん吸引対応の傾向

結論看護体制が手厚い介護医療院や介護老人保健施設(老健)は対応しやすく、看護職員の配置義務がないグループホームなどは難しい傾向があります。

施設の種類ごとの一般的な傾向は次のとおりです。同じ種類でも施設による差が大きいため、あくまで比較の出発点としてご覧ください。比べるときのポイントは、看護職員が24時間いるかどうかと、研修を修了した介護職員の配置状況です。たとえば夜間にも気管カニューレ内部の吸引が必要な方なら、介護医療院や24時間看護体制の介護付き有料老人ホームが候補になりやすい、といった絞り込みの目安になります。

施設の種類看護体制の一般的な傾向たん吸引対応の傾向
介護医療院医師・看護職員の配置が手厚く、24時間の看護体制が基本夜間や気管カニューレ内部を含めて対応しやすい
介護老人保健施設(老健)看護職員が比較的多く、夜勤配置の施設もある対応例は多いが、在宅復帰を目指す施設のため入所期間は要相談
特別養護老人ホーム(特養)日中は看護職員がいるが、夜間は不在やオンコール対応が多い日中の吸引は対応例が多い。夜間は研修修了職員の配置次第
介護付き有料老人ホーム日中の看護配置が基本。24時間看護の施設も一部ある24時間看護体制の施設なら夜間対応も期待できる
住宅型有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)施設としての看護配置は原則ない訪問看護など外部サービスの組み合わせで個別に判断
グループホーム(認知症対応型共同生活介護)看護職員の配置義務はない対応できる施設は限られる傾向

一般的な傾向の目安です(2026年時点)。実際の受け入れは各施設の人員体制や方針によって異なります。出典:厚生労働省「介護サービス情報公表システム」の各サービス解説を参考に作成。

たんの吸引にかかる費用の目安は?

結論在宅では吸引器の購入費(おおむね1万〜6万円程度)と月々の消耗品代、訪問看護の自己負担がかかります。施設では、吸引自体の追加料金は基本的にありません。

費用のかかり方は、在宅か施設かで変わります。主な項目の目安は次の表のとおりです。なお、介護保険サービスの自己負担は所得に応じて1〜3割で、月の自己負担が上限額(一般的な所得の世帯で月44,400円)を超えた分は、高額介護サービス費として払い戻される仕組みがあります。また、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)で訪問看護を外部利用する場合は、その分の自己負担が月額利用料とは別にかかります。

項目費用の目安補足
吸引器本体(在宅で購入)おおむね1万〜6万円程度介護保険のレンタル対象外が一般的。日常生活用具給付等の助成対象になる場合あり
消耗品(吸引カテーテル・消毒液など)月2,000〜5,000円程度吸引の回数や交換の頻度によって変わる
訪問看護(介護保険・1割負担の場合)1回あたり数百円〜1,000円台が目安病状によっては医療保険の対象になる場合もある
施設での吸引追加料金は基本的になし(介護サービス費に含まれる)看護体制が手厚い施設は月額利用料が高めの傾向

概算の目安です(2026年時点)。自己負担割合や高額介護サービス費は厚生労働省の資料に基づきます。機器の価格や助成の有無は製品・自治体によって異なるため、購入前に主治医・訪問看護師・市区町村にご確認ください。

よくある質問

たんの吸引は本人にとって苦しくないですか?

カテーテルを入れる際に、咳き込みや不快感を伴うことがあるとされています。そのため1回の吸引は短時間(10〜15秒程度)にとどめるのが一般的とされ、体位の工夫や口腔ケア、水分の管理などでたんを出しやすくし、吸引の回数自体を減らす工夫も行われています。つらそうな様子が続く場合は、方法や頻度について主治医や訪問看護師に相談してみてください。

家族がたんの吸引をするのに資格は必要ですか?

ご家族がご本人のケアとして行う場合、資格は求められていません。入院中や訪問看護の場面で、医師・看護師から手技の指導を受けてから始めるのが一般的です。安全のため、自己流にならないよう定期的に手技を確認してもらうと安心です。

吸引器はレンタルできますか?どこで購入できますか?

吸引器は介護保険の福祉用具貸与(レンタル)の対象外とされており、購入して用意するのが一般的です。医療機器を扱う店舗や福祉用具の事業者などで購入でき、本体はおおむね1万〜6万円程度が目安です。障害者手帳をお持ちの方や難病の方は、自治体の日常生活用具給付等事業の対象になる場合があるため、市区町村に確認してみてください。

たんの吸引が必要でも特別養護老人ホーム(特養)に入れますか?

原則要介護3以上という入所要件を満たしていれば申し込みは可能です。ただし実際の受け入れは、看護職員の体制や研修を修了した介護職員の配置によって施設ごとに分かれます。日中のみ対応可という施設が多い傾向のため、夜間も吸引が必要な場合は、申し込みの前に対応の可否を確認しておくことが大切です。

夜間もたんの吸引が必要な場合、どんな施設が候補になりますか?

看護職員が24時間配置されている介護医療院や一部の介護付き有料老人ホーム、研修を修了した介護職員が夜勤に入る施設などが候補になりやすいとされています。ただし体制は施設ごとに異なるため、吸引の頻度と時間帯を伝えたうえで個別に確認することが欠かせません。

訪問介護のヘルパーにたんの吸引をお願いできますか?

喀痰吸引等研修を修了した介護職員が、登録を受けた事業所に所属し、医師の指示や看護職員との連携体制のもとで行う場合は実施できるとされています。すべての訪問介護事業所が対応しているわけではないため、ケアマネジャー(介護支援専門員)に対応できる事業所を探してもらうとスムーズです。

参考(一次情報)

  • 厚生労働省「喀痰吸引等制度について」
  • e-Gov法令検索「社会福祉士及び介護福祉士法」
  • 厚生労働省「介護サービス情報公表システム」

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