最終更新: 2026-07-11
血管性認知症とは|症状の特徴とアルツハイマー型との違い、介護の注意点
血管性認知症とは、脳梗塞や脳出血など脳血管障害が原因で起こる認知症で、認知症全体の約2割を占めるとされています。損傷を受けた部位で異なる症状の出方や、まだら認知症・感情失禁などアルツハイマー型との違い、再発予防や身体症状への備えをやさしく解説します。
この記事の要点
- 血管性認知症とは、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害が原因で起こる認知症で、認知症全体のおよそ2割を占めるとされています
- 症状は損傷を受けた脳の部位によって異なり、代表的な現れ方は大脳皮質・深部・脳幹小脳・広範な白質という4つのパターンに整理できます
- アルツハイマー型との違いは、まだら認知症や感情失禁など主に4つの特徴に整理でき、記憶力より遂行機能が落ちやすい傾向があります
- 脳血管障害の再発のたびに階段状に進行しやすいため、血圧・血糖・脂質という3つの管理が進行予防の基本とされています
- 片麻痺や嚥下障害という2つの代表的な身体症状を伴いやすく、医療的ケアに対応できる施設選びが欠かせません
血管性認知症とは?何が原因で起こるの?
結論血管性認知症とは、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害によって脳の血流が悪くなり、神経細胞が損傷を受けることで起こる認知症です。認知症全体のおよそ2割を占め、アルツハイマー型認知症に次いで多いとされています。
血管性認知症は、ひとつの病気の名前ではなく、脳梗塞・脳出血・くも膜下出血といった脳血管障害(脳卒中)によって脳の一部が損傷を受け、その結果として認知機能が低下した状態の総称です。太い血管が詰まる大きな脳梗塞だけでなく、細い血管に小さな詰まりが積み重なる多発性脳梗塞でも起こるとされています。
厚生労働省研究班の調査(2013年公表)では、認知症の原因のうちアルツハイマー型が約67%、血管性が約20%と報告されており、血管性認知症はアルツハイマー型認知症に次いで多い認知症の一つとされています。男性にやや多い傾向があるともされ、高血圧や糖尿病など生活習慣病の既往がある方に多くみられます。
なお、脳血管疾患は40〜64歳の方(第2号被保険者)でも要介護認定の対象となる特定疾病の一つに定められています。65歳未満で発症した場合も介護保険サービスを利用できる可能性があるため、お住まいの市区町村や地域包括支援センターに相談してみましょう。
この記事では、症状が脳の部位によって異なる理由、アルツハイマー型認知症との違い、急激な発症と階段状の進行、再発予防のための健康管理、身体症状への備え、施設選びの判断基準までを順番にやさしく解説します。
なぜ脳の部位によって症状が違うの?
結論血管性認知症は、脳のどの部位がどの程度損傷を受けたかによって現れる症状が変わるのが大きな特徴です。代表的な症状の現れ方は、損傷部位によって4つのパターンに整理できます。
脳は、記憶をつかさどる部位、運動の指令を出す部位、言葉を扱う部位など、場所ごとに役割が分かれています。アルツハイマー型認知症が主に記憶をつかさどる海馬から萎縮が広がりやすいのに対し、血管性認知症は損傷を受けた血管の場所によって症状の出方が大きく変わるという違いがあります。
| 主に損傷を受けた部位 | 現れやすい症状の例 |
|---|---|
| 大脳皮質(前頭葉・頭頂葉など) | 判断力や遂行機能の低下、半身の麻痺、感覚の障害 |
| 大脳基底核・視床などの深部 | 意欲の低下(アパシー)、動作が緩慢になる、歩行障害 |
| 脳幹・小脳 | 飲み込みの障害(嚥下障害)、ろれつが回りにくい(構音障害)、体のバランスの障害 |
| 大脳の広い範囲の白質 | 考えるスピードの低下、注意力の低下、気分の落ち込み |
損傷の範囲や程度、もともとの脳の状態によって症状の現れ方には個人差があります。国立循環器病研究センター等の情報をもとに整理した一般的な傾向です(2026年時点)。
アルツハイマー型認知症と何が違うの?
結論血管性認知症とアルツハイマー型認知症の違いは、症状のむらが大きい「まだら認知症」、感情の起伏が急な「感情失禁」、比較的保たれやすい人格、記憶力より遂行機能が落ちやすい点など、主に4つに整理できます。
「今日はしっかり会話ができたのに、翌日は同じ話を繰り返す」というように、日や時間帯によって状態にむらが出るのが「まだら認知症」の特徴とされています。本人にできることが急に増えたり減ったりするため、ご家族は戸惑いやすいものですが、病気の症状のひとつと理解しておくと接し方が見えてきます。
些細なきっかけで急に涙が出たり、怒り出したりする状態は「感情失禁」と呼ばれ、本人の意思ではコントロールしにくい症状とされています。感情失禁と、アルツハイマー型に多いとされる比較的穏やかな性格の変化とは、現れ方が異なる点も覚えておきたいポイントです。
また、血管性認知症では、買い物の計画を立てて実行する、料理の手順を組み立てるといった遂行機能が早い段階で落ちやすいとされる一方、もの忘れ自体は比較的目立たないケースもあります。判断力のテストだけでなく、日常生活での手順立てがスムーズにできているかも、変化に気づく手がかりになります。
| 比較する項目 | 血管性認知症 | アルツハイマー型認知症 |
|---|---|---|
| 主な原因 | 脳梗塞・脳出血などの脳血管障害 | 脳の萎縮(原因ははっきり解明されていないとされる) |
| 症状の出方 | できることとできないことの差が大きい(まだら認知症) | 全体的になだらかに低下していく |
| 感情の変化 | 感情失禁により、些細なことで急に泣いたり怒ったりしやすい | 比較的穏やかに変化することが多いとされる |
| 人格 | 比較的保たれやすいとされる | 進行とともに変化がみられることがある |
| 目立ちやすい機能低下 | 遂行機能(計画を立てて実行する力) | 記憶力(もの忘れ) |
| 身体症状 | 片麻痺や歩行障害を伴いやすい | 初期には身体症状が目立ちにくいとされる |
一般的な傾向を整理した比較です。両方の特徴を併せ持つ混合型もみられ、正確な診断には専門医の受診が必要です(2026年時点)。
急に発症し、階段状に進行するのはなぜ?
結論血管性認知症は、脳卒中の発作をきっかけに比較的急に症状が現れ、再発のたびに段階的に悪化する階段状の進行をたどるケースが多いとされています。年単位でゆるやかに進むアルツハイマー型とは、経過のパターンが異なります。
脳血管障害の再発のたびに症状が一段階悪化し、その後しばらく状態が落ち着くことを繰り返す「階段状の進行」をたどりやすいのも、血管性認知症の特徴とされています。逆に言えば、再発さえ防ぐことができれば進行を大きく遅らせられる可能性があり、これが次に説明する血圧などの管理が重要とされる理由です。
| 比較する項目 | 血管性認知症 | アルツハイマー型認知症 |
|---|---|---|
| 発症の仕方 | 脳卒中の発作を機に、比較的急に症状が現れることが多い | はっきりした発症時期が分かりにくく、徐々に始まる |
| 進行のパターン | 再発のたびに段階的に悪化する階段状の経過をたどりやすい | 年単位でゆるやかに、なだらかに進行する |
| 症状が安定する時期 | 発作の後、比較的落ち着いた時期(プラトー)がみられることがある | 明確な安定期は目立ちにくいとされる |
経過の速さや現れ方には個人差が大きく、一般的な傾向を整理したものです(2026年時点)。
再発予防に血圧・血糖・脂質の管理が重要なのはなぜ?
結論血管性認知症は脳血管障害の再発によって段階的に悪化しやすいため、血圧・血糖・脂質(コレステロールなど)という3つの管理が、症状の進行を防ぐうえで重要とされています。生活習慣の見直しと服薬管理を医師の指導のもとで続けることが基本です。
高血圧、糖尿病、脂質異常症、心房細動などの不整脈、喫煙は、いずれも脳梗塞や脳出血の主な危険因子とされています。これらを管理し続けることが、脳血管障害の再発予防、ひいては血管性認知症の症状の進行を抑えることにつながると考えられています。
すでに降圧薬や糖尿病の治療薬、抗血栓薬などを処方されている場合は、自己判断で量を変えたり中止したりせず、指示どおりに服用を続けることが大切です。体調の変化や薬の調整については、自己判断をせず、主治医・かかりつけ医にご相談ください。
- 血圧管理: 減塩を心がけ、降圧薬が処方されている場合は指示どおりに服用する
- 血糖管理: 食事療法や糖尿病治療薬で、血糖値を目標の範囲に保つ
- 脂質管理: コレステロールや中性脂肪の値を、スタチンなどの薬や食事で管理する
- 禁煙: 喫煙は血管を傷つける大きな要因とされ、禁煙が再発予防につながる
- 適度な運動とリハビリ: 医師の許可の範囲で、無理のない運動を続ける
片麻痺や嚥下障害などの身体症状にはどう備える?
結論血管性認知症では、片麻痺や嚥下障害という2つの代表的な身体症状を合併しやすいのが特徴です。認知症のケアだけでなく、医療的ケアやリハビリに対応できる体制を確認することが、施設選びでも重要になります。
損傷を受けた脳の部位によっては、半身の麻痺(片麻痺)、言葉が出にくくなる失語や、ろれつが回りにくくなる構音障害、飲み込みの動きがうまくいかなくなる嚥下障害といった身体的な後遺症を伴うことが少なくありません。嚥下障害があると誤嚥性肺炎のリスクが高まるとされ、食事の形態や姿勢の工夫、日々の口腔ケアが欠かせません。
在宅で介護を続ける場合も、施設を探す場合も、たんの吸引や経管栄養(胃ろうなど)といった医療的ケアが必要になることがあります。医療的ケアの内容や、施設の種類ごとの看護体制の違いについては、医療的ケアの記事でも詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
- リハビリ職(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)によるリハビリを継続する
- 食事の形態(きざみ食・とろみなど)や姿勢を、専門職の助言に沿って調整する
- 毎日の口腔ケアで、誤嚥性肺炎のリスクを減らす
- 手すりの設置や段差の解消など、転倒しにくい住環境を整える
- 医療的ケアに対応できる施設かどうか、看護師の配置時間や夜間対応を確認する
感情の起伏(感情失禁)には、どう接したらいい?
結論感情失禁が起きたときは、驚いたり否定したりせず気持ちを受け止める、環境を静かに整える、気分の切り替えを促すという3つの対応を組み合わせることが基本とされています。
感情失禁は病気の症状であり、わがままや性格の変化ではありません。急に泣き出したり、怒ったりする姿に家族が戸惑うことも多いものですが、本人の意思でコントロールしにくい症状と理解しておくと、少し心に余裕を持って接しやすくなります。
デイサービスの職員やケアマネジャーなど、周囲の人にも感情の起伏が大きいことがあるとあらかじめ伝えておくと、外出先や通所先でも落ち着いた対応をしてもらいやすくなります。
- 急に泣いたり怒ったりしても、頭ごなしに否定しない
- いったん気持ちを受け止めてから、話題や場所を変えて気分の切り替えを促す
- テレビの音量や来客など、刺激の多い環境を避け、静かに過ごせる時間をつくる
- 感情が動きやすいことを、デイサービスなど周囲の関係者にも伝えておく
- 家族だけで抱え込まず、ケアマネジャーや主治医にも様子を共有する
在宅を続けるか、老健でリハビリを優先するか、判断の目安は?
結論在宅介護を続けるか施設を検討するかは、身体症状の重さ・必要な医療的ケアの内容・ご家族の介護負担という3点を軸に考えるとよいとされています。回復期のリハビリを重視する時期は介護老人保健施設(老健)、長期的な生活の場を探す時期は特養や介護付有料老人ホームなどが選択肢になります。
介護の窓口の相談現場では、脳卒中による入院からの退院が近づいたタイミングで、ご家族だけで「とにかく早く自宅へ」と判断し、老健などでの集中的なリハビリを挟む選択肢を検討しないまま自宅に戻ってしまうというご相談を伺うことがあります。退院前に主治医やリハビリ職と相談し、老健で在宅復帰に向けたリハビリを行うかどうかを検討することも、選択肢の一つです。
介護保険サービスを利用するには、要介護認定の申請が必要です。認定結果は申請から原則30日以内に通知され、効力は申請日にさかのぼって適用されるため、入院中から早めに申請しておくと、退院後の準備がスムーズになります。
| 状況 | 選択肢の例 | 確認したいポイント |
|---|---|---|
| 発症から間もなく、集中的なリハビリで機能回復を目指したい | 介護老人保健施設(老健) | 在宅復帰に向けたリハビリ体制、医師・看護師の配置 |
| たんの吸引や経管栄養など、医療的ケアが常時必要 | 介護医療院や、看護体制の手厚い介護付有料老人ホーム | 看護職員の配置時間、夜間の医療対応の体制 |
| 症状が落ち着き、長期的な生活の場を探したい | 特別養護老人ホーム(特養、原則要介護3以上)や介護付有料老人ホーム | 費用の違いと、身体症状への対応力 |
| ご家族の介護力があり、サービスを活用しながら在宅を続けたい | 訪問介護・通所リハビリ(デイケア)などを組み合わせた在宅介護 | ケアマネジャーと相談しながらサービスを調整する |
状態やご家庭の状況によって最適な選択肢は異なります。ケアプランは要介護の方はケアマネジャー、要支援の方は地域包括支援センターに相談できます(2026年時点)。
まとめ:血管性認知症の介護で家族が心がけたいことは?
結論血管性認知症の介護では、再発予防のための健康管理と、身体症状に対応できる医療体制の確保という2つの視点が、アルツハイマー型以上に重要になります。感情の起伏には驚かず受け止め、早めにケアマネジャーや医療機関と連携しましょう。
血管性認知症は、脳血管障害の再発によって段階的に進行しやすいという特徴があるからこそ、血圧・血糖・脂質の管理を続けることが、そのままご本人の生活の質を守ることにつながります。あわせて、片麻痺や嚥下障害などの身体症状に対応できる医療体制を早めに確認しておくと、状態が変化したときにも慌てずに済みます。
施設探しに迷ったときは、医療的ケアへの対応状況を含めて、介護の窓口の相談員が無料でお調べします。ご本人の症状や必要なケアの内容を整理したうえで、お気軽にご相談ください。
よくある質問
血管性認知症を一言でいうと、どんな病気ですか?
一言でいうと、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害によって脳の血流が悪くなり、神経細胞が損傷することで起こる認知症です。認知症全体のおよそ2割を占め、アルツハイマー型認知症に次いで多いとされています。
まだら認知症とは何ですか?
まだら認知症とは、同じ人の中でも、しっかりしている面とうまくいかない面の差が大きく現れる状態を指す言葉です。日によって、あるいは同じ日の時間帯によっても状態にむらが出ることがあり、血管性認知症でよくみられる特徴の一つとされています。
血管性認知症は治りますか?進行を止めることはできますか?
2026年時点では、損傷を受けた脳の機能を完全に元通りにする治療法は確立されていないとされています。ただし、血圧・血糖・脂質の管理や禁煙などで脳血管障害の再発を防ぐことができれば、階段状の進行を遅らせられる可能性があるとされています。詳しい治療方針は主治医・かかりつけ医にご相談ください。
血管性認知症とアルツハイマー型、進行の仕方はどう違いますか?
アルツハイマー型認知症は年単位でゆるやかに進行するのに対し、血管性認知症は脳血管障害の発作をきっかけに急に症状が現れ、再発のたびに階段状に進行することが多いとされています。ただし経過には個人差があり、両方の特徴を併せ持つ混合型もあります。
感情失禁が起きたとき、家族はどう対応すればいいですか?
感情失禁は本人の意思でコントロールしにくい症状とされているため、驚いたり否定したりせず、まず気持ちを受け止めることが基本です。話題や場所を変えて気分の切り替えを促す、静かな環境を整えるといった対応も有効とされています。
血管性認知症でも老人ホームに入居できますか?
入居できます。ただし片麻痺や嚥下障害などの身体症状を伴う場合は、医療的ケアに対応できる看護体制が整っているかどうかの確認が特に重要です。リハビリを重視する時期は介護老人保健施設(老健)、長期的な生活の場としては特別養護老人ホーム(特養)や介護付有料老人ホームなどが候補になります。迷ったときは、介護の窓口の相談員にご相談ください。
参考(一次情報)
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「血管性認知症」
- 厚生労働省研究班「都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害への対応」(2013年公表)
- 国立循環器病研究センター(脳血管疾患・脳卒中の予防に関する情報)
- 国立長寿医療研究センター(認知症・もの忘れに関する情報)
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