最終更新: 2026-07-19
補足給付とは?
補足給付(特定入所者介護サービス費)とは、住民税非課税世帯を対象に介護保険施設の食費・居住費を軽減する制度です。資産要件は利用者負担段階により単身500万円〜1,000万円以下と異なり、対象施設・申請方法もあわせて解説します。
この記事の要点
- 補足給付(特定入所者介護サービス費)とは、住民税非課税世帯を対象に介護保険施設の食費・居住費を軽減する制度です。資産要件は利用者負担段階により単身500万円以下から1,000万円以下まで4段階に分かれます
- 資産要件のうち最も基準がゆるやかな第1段階は単身1,000万円以下・夫婦2,000万円以下で、収入がより高い第3段階②では単身500万円以下・夫婦1,500万円以下まで下がります
- 対象になる施設は特別養護老人ホーム(特養)・介護老人保健施設(老健)・介護医療院・短期入所(ショートステイ)の4施設で、サ高住や有料老人ホームなど3種類は対象外です
- 非該当(第4段階)になると食費・居住費の軽減がなくなり、特養の多床室で試算すると対象内の場合と比べて月額約1.7万円〜6.2万円の差が生じる場合があります
- 資産要件は法律上の配偶者の預貯金も合算して判定されるため、世帯分離をしても資産要件の扱いは変わりません。認定証は原則1年ごとの更新申請が必要です
補足給付とは、どのような制度ですか?
結論補足給付(特定入所者介護サービス費)とは、住民税非課税世帯の方を対象に、介護保険施設の食費・居住費の自己負担を軽減する制度です。資産要件は利用者負担段階に応じて単身500万円以下から1,000万円以下まで4段階に分かれます。
特養やショートステイなどの介護保険施設を利用すると、介護サービスそのものの1〜3割負担のほかに、食費と居住費(部屋代)は原則として全額自己負担になります。この食費・居住費の負担が重くなりすぎないよう、所得や資産の少ない方を対象に軽減するのが補足給付(正式名称は特定入所者介護サービス費)です。
軽減の仕組みはシンプルです。施設ごとに定められた食費・居住費の基準額(基準費用額)ではなく、利用者負担段階に応じて定められた低い上限額(負担限度額)までの支払いで済むようにする仕組みで、基準費用額との差額は介護保険から施設へ直接支払われます。利用者があとで払い戻しを申請する必要はありません。
ただし補足給付は、住民税非課税世帯であれば誰でも受けられるわけではありません。世帯の課税状況にくわえて、預貯金や有価証券などの資産が一定額以下であることも条件になります。この記事では、検索されることの多い資産要件の具体的な金額を中心に、対象施設や申請方法、非該当になった場合の負担増まで順番に解説します。
補足給付の対象になる要件は何ですか?
結論補足給付を受けるための要件は、大きく分けて3つあります。世帯全員が住民税非課税であること、預貯金等の資産が基準額以下であること、対象になる介護保険施設・サービスを利用していることです。
このうち「世帯の課税状況」と「対象施設かどうか」は比較的イメージしやすい要件です。一方で「資産要件」は、預貯金通帳の残高をどう数えるのか、配偶者の資産も合算されるのかなど、具体的な金額を知らないまま申請の準備を進めてしまうご家庭が少なくありません。次の章から、この資産要件を中心に、それぞれの要件を詳しく見ていきます。
なお、1ヶ月の介護サービス自己負担(1〜3割)の合計に上限を設ける高額介護サービス費(一般的な課税世帯で月44,400円が目安)や、医療費が高額になったときの高額療養費制度は、補足給付とは対象になる費用が異なる別の制度です。食費・居住費を軽減する補足給付とあわせて確認すると、費用の全体像をより正確につかめます。
- 世帯全員が住民税非課税であること(配偶者が別世帯でも、配偶者の課税状況は合算して判定されます)
- 預貯金・有価証券等の資産が、利用者負担段階ごとに定められた基準額以下であること
- 特別養護老人ホーム(特養、原則要介護3以上)などの対象施設に入所している、または短期入所(ショートステイ)を利用していること
資産要件は具体的にいくらですか?
結論資産要件は単身1,000万円以下・夫婦2,000万円以下を上限に、利用者負担段階が上がるほど基準額が下がる仕組みで、最も基準が厳しい第3段階②では単身500万円以下・夫婦1,500万円以下になります。全部で4段階に分かれています。
「補足給付の資産要件は預貯金1,000万円以下」としばしば紹介されますが、これは正確には利用者負担段階のうち最も基準がゆるやかな第1段階の金額です。実際には所得の状況に応じて4段階に分かれており、所得が高い段階ほど資産要件の金額は低くなります。次の表で、ご自身がどの段階に近いか確認してみてください。
たとえば年金収入等が年80万円を超える方は第3段階に位置づけられることが多く、この場合の資産要件は単身550万円以下・夫婦1,550万円以下、または単身500万円以下・夫婦1,500万円以下(年金収入等が120万円を超える場合)まで下がります。「1,000万円の壁」という言葉だけを覚えていると、実際の基準額とのズレに気づかないまま「対象になるはず」と誤解してしまうことがあります。
| 利用者負担段階 | 対象となる方の所得の目安 | 資産要件(単身) | 資産要件(夫婦) |
|---|---|---|---|
| 第1段階 | 生活保護受給者、または老齢福祉年金を受給していて世帯全員が住民税非課税の方など | 1,000万円以下 | 2,000万円以下 |
| 第2段階 | 世帯全員が住民税非課税で、年金収入等の合計が年80万円以下の方 | 650万円以下 | 1,650万円以下 |
| 第3段階① | 世帯全員が住民税非課税で、年金収入等の合計が年80万円超120万円以下の方 | 550万円以下 | 1,550万円以下 |
| 第3段階② | 世帯全員が住民税非課税で、年金収入等の合計が年120万円超の方 | 500万円以下 | 1,500万円以下 |
出典: 厚生労働省の基準(2021年8月改定)をもとにした2026年時点の一般的な基準です。「夫婦」は法律上の配偶者がいる場合の合計額で、配偶者が別世帯・別施設に入所していても合算されます。年金収入等はその他の合計所得金額を含む金額です。
資産にはどんな預貯金・財産が含まれますか?
結論資産要件でいう資産とは、預貯金・有価証券・金や銀などの貴金属が中心で、配偶者がいる場合は本人と配偶者2人分を合算して判定します。生命保険や自動車、自宅の不動産は原則として資産に含まれません。
資産要件の判定に使われる「資産」は、いわゆる金融資産が中心です。普通預金・定期預金はもちろん、株式や投資信託、国債・地方債などの有価証券も含まれます。逆に、生命保険の解約返戻金や自動車、自宅の土地・建物といった不動産は、原則として資産要件の判定には含まれないとされています。
借入金や住宅ローンなどの負債がある場合は、預貯金等の合計額からその分を差し引いて判定できます。たとえば預貯金が800万円あっても、200万円の借入金があれば、資産額は600万円として扱われる、という考え方です。
| 資産の種類 | 資産要件の判定への算入 |
|---|---|
| 預貯金(普通・定期預金) | 算入する |
| 有価証券(株式・投資信託・国債等) | 算入する |
| 金・銀など時価評価できる貴金属 | 算入する |
| 借入金・住宅ローンなどの負債 | 資産額から差し引く |
| 生命保険・自動車・自宅の不動産等 | 原則として算入しない |
厚生労働省の基準をもとにした2026年時点の一般的な整理です。判定の詳細は自治体によって確認方法が異なる場合があるため、実際の申請時には市区町村の窓口にご確認ください。
対象になる施設・ならない施設はどこですか?
結論対象になるのは特別養護老人ホーム(特養)・介護老人保健施設(老健)・介護医療院・短期入所(ショートステイ)の4施設です。サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)や有料老人ホームなど3種類は対象外になります。
補足給付は、介護保険施設への入所や短期入所の利用にともなう食費・居住費だけを対象にした制度です。特養(原則要介護3以上)、介護老人保健施設(老健、要介護1以上で在宅復帰を目指すリハビリ施設)、介護医療院(要介護1以上、長期の医療管理と介護を一体的に提供する施設)、短期入所生活介護・短期入所療養介護(ショートステイ、要支援1以上で利用可能)は、いずれも公的な性格の強い介護保険施設・サービスのため対象になります。
一方、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住、主に自立〜軽度の方向けで入居条件は住宅により異なります)や介護付・住宅型の有料老人ホームは、家賃・食費を施設が自由に設定できる住宅・居住系サービスに位置づけられるため、補足給付の対象外です。認知症対応型共同生活介護(グループホーム、要支援2以上+認知症の診断+原則同一市区町村が条件)の家賃・食費も同様に対象外です。「非課税世帯だから軽減されるはず」と思い込んで契約したあとに対象外と分かるケースもあるため、施設探しの早い段階で確認しておくことが大切です。
| 施設・サービスの種類 | 補足給付の対象 |
|---|---|
| 特別養護老人ホーム(特養) | 対象 |
| 介護老人保健施設(老健) | 対象 |
| 介護医療院 | 対象 |
| 短期入所生活介護・短期入所療養介護(ショートステイ) | 対象 |
| 介護付有料老人ホーム・住宅型有料老人ホーム | 対象外 |
| サービス付き高齢者向け住宅(サ高住) | 対象外 |
| 認知症対応型共同生活介護(グループホーム) | 対象外 |
2026年時点の制度概要です。対象施設であっても、資産要件・課税要件を満たさなければ補足給付は受けられません。
負担限度額認定証はどうやって申請しますか?
結論申請は、市区町村の介護保険担当窓口に申請書と預貯金通帳の写しなどを提出する、主に5つのステップで進みます。認定されると介護保険負担限度額認定証が交付され、施設へ提示すると軽減が適用されます。
申請書の様式は「介護保険負担限度額認定申請書」という名称であることが多く、市区町村の窓口やホームページから入手できます。本人だけでなく配偶者がいる場合は配偶者の分も含めて、預貯金通帳の写しや有価証券の残高がわかる書類をそろえる必要があります。自治体によっては、金融機関への照会に同意する書類の提出を求められることもあります。
認定証が交付されたら、入所先・利用先の施設の窓口へ提示します。提示が遅れるとその分軽減が適用されないまま費用を支払うことになりかねないため、入所が決まったら早めに申請を済ませておくことが実務上のポイントです。認定証の有効期間は原則として毎年8月1日から翌年7月31日までの1年間で、引き続き軽減を受けるには毎年の更新申請が必要です。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| ① 申請先の確認 | 入所している(検討している)施設がある市区町村の介護保険担当窓口 |
| ② 申請書の入手 | 「介護保険負担限度額認定申請書」を窓口またはホームページで入手 |
| ③ 必要書類の準備 | 本人・配偶者の預貯金通帳の写し、有価証券の残高がわかる書類、マイナンバー確認書類等 |
| ④ 窓口へ提出 | 申請書と書類一式を市区町村の窓口へ提出(郵送可の自治体もある) |
| ⑤ 認定証の交付・提示 | 審査後に交付される認定証を施設の窓口へ提示すると軽減が適用される |
2026年時点の一般的な流れです。必要書類・提出方法は市区町村により異なるため、事前に窓口へご確認ください。認定証の有効期間は原則1年間で、毎年の更新申請が必要です。
非該当になった場合、負担はどのくらい増えますか?
結論資産要件を満たせず非該当(第4段階)になると、食費・居住費は軽減されず基準費用額のまま自己負担します。特養の多床室で試算すると、対象内の場合と比べて月額で約1.7万円〜6.2万円ほど負担が増える計算になります。
資産要件や課税要件のいずれかを満たさないと、利用者負担段階は軽減のない「第4段階」という区分になります。この場合、食費・居住費は施設ごとの基準費用額(2024年8月改定で1日あたり食費1,445円、特養の多床室915円、ユニット型個室2,066円)がそのまま自己負担額になります。
下の表は、特養の多床室を30日利用した場合の食費・居住費の合計を、利用者負担段階ごとに試算した目安です。段階が1つ上がるごとに、月あたり1万円前後ずつ負担が増えていくイメージがつかめます。非該当になりそうで費用面が心配な場合も、他の軽減制度や施設選びとあわせて相談員が無料でご相談に応じます。
| 利用者負担段階 | 食費+居住費(多床室)の合計目安(30日) |
|---|---|
| 第1段階 | 約9,000円(300円×30日) |
| 第2段階 | 約24,600円(820円×30日) |
| 第3段階① | 約32,400円(1,080円×30日) |
| 第3段階② | 約53,700円(1,790円×30日) |
| 第4段階(非該当) | 約70,800円(2,360円×30日) |
出典: 厚生労働省の基準費用額・負担限度額(2024年8月改定)をもとに、特養の多床室を30日利用したと仮定した概算です(2026年時点)。ユニット型個室やショートステイでは金額が異なり、実際の請求は暦月の日数や施設の加算により変わります。
世帯分離をすれば資産要件も緩和されますか?
結論緩和されません。資産要件は法律上の配偶者の預貯金・有価証券を合算して判定されるため、世帯分離をして住民票上の世帯を分けても、資産要件の基準額(単身500万円〜1,000万円など)は変わらない点に注意が必要です。
別記事「世帯分離」で解説しているとおり、世帯分離によって親だけが住民税非課税の単独世帯になると、課税要件については補足給付の対象に近づく場合があります。ただし資産要件は世帯(住民票)の単位ではなく、法律上の婚姻関係にあるかどうかで判定されるため、たとえ世帯分離をして配偶者と別世帯になっても、配偶者の預貯金・有価証券は合算されたままです。
介護の窓口の相談現場では、「世帯分離をしたのに補足給付の対象にならなかった」というご相談を数多くお受けします。理由の多くは、この資産要件における配偶者の扱いを知らずに申請していたケースです。世帯分離を検討する際は、課税要件と資産要件を分けて確認することが欠かせません。
また、申請直前に多額の出金があるなど不自然な資産の動きが通帳から確認された場合、金融機関への照会や追加の説明を求められ、実質的に資産として扱われることがあるとされています。通帳は普段からこまめに記帳し、大きな入出金があった際は理由をメモしておくと、申請時の説明がスムーズになります。
資産要件に不安があるときはどこに相談すればいいですか?
結論資産要件に当てはまるか不安なときは、市区町村の介護保険窓口に相談するのが最も確実です。認定後も年1回の更新申請が必要なため、疑問があれば早めに確認しておくと安心です。
「うちの親の預貯金額で対象になるか、申請書を出す前に知りたい」という場合は、正式な申請の前でも、市区町村の介護保険担当窓口に金額の目安を伝えて確認できることが多くあります。窓口では個別の資産状況までは断定できなくても、どの利用者負担段階に近いかの見通しを教えてもらえる場合があります。
施設費用の全体像は別記事「介護費用の平均」でも解説していますので、資産要件を確認したあとはあわせてご覧いただくと、初期費用から月々の自己負担まで見通しを立てやすくなります。
介護の窓口では、関西4府県(大阪・兵庫・京都・奈良)で、補足給付が使えそうな特養・老健・介護医療院を含めて、費用面から施設を無料でお探しします。エリア外にお住まいの方は、お近くの地域包括支援センターまたは市区町村の介護保険窓口にご相談ください。
よくある質問
一言でいうと、補足給付とはどんな制度ですか?
一言でいうと、補足給付とは、住民税非課税世帯で資産要件(単身1,000万円以下など)を満たす方が、介護保険施設に入所した際の食費・居住費の負担を軽減してもらえる制度です。
資産要件の預貯金1,000万円以下とは、誰の分の預貯金ですか?
本人に配偶者がいる場合は、本人と配偶者の預貯金・有価証券などを合算した金額で判定され、単身の場合は本人だけの金額で判定されます。1,000万円以下という基準は、4段階のうち最も所得の低い第1段階の金額です。
サ高住や住宅型有料老人ホームに入居していても補足給付は受けられますか?
受けられません。補足給付の対象は特養・老健・介護医療院・短期入所(ショートステイ)の4施設で、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)や有料老人ホームの家賃・食費は対象外です。
負担限度額認定証の申請には何が必要ですか?
本人と配偶者の預貯金通帳の写しや有価証券の残高がわかる書類、マイナンバー確認書類などを添えて、施設のある市区町村の窓口に申請書を提出します。
認定証は一度取得すればずっと使えますか?
使えません。負担限度額認定証の有効期間は原則8月1日から翌年7月31日までの1年間で、引き続き軽減を受けるには毎年更新の申請が必要です。
世帯分離をすれば資産要件も緩和されますか?
緩和されません。資産要件は法律上の配偶者の預貯金・有価証券を合算して判定する決まりのため、世帯分離をして住民票の世帯を分けても資産要件の判定は変わりません。
参考(一次情報)
- 厚生労働省「特定入所者介護サービス費(補足給付)について」
- 厚生労働省 リーフレット「食費・居住費の負担軽減(補足給付)について」
- 厚生労働省 介護保険最新情報Vol.1280「令和6年8月からの基準費用額(居住費)の見直し等について」
- 厚生労働省 介護サービス情報公表システム「サービスにかかる利用料」
- 大阪市「介護保険負担限度額認定申請の手引き」
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